先日、カナダのCorporate Knights社が、世界で最も持続可能な企業100社を選出する「2026 Global 100 Index」を発表しました。
カーボンニュートラル総研の所長である伊佐が速報としてSNSでも触れましたが(2月13日のX投稿)、今回のランキングは日本企業にとっても非常に示唆に富む結果です。
本メルマガでは、このランキングの背後にある考えを読み解き、企業が直面するサステナ取組の「企業価値」への影響と、日本企業に求められるマインドセットについて、カーボンニュートラル総研の森英哲が解説します。
トップ10企業はデンマークやアメリカなどの製造業・エネルギー企業が中心ですが、今回のランキングで特筆すべきは順位の流動性です。
評価方法の刷新もあり、昨年からトップ10を維持したのは「台湾高鉄」と「オーステッド」のわずか2社だけでした。
世界レベルでも、サステナブルリーダーの座を維持することの難しさが浮き彫りになっており、日本企業でトップ100入りしたのは、エーザイとリコーの2社のみです。
長年ESGに注力してきた日本企業が苦戦している理由は、「形式的なガバナンス」から「実効的な財務インパクト」への評価比重のシフトにあります。
Global 100の評価は大きく2段階で行われ、まずは25項目の「製品スクリーニング」が実施されます。これは、武器や化石燃料といった業種除外に加え、環境・人権領域での深刻な懸念(レッド判定)を排除する、いわば「足切り」条件です。
この門を通過した企業に対し、「サステナブル収益」「サステナブル投資」「収益モメンタム」「報酬リンク(役員報酬との連動)」「制裁・罰金」「死亡事故」の6観点に沿ってスコアリングされますが、ここで注目すべきは、「サステナブル投資」と「収益のモメンタム」です。
今回のランキングは、副題「Speed in the spotlight」が示す通り、「将来のためにどれだけ資本を投じているか」だけでなく、「その事業がいかに速く成長しているか」という動的な変化が評価の鍵になっています。
なぜ、サステナビリティの評価において、ここまで財務項目が高いウェイトを占めるのでしょうか。
それは、サステナビリティが「企業価値(事業価値)そのもの」を構成する要素になったからです。
企業価値の根幹は、企業が生み出す「将来キャッシュフロー」を「現在価値」に割り引いた合計です。
今後は、日本でもGX-ETS(排出量取引)の本格始動で、排出量がコストとして損益計算書に直接影響し、一方でサステナブルな製品が「プレミアム」や「市場シェア」として売り上げを牽引していきます。
世界的にサステナブル投資の多寡が将来のキャッシュフローの確実性と成長性を左右する中、Global 100が財務項目を重視するのは、それが「企業の存続可能性と収益性」を測る極めて合理的な指標だからです。
今回の結果を見て、「欧米主導の指標だから」と距離を置くことは簡単ですが、資本市場がこうしたロジックで動いている以上、日本企業もサステナビリティを「経営の周辺要素」から「中心的な成長戦略」へとアップデートする必要があります。
自社の投資ポートフォリオは、将来の炭素価格上昇に耐えうるか?
サステナブル事業は、資本コストを上回るリターンを生み出しているか?
こうした問いへ真摯に向き合い、本質的な変革を加速させることは、もはや避けては通れない経営課題です。
カーボンニュートラル総研では、「GXをやるべきことからやりたくなることへ」というビジョンの下、単なる規制対応としての脱炭素に留まらず、企業の成長戦略としてのGXを実現するための支援を行っております。
こうした変革の先に、世界をリードする企業が日本から一社でも生まれることを切に願っています。