ブログ | 株式会社バイウィル

カーボン・オフセットに活用できる3つの環境証書とは?

作成者: 株式会社バイウィル|2023.12.18

カーボンニュートラルの達成に向け、国家だけでなく産業界や企業にもCO2排出量削減に向けた取り組みが求められています。しかし実際には自助努力だけでは削減しきれないケースもあり、そういった場合「他の場所での温室効果ガス削減・吸収活動を”環境価値”として取引し、どうしても排出されてしまう排出量を埋め合わせする”カーボン・オフセット”という考え方で対応することも可能です。

今回は、カーボン・オフセットで取引される代表的な環境証書の種類とそれぞれの特徴について解説していきます。

 

◾️目次

1.カーボン・オフセットと環境価値

2.環境証書の種類とポイント

 -非化石証書

 -グリーン電力証書

 -Jクレジット

3.非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットの活用用途と留意点

4.まとめ

1. カーボン・オフセットと環境価値

カーボン・オフセットとは、自らの活動により排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収活動により埋め合わせることをいいます。

 

 

他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量は「環境価値」として扱われ、市場で取引することが可能になっています。
カーボンオフセットをする際にはこの環境価値をクレジットや証書として購入し、自らだけでは削減できない排出量を無効化することで埋め合わせをすることが可能です。

 

他の場所での削減・吸収活動とは、例えば森林の管理・育成などの森づくりによって二酸化炭素の吸収を促す活動や、バイオマス・風力・水力・太陽光発電など再生可能エネルギーの利用や高効率省エネ機器の導入などにより、温室効果ガスの削減を実現できる活動のことです。それらの活動によって創出された環境価値は一定のルールに基づき定量化され、証書やクレジットとして扱われます。

 

そのようなクレジットや証書を購入することを通じて、自社の温室効果ガスの排出量をオフセットすると同時に、森づくりや再エネの利活用・高効率省エネ機器の導入といった活動により多くの資金が循環することとなり、さらなる温暖化対策が実現できるようになります。

2. 環境価値証書の種類とポイント

環境価値を購入することによって排出量の削減などに貢献しているとみなされる「環境価値証書」について、現在日本では、「非化石証書」「グリーン電力証書」「J-クレジット(再エネ由来)」の3種類が流通しています。

非化石証書

非化石証書とは、非化石電源からつくられた電気であることを証明した環境価値証書のことです。

非化石証書には、太陽光、風力、小水力、バイオマスなどFIT電源で発電された「FIT証書」、再生可能エネルギーのうちFIT制度を活用しない再生可能エネルギー(大型水力やFIT期間が終了した電源)による「非FIT証書」、原子力など再生可能エネルギー以外の非化石電源による「非FIT証書」の3種類が存在します。非化石証書購入の際は、実際の電力と非化石証書がセットで取引されます。

まだ供給量が少なく価格が高いグリーン電力証書やJクレジットと比較して、供給量に伴う購入スピードや価格帯において取り組みやすいのが非化石証書です。

グリーン電力証書

グリーン電力証書とは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオエネルギーの5種類いずれかの再生可能エネルギーによって作られた電気の環境価値を証書化したものです。グリーン電力証書を購入した企業や自治体は、証書に記載された電力量相当分の再生可能エネルギーを使用したとみなされます。非化石証書は再エネ由来だけでなく、再エネではない原子力発電も非化石電源に含まれる一方で、グリーン電力証書は再エネ100%の証書になります。

J-クレジット(再エネ由来)

J-クレジットとは、CO2等の排出削減量・吸収量を「クレジット」として国が認証するものです。再生可能エネルギー由来の電力創出量だけでなく、適切な森林管理や省エネ設備の導入によって削減・吸収された量をクレジット化し取引することができますが、その中で再エネ由来のものだけが「証書」としても位置付けられます。 

3. 非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットの活用用途と留意点

非化石証書、グリーン電力証書、Jクレジットは、いずれも購入量分に応じてCO2排出量を減算できるゼロエミ価値や、実質再エネを利用していることを主張できる再エネ価値があります。その他具体的な活用用途と留意点を「報告利用」「信頼性」「PR」「有効期限」の軸で整理してみましょう。

 

※1. Science Based Targets:パリ協定の求める水準と整合した温室効果ガス排出削減目標が求められる
※2. Carbon Disclosure Project:国際的なNGOであるCDPが気候変動等に関わる事業リスクについて企業がどのように対応しているか調査・評価・公表するプロジェクト
※3. どこの発電所でどのように発電された分なのかがわかるトラッキング情報が付与された非化石証書
※4. FIT(固定価格買い取り制度)の適用を受けない、再生可能エネルギー以外(原子力発電など再エネ評価価格を持たない発電)の環境価値に関する証書

 

<報告利用>
グリーン電力証書とJクレジットは主要国際基準や法律における開示要求に対して報告可能であり、非化石証書に関してはRE100のみ「トラッキング非化石証書」での報告が必要となります。

<信頼性>
それぞれに特徴がある状況です。自社が求められていることを認識した上で最適な選択が必要です。

<PR>
いずれも脱炭素に向けた取り組みとしてPR可能となります。

<有効期限>
非化石証書は有効期限があり年度内に使い切れないと無効扱い、グリーン電力証書とJ-クレジットは有効期限が定められていません。

 

上記のように、制度面などでの優劣はほとんどありませんが、「有効期限」においてグリーン電力証書とJ-クレジットは有効期限が定められていないことから、安い時期にまとめて購入し保持しておくことも可能です。一方で、古い証書を利用することに対して批判の声もあがることもあるのでその点を考慮する必要があります。

また、非化石証書は流通量が非常に多く、2021年に需要家による直接購入が始まったばかりであることからも比較的安価で購入可能となっています。それに対してグリーン電力証書とJ-クレジットは流通量が少なく、相対取引がメインのため、価格競争も起きにくいのが特徴です。

4. まとめ

自助努力だけでCO2排出量ゼロを目指すのは非常に困難です。

だからこそ、非化石証書やグリーン電力証書、Jクレジットとの組み合わせによって再生可能エネルギー利用100%やカーボン・オフセットによる脱炭素を目指すことが期待されていますし、大規模な設備投資を行わずとも、「必要な量だけ・必要な時に」導入することができる点も魅力です。

バイウィルでは、貴社の脱炭素や再エネ化の推進、カーボンニュートラルに向けたクレジットや証書活用の無料相談を受け付けております。

下記お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。