先日、ビジネスにおけるSDGs推進を評価する国際NGO「World Benchmarking Alliance(WBA)」が、「人類と地球へ最も影響のある企業2,000(SDG2000)」の2026年版を発表しました。
カーボンニュートラル総研の所長である伊佐がSNSでも触れましたが(2月25日のX投稿)、掲載企業の総売上は約8,111兆円に達し、GHG排出量は世界の55%以上を締め、本リストは「地球の未来を左右する」プレイヤーたちの通信簿とも言えます。
本メルマガでは、カーボンニュートラル総研のH.MORI が本リストを紐解き、サステナビリティの「理想と現実のギャップ」を浮き彫りにした上で、高い評価と企業価値が得られるプレイヤーの特徴を解説します。
今回の調査で最も驚くべきは、サステナビリティの責任を取締役会レベルに設定している企業が85%に達した一方で、具体的なアクションは伴っていない点です。
特に顕著なのは「自然資本」への対応で、生態系サービスへの依存度を測定している企業や、そのリスクを財務影響として定量化している企業は極めて限定的でした。
では、このような傾向は何を意味するのでしょうか。
それは、多くの企業において、サステナビリティは「経営の重要課題」として掲げられているものの、守るべき規制あるいはルールとしてしか認識されていないという実態です。
また、このことは「将来のキャッシュフローを棄損するリスク」として管理されていないことも意味しています。
この点、更に危機感を覚えるのが、サプライチェーンのリスク評価の遅れです。
全体でわずか10%、自動車やICTといった高リスクセクターでさえ14%の企業しか、サプライチェーン上のリスク評価を実施できていませんでした。
多くの企業が「そもそも評価が難しい」と口をそろえますが、これまでのメルマガやブログでもお伝えしてきた通り、企業価値(事業価値)の算定において、この放置は「致命傷」になりかねません。
なぜ、サステナビリティの評価において、ここまで財務項目が高いウェイトを占めるのでしょうか。
それは、サステナビリティが「企業価値(事業価値)そのもの」を構成する要素になったからです。
企業価値の根幹は、企業が生み出す「将来キャッシュフロー」を「現在価値」に割り引いた合計です。
今後は、日本でもGX-ETS(排出量取引)の本格始動で、排出量がコストとして損益計算書に直接影響し、一方でサステナブルな製品が「プレミアム」や「市場シェア」として売り上げを牽引していきます。
世界的にサステナブル投資の多寡が将来のキャッシュフローの確実性と成長性を左右する中、Global 100が財務項目を重視するのは、それが「企業の存続可能性と収益性」を測る極めて合理的な指標だからです。
ここで、企業価値(事業価値)の算出式から、サプライチェーン強靭化の意義を再定義しようと思います(DCF法を参考に、あえて中長期的な視点で簡略化した算出式を使用)。
企業価値=①将来キャッシュフロー÷(②資本コスト-③期待成長率)
サプライチェーンへの投資は、単なる出費ではなく、算出式の各変数に影響を与え、企業価値を劇的に押し上げることが可能です。
WBAの報告書が示す世界的な低水準は、裏を返せば多くの企業にとってチャンスがあるということです。
自然資本のリスクを定量化し、サプライチェーンの強靭化を「守りのコスト」ではなく、「企業価値を最大化するための成長投資」と再定義できるかが分水嶺となります。
私たちカーボンニュートラル総研では、「GXをやるべきことからやりたくなることへ」というビジョンの下、脱炭素に留まらず企業価値の向上に主眼を置いて、こうした成長投資への助言を含めたご支援をしています。
読者の皆さまにおかれましても、資本競争で真に高い評価を享受できるよう、従来以上の明確な方針に基づいてサプライチェーンへの投資を実行されてはいかがでしょうか。