皆さん、こんにちは。
今回は、アフターコロナ時代に求められるブランド戦略のあり方について、ブログを書きたいと思います。
直近でも、今月初めに東京アラートが発動されるなど、COVID-19の影響範囲や強度は依然として未知数な状況が続いています。そのため、当然のことながら、こういった先行き不透明な経済状況の中では、多くの企業が「従業員や顧客の保護」「サプライチェーンの安定化」「運転資金の確保」など、ある種“守り”の動きに注力しています。
しかし、中には、先行き不透明な中でも、今後の業界へのインパクトや中長期的なシナリオを見定めて、“攻め”の動きを行い、長期的な視点で確固たるブランドの地位を築こうとしている企業も出てきています。
このように、アフターコロナ時代においては、現在〜未来の変化を“機会”と捉え、“守り”だけでなく“攻め”のシナリオも描いて、それを実行に移していくことが求められていると言えます。そうすることで、長期的に見ても、競合優位性のある強いブランドを創り上げることができます。
そこで今回は、COVID-19の影響に伴い生じている
という2つのパターンにおいて、顧客から選ばれ続けるブランドを創り上げる具体的な手法について、皆さんに有意義な情報をお届けできればなと思います。
では、まずチャンス・拡大が見込まれる業界や領域について、見ていきます。
COVID-19の影響を受けて、巣篭もり消費に代表されるような、新しい生活様式が出現したことによって、フードデリバリー市場やEC市場などではチャンスや拡大が生じています。
こういった市場の拡大フェーズにおいては、顧客の需要が増加しているため、顧客が満たしておいて欲しいと考える基本価値さえ満たされていれば、商品やサービスは顧客から選ばれ、それなりの売上や利益を確保することはできます。
しかし、こういった業界では今後、拡大市場ゆえに新規参入が相次ぎ、価格競争も激化していくことが予想されます。すると、長期的には、ブランド力の有無によって、顧客から選ばれる企業と選ばれない企業が明確に二分化されてきます。
では、こういった業界や領域において、顧客から選ばれるブランドを創り上げるには何が必要なのか、そのことについて今から説明していきたいと思いますが、その前に「そもそもブランドとは何か?」について、今一度確認の意味も含めて、お伝えしておきたいと思います。
弊社では、ブランドは、「様々な接点での体験によって、顧客の中での価値を想起させ、期待を高める役割を果たすもの」と捉えており、ブランドを確立するためには、あらゆる接点での「一貫性」と「継続性」が重要だと考えています。
そして、ブランドの一貫性と継続性を担保するには、ブランドの価値を規定する「ブランドコンセプト」が重要です。コンセプトが曖昧だと、その後のマーケティング施策や営業活動の一貫性と継続性を欠いてしまうからです。
ブランドコンセプトは、「コアバリュー」「ベネフィット」「エビデンス」「リソース」という4つの概念から構成されており、これらの概念を構造的かつ明確に規定することが必要になります。
その中でも特に、上位概念2つである「コア・バリュー」と「ベネフィット」が重要であり、アフターコロナ時代においてチャンスや拡大が見込まれ、今後競争環境の激化が想定される業界では、顧客に他社ではなく自社を選んでもらうための「ベネフィット」をどう創るかが何よりも大事です。
では、顧客から選ばれ続けるベネフィットをどのようにして創り上げるのか。そのためには、今現在、顧客が自社の商品・サービスを選ぶ理由となっている基本価値に、自社らしい「付加価値」を加えることが必要になります。
そして、このような付加価値を設計するには、2つのアプローチがあります。1つ目は、「Mission Oriented」というアプローチで、2つ目は「Market Oriented」というアプローチです。以下、順番に説明していきます。
1つ目のアプローチは、自社の「ミッション」を起点に自社らしいベネフィットを考える手法です。
ミッションとベネフィットを接続させることによって、顧客に“ブランドらしさ”を感じさせることができ、これが顧客から選ばれる要因になります。
ミッションとベネフィットを接続する具体的な手法としては、ミッションを「提供価値」と「提供手段」に分解し、それを起点にベネフィットを設計するのが有効です。
ミッションという抽象度の高い概念を、提供価値と提供手段にブレイクダウンすることによって、顧客が得られる具体的な便益を想起しやすくなり、ベネフィットの設計に寄与します。
2つ目のアプローチは、アフターコロナ時代における「ニューノーマル」に対応できるベネフィットを考える手法です。COVID-19の影響下で出現した、新しい生活様式に伴う変化に対応するベネフィットを設計することが、他企業との差別化要因に繋がります。
具体的には、短期のキーワードとして「人との繋がり」、中期のキーワードとして「エフォートレス」、長期のキーワードとして「ソーシャルグッド」を起点に、ベネフィットを設計することが有効です。
以上が、アフターコロナのチャンス・拡大業界で、顧客から選ばれ続けるブランドを確立する上で必要なことになります。
簡単に総括すると、チャンスや拡大が見込まれる業界では、今後競争環境が激化していくことから、商品・サービスの「基本価値」だけでは差別化を図れないため、自社のミッションかマーケットのトレンドを起点に「付加価値」を設計することが重要になります。
では次に、リスク・縮小が見込まれる業界や領域について見ていきます。
COVID-19の影響に伴い、3密の回避や対面機会の現象、長距離移動の抑制が生じたことで、店舗型ビジネス全般やアパレル・化粧品業界、旅行・宿泊・交通業界などでは、市場の縮小が見込まれています。
このような業界では、商品・サービスのオンライン化が急務となっており、あらゆる消費活動がデジタル領域に移行していくことが想定されます。そのため、デジタル領域へのスムーズな移行度合いによって、選ばれる企業と選ばれない企業が明確に二分化されます。
実際、先日弊社で実施したセミナーに参加して頂いた企業様の約8割が、既にオンライン化に取り組んでいるor今後取り組む予定であるという状況でした。
こういったデジタル領域への移行を行う際には、強く認識しなければいけないことがあります。それは、「商品・サービスをただオンラインに移行しただけでは、そのブランド価値は担保することができない」ということです。
当たり前のように感じるかもしれませんが、世の中の多くの企業様ができていないというのが実情です。実際、デジタル化に踏み切ろうと、世の中に溢れているツールやシステムを比較検討している最中に、「自分たちのブランド価値は何であり、それを担保するには何がベストなのか」という大事な観点を忘れてしまっている企業様は多い印象があります。
したがって、企業としては、デジタル領域に移行する際には、改めてブランドの提供価値を再設計し、オンライン化であっても、自分たちのブランド価値を担保することが必要になってきます。
そして、それこそが、縮小業界においても、顧客から選ばれ続けるブランドを確立することに繋がります。
では、いかにしてブランドの提供価値を再設計し直すかについてですが、ここでは「Gain(顧客の利益を増やす)」と「Pain(顧客の損失を減らす)」という2つのアプローチを用います。
1つ目の「Gain」に関しては、オフラインで獲得していたブランドの強みを、いかにしてオンラインに上手く移行するかという考え方です。オフラインで顧客が便益を感じていたベネフィットをオンライン上でも担保できるように、提供価値を構築します。
2つ目の「Pain」に関しては、オフラインで自社が実現できていなかった価値をオンライン上で提供する、あるいはオンラインで競合が提供できていない価値を自社が提供するという考え方です。オフラインにおける自社の弱みと、オンラインにおける他社の弱みにフォーカスして、提供価値を構築します。
したがって、ブランドの提供価値を再設計するには、「Gain Point」と「Pain Point」を網羅的に洗い出すことが重要になります。
さて、ここからは、これらのポイントを押さえた上で、ブランド価値を担保できるデジタルシフトを実現する具体的なプロセスを紹介していきたいと思います。プロセスの全体像は、下図のようになります。
まずSTEP1では、顧客体験の洗い出しを行うべく、部署横断型でワークショップを開催し、カスタマージャーニーを作成します。
ここでのポイントは大きく2つあります。1つ目は、オンライン・オフラインの顧客体験(行動)を限りなく細かく分解して、網羅的に洗い出すこと。そして、2つ目は、商品・サービスの基本価値だけでなく、顧客体験プロセス全体において、顧客が感じていると想定されるポジティブ・ネガティブな感情を網羅的に洗い出すことです。
異なる部署や階層の人を巻き込んで、複数の視点を活用することによって、顧客体験を「広く」「細かく」「深く」考察することが、STEP1では重要です。
このステップでは、STEP1で洗い出した各顧客体験がどの程度「ブランド価値」になっているのかについて、NPS(顧客推奨度)との相関分析によって検証します。
ここでは、顧客満足度を把握するのではく、顧客の他人へのブランド推奨度合いを通して、ブランド価値に対する影響度を理解することが重要になります。
このステップでは、先述した「Gain Point(NPSとの相関が高い)」と「Pain Point(NPSとの相関が低い)」の観点を用いて、注力ポイントを見極めながら、施策を立案・実行していきます。
施策を立案する際には、STEP2で検討した、自社のブランド価値向上に繋がっている顧客体験を、デジタル領域でどう担保するのかについて、体験×チャネルの組み合わせで強制的にアイディアを発想します。この段階では、実現可能性を問わないようにし、できる限り過去のパラダイムから解放されたアイディアを自由に発想します。
その後は、施策の絞り込みと実行を行い、実行したアクションが有効に機能しているかどうか、新たな顧客体験が生じていないかなどの観点から、PDCAを回して効果検証をしていきます。
以上が、アフターコロナのリスク・縮小業界で、顧客から選ばれ続けるブランドを確立する上で必要なことになります。
簡単に総括すると、リスクや縮小が見込まれる業界では、今後デジタル領域への移行が加速していくことから、オフラインにおける顧客体験・価値を細かく洗い出し、それをオンラインでの接点に最適化して接続し、ブランド価値の再定義を行うことが必要になってきます。
さて、これで皆様にお伝えしたいことは全てになります。いかがだったでしょうか。
今回は、アフターコロナ時代におけるチャンス・拡大業界とリスク・縮小業界の動向を俯瞰し、それぞれの業界で求められるブランド戦略のあり方について、ブログを書いてみました。
先行き不透明な経済状況の今だからこそ、“守り”の姿勢に徹するだけでなく、長期的な目線で前向きに“攻め”の姿勢も貫いていきたい。
そんな皆様にとって、有意義な情報を提供できていれば幸いです。