今回のコラムでは、5月24日に弊社で開催致しましたセミナー「NECの取り組みから学ぶ!ブランド浸透の秘訣と実践例」の様子を皆様にお届けいたします。
昨今、ビジネススピードが加速し、様々なブランドの興隆が激化するのに伴い、ブランド強化に力を入れる企業は増えています。しかし、短期的な認知・売上向上などの効果はあっても、長期的なブランド力強化に繋がらない企業も少なくはないです。そこで重要になってくるのは、社員が一貫性を持ってブランド価値を業務に反映させられる社内の仕組み化や意識統一です。
そこで今回のセミナーでは、2015年より「Orchestrating a brighter world」を企業ブランドメッセージに掲げ、同時にグループ社員への浸透活動に力を入れている日本電気株式会社(以後NEC)のコーポレートマーケティング本部ブランド戦略・IMCチームから山室元史氏を特別ゲストとしてお招きし、NECの具体的な取り組み事例をご紹介いただきながら、ブランド浸透のポイントや施策設計について語っていただきました。
当日は約150人の方にお集まりいただきました。ありがとうございました!
◆当日のプログラム
-----------------------------------------------------------------
第一部:ブランド構築のあるべき姿・考え方
第二部:ブランド浸透のための具体的施策
-----------------------------------------------------------------
フォワード(現:バイウィル)加藤よりブランディング実践時のポイントを解説しました。まず加藤は、ブランド構築においては、模倣困難性の高い「コンセプト」「仕組み」の設計が重要で、この2つこそが真の競争優位を作り出すと説明した上で、第一部ではコンセプト策定の進め方を説明しました。
コンセプトを構成する4つの概念を意識してブランドを構造的に捉えることで、“言葉遊び”に留まらない明確なブランド価値定義が可能になると指摘し、またコンセプト策定を進める際には、「トップダウン」と「ボトムアップ」を組み合わせて自社に適した策定方法を採ることが重要だと語りました。
その後、NECの山室氏よりNECグループにおけるブランド策定の考え方について語っていただきました。
山室氏はブランド策定の前提として、ブランド開発の背景についてお話頂きました。NECでは2013年の4月にICTの力で社会課題を解決する社会価値創造型企業への変革を打ち出しましたが、様々な事業を展開していることもあり、当時は「NECが何をする会社かわからない」という声が社内外から多く上がったそうです。そこで、社会価値創造型企業NECならではのメッセージを明確化するために、新ブランドステートメントを開発したとのことでした。
続いてブランド開発時のポイントとして、「社長・CMO主導」「社内の巻き込み」「一貫性」の3つを挙げ、それぞれについて解説しました。
まず「社長・CMO主導」に関しては、NECに適したブランド策定方法はトップダウン型だと判断し、トップダウン型でブランド開発を行ったとのことでした。また、リブランディングの際にトップの協力を得ることが困難だというのは多くの企業が抱える悩みですが、NECでは中期経営計画に合わせてリブランディングを行ったことで、社長・CMOの積極的な参加を得ることができたそうです。山室氏によれば、ブランド開発のピーク時にはCMOとほぼ毎日会って濃い議論を交わしたとのことでした。
「社内の巻き込み」に関しては、トップダウン型でブランド開発を行う一方で、開発当初からなるべく多くの社員を巻き込むように心がけ、グループインタビューやアンケートを積極的に実施したそうです。特にアンケートでは、“なぜ”の部分を重視することがブランドを突き詰めていくことにつながるという考えのもと、なぜその選択肢を選んだのかを重点的に聞いたと山室氏は語りました。
「一貫性」に関しては、企業理念やビジョン、バリュー(行動指針)、以前のブランドステートメント「Empowered by Innovation」との紐付けを行い、既存のものとの一貫性を保つように心がけたと山室氏は説明しました。また、ブランド開発時には開発言語にもこだわり、海外の現地法人で働く人に配慮してブランド開発を英語で行ったそうです。さらに、ブランドステートメントに込めた思いを解説文やブランドストーリーで補足することで、会社全体の方向性を支えているのは社員一人ひとりであるという認識を持てる仕組みを構築することも重要だと山室氏は力説しました。
続いて、山室氏がブランドの事業への落とし込みについて解説しました。NECでは社内でブランド浸透を図るために、ブランドに繋がる7つの社会価値創造テーマを事業において徹底しているそうです。
また、ブランドとの一貫性を持って事業や商品をマネジメントするように心がけており、新ブランドステートメントと紐付けて既存の事業と商材の名前の見直しを行い、新規の事業と商品の名前に関してはブランドチームが最終的な確認を行っていると山室氏は話しました。
さらに山室氏は、多くの社員は自分の普段の業務がNECの掲げる社会価値創造に繋がっているという意識を持っていないため、ブランドが遠い存在のものに思えてしまうという問題点を指摘しました。これを解決する手段として、NECでは社員に対して「社会価値創造 自分ごと化ワークシート」と呼ばれるワークショップを実施していると紹介。ペアワークで行うこのワークショップを通して、社員は自分だけでは気づけないことに気づけて、自分の仕事が社会価値創造に繋がっていると認識するようになるとのことでした。
フォワード(現:バイウィル)加藤より、ブランド浸透に必要なステップとして「緩和」「変化」「定着」の三段階を指摘し、各段階について解説しました。
まず「緩和」の段階は、役職、役割によりズレが生じる視界・時間観を共有することで、社員の過去慣性を解き、変革に向けて心を解きほぐす段階だと説明。その後の「変化」の段階では、全社表彰イベントやムービーなどを利用して、やりたい・やれそう・やらなきゃの観点から社員の認識変革を促す必要があると話しました。そして、最後の「定着」の段階で組織面、業務面双方の仕組みを構築することで変革を定着させると語りました。
続いて山室氏より、NECのブランド浸透実践例について語っていただきました。
NECでは、新ブランドステートメント「Orchestrating a brighter world」の世界観をより効果的に発信し、新たなブランドの印象を確立するために、社内外向けの様々なツールの視覚面(色・形・文字など)の規定を行なったそうです。
WEBサイト、カタログや広告、展示会のブース造形を刷新した他、パソコン画面の壁紙、メールの著名、手提げ袋、名刺のデザインも刷新したと山室氏は語りました。
さらに山室氏によると、NECではブランドの社内浸透施策に力を入れており、イントラサイトでトップメッセージを配信している他、創立記念イベントや説明会、対話会を積極的に利用しているとのことでした。
山室氏は最後に、ブランドイメージと購買要因には一定の相関関係があることを指摘。そのため、ブランドは経営戦略の重要な要素であるとも語りました。しかし、ブランドの確立・展開に即効薬はないため、最大のブランド発信源は社員一人ひとりであるという認識を持ち、地道にブランド浸透に取り組んでいくしかないと山室氏はセミナーの最後を締めくくってくれました。
以上、セミナー内容について一部を書かせていただきました。
皆様がブランド強化に取り組む際の参考になれば幸いです。
*この記事のサービスについて詳しく知りたい方はこちら>>ブランドコンサルティング