UNFCCC-COP30(以下、「COP30」)を前に日本、ブラジル、イタリアが中心となって発表された「Belém 4x Pledge on Sustainable Fuels(ベレン持続可能燃料4倍宣言:以下、ベレン4X)」は、国際的な気候変動対策において、重要な論点を提供しています。
今回は、カーボンニュートラル総研のN.UEDAが、この誓約の背景、目標、主要な批判、そして環境価値と資金循環の観点から見た戦略的な位置づけを分析します。
ベレン4Xは、COP28で合意された「エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行」という方針を受け、その具体的な実装手段として、輸送・産業部門(Hard-to-abate sectors)に対し、燃料転換という選択肢を提供し、ネットゼロ達成を後押しすることが期待されています。日本、ブラジル、イタリアなどが主導し、2035年までに持続可能な燃料の生産と利用を4倍以上に拡大するという野心的な目標を設定しています。
対象燃料は、バイオ燃料、水素、合成燃料(e-fuel)などであり、その達成のためには、基準・認証の統一、巨額な投資と技術協力の促進、規制・政策枠組みによる市場確約の3つの柱を通じた国際協調が不可欠とされています。
この「燃料転換」重視のアプローチに対しては、その実効性と優先順位に関して、複数の懸念が提起されています。
環境価値と資金循環により脱炭素を加速させ、宣言の目標達成のためには、単なる技術拡大ではなく、「価値の公正性」と「市場設計」の観点から戦略を構築すべきと考えます。
論点:倫理的なバリューチェーンと価値の公正な分配
環境価値の最大化と社会性の確保は、誓約の信頼性を担保する核心的な要素と考えます。
ベレン4Xの成功は、環境負荷の最小化と社会的な公正性を両立できるかにかかっています。
金融・認証セクターは、厳格な基準に基づく原料調達を要求し、生産国への公正な利益還元と人権・環境配慮を徹底することで、倫理的なサプライチェーンを確立すべきです。そして、この公正な価値連鎖を通じて実現される社会全体の排出削減貢献量を、金融と認証の力で透明化し、市場価値として顕在化させることが、目標達成に向けた最も強固な基盤となります。