こんにちは。取締役の伊佐です。
前回は「ブランディングを成功させるには?」をテーマに、
ブランディングが成功している状態を、
A.識別記号と知覚価値が連動・確立していること
B.ステークホルダーの選択判断が簡略化されていること
C.経営の効率化・収益力の向上に寄与していること
D.中長期的にブランディング活動がルーティーン化されていること
が全て満たされていることと定義し、
“Concept”
ブランドの根幹たる思想・概念や提供価値
“System”
ブランドのコンセプト(上記Concept)を、継続的、且つ一貫してアウトプット(ブランドと顧客のあらゆる接点)に反映させるための業務上・組織上の仕組み
“Contact”
ブランドと顧客のあらゆる接点=ブランドの成果物
が、全て統合的に設計・運用され、機能していること、とお伝えしました。
ブランド構築の型となるCSC
今回は、その「ブランディングのCSC」のC(Concept)について、
少しかみ砕いてお話ししたいと思います。
意味は上記の通りですが、コンセプトとは、結局のところただのコトバに過ぎないと同時にブランドの根幹・拠り所となる「軸」でもあります。
ただのコトバに過ぎないという側面があるために、しばしばコンセプト自体が形骸化し軽視され、ブランドのアイデンティティを喪失するような事態が起こります。一方、「軸」としての側面があるために、ブランドが一貫してあらゆる顧客接点で価値を提供し続け、結果的にブランディングの成功につながることもあります。
要は、ただのコトバに過ぎないコンセプトを、如何に「軸」として機能するように設計できるか”が大事だということです。
その設計に於いて必要なことは、以下の3点です。
1. 戦略的な視点で構造化されていること
戦略的な視点とは、「顧客の現在~将来のニーズ」「予想される環境変化や将来的な機会・脅威」、それらを踏まえた「現在の強み・弱み」に「自社としての意思(ビジョンなど)」を込めたポジショニングが描かれていること。
構造化とは、こうした視点から導かれた要素が、「リソース」「エビデンス」「ベネフィット」「コアバリュー」と段階的に整理され、結果的に上下にスムーズに一貫して接続されていること。
コンセプトの構造化
2. ”SONGS”の視点で言語化されていること
構造が正しくてもコトバそのものが魅力的でなくては、顧客は勿論、ブランディングの第一の主体たる社内(従業員など)に対しても訴求力を持ちえず、ニッチブランド化してしまいます。
それを避けるためには、下記の視点が必要です。
“Simple”
明快性 ステークホルダーの全てにとって分かり易いか?
“Originality”
差別性 他との違いは?ありきたりすぎないか?
“New-found”
新規性 価値自体の新しさや、新たな価値への挑戦が含まれているか?
“General”
普遍性 すぐに陳腐化する表層的価値に終始していないか?
“Sympathy”
共感性 顧客に限らない、ステークホルダーの全てが共感できるか?
3. System=前述の業務上・組織上の仕組みと接続可能であること
コンセプトそのものだけでブランディングを成功させるのは不可能で、コンセプトが宿ったContactは勿論、そのContactが一貫して提供され続けるためのSystemが必要、と前述しました。
やや逆説的になりますが、コンセプトの設計の時点で、このSystemとの接続を想定していることが望ましいということです。仕組みとして担保することが不可能なConceptは、結果的には属人化するか、「軸」としての機能を失って曖昧化するしかありません。
一言で“コンセプト設計”と言っても、本当はこれだけの様々な視点を踏まえ、何度も検証されたコトバであるべきだと私は考えています。普段、クライアント企業様とプロジェクトを進める際も、その考えでコンセプトを設計するよう心がけています。
ただし、優れた魅力的なコンセプトが必ずやこうした視点や段階を踏んでから初めてコトバになる訳でもない、ということも同時に述べさせていただきたいと思います。
つまり、現実には、とにかくダイレクトに想いを込めてコンセプトを言語化し、後はそれを正解にするためにどれだけ本気で、全力で動けるかだ、という考え方の方が、(特に短期~中期では)時にはブランディングの成功につながることもある、ということです。
自論を自らひっくり返したような終わり方になってしまいましたが、
次回は、Systemについて詳しく述べていきたいと思います。