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ブランド構築手法の”タイプ分け”と”落とし穴”

作成者: 伊佐 陽介|2014.07.03

こんにちは。取締役の伊佐です。

前回はそもそも「ブランドって何?なぜ必要なの?」について述べました。

今回は、これまでのブランディング支援の経験で目の当たりにしてきた、
いざブランディングを進めるにあたって生じる”落とし穴”について、

・ブランド構築手法のタイプ分け
・各タイプごとの”落とし穴”

という形でお伝えしたいと思います。

まず、私がこれまで携わってきた企業ブランディングの事例を振り返ってみると、
その企業の文化や担当者の考え方によって、進め方に大きな違いがありました。

その進め方の違いを大きくタイプ分類してみると、以下のようになります。

①内発型 ⇔ 外部適応型
②トップダウン型 ⇔ ボトムアップ型
③コンセプト重視型 ⇔ アクション・アウトプット重視型


細かく分類するともっとたくさんありますが、概ねこのような感じです。

このタイプ分類を簡単にご説明しつつ、
それぞれのタイプごとによくある”落とし穴”を述べていきましょう。

①内発型 ⇔ 外部適応型

内発型は、社内の経験・ナレッジ、想いや歴史、あるいは技術的シーズやエクイティありきで、それを外に向けて打ち出そうとする動きからブランディングが始まるタイプです。

この場合、社内の共感は得られやすく、強い推進力やスピード感が得やすいため、世の中の大ヒット商品は意外とこちらのタイプから生まれたりすることが多い反面、対象市場や顧客の視点からニーズや受容性が十分に検証されず、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」といった感じで世の中に受け入れられないままマーケットアウトすることも多々あるということが「落とし穴」となります。

外部適応型はその逆で、対象市場や顧客のニーズ、トレンドなどが先にあり、それに沿う形でリブランディングしたり新たにブランドを立ち上げたりするタイプです。

こちらはある意味論理的にブランドがつくられることが多いため、”打率”は上がり易いという利点はあるものの、多くの場合はそのニーズやトレンド自体が顕在化、つまり「既に他社にも把握されている」ことがほとんどであるため、リリースされる時には既に競合過多のレッドオーシャンに埋もれてしまい、大ヒットにはなりにくいというのが「落とし穴」となります。

②トップダウン型 ⇔ ボトムアップ型

トップダウン型というのは、ブランディングの推進力が、組織の上層から下層に向かうタイプのことです。

言うまでもなく、トップのコミットメントが引き出しやすいため、予算やスピード感が担保されやすく、ブランディングが一気に進みやすい反面、トップの交代と共にコロコロ方針が変わったり、トップの推進力に依存して属人性が高まり、ブランドを自律的にマネジメントする仕組みや文化が根付きにくいというのが「落とし穴」となります。

ボトムアップ型というのは、ブランディングがミドルマネジメント層、あるいはブランド担当部署からの発信で行われ、都度細かくトップの承認を取る形で進められるタイプです。

この形式を採っている時点で、トップ依存ではなく自律的なマネジメントの下地ができるという意味では、長期的にブランドを育てていきやすい面があるのは確かですが、毎回担当者が企画し、それを何度も会議で通してトップの承認を取り(ひっくり返されることも多い)、というプロセスを経るので、時間的・人的コストの割に、なかなか全体としての推進力が高まりにくいことが多いのが「落とし穴」となります。

③コンセプト重視型 ⇔ アクション・アウトプット重視型

コンセプト重視型とは、ブランドコンセプト(ブランドの根幹たる「思想」や「提供価値」のこと)の作り込みを重視し、そこに大きなリソースを割くやり方のことです。基本的にはコンセプトが存在しないブランドというのは考えにくく、そういう意味ではコンセプトづくりに全く力を入れないブランドはないと思いますが、それでもその比重が非常に大きいタイプとご理解ください。

この場合、コンセプトがいかにアウトプット(各種施策)に反映されるべきかが後回しにされがちで、また、それが継続的に反映されるための仕組みまでデザインされることが少ないため、ある意味で”言葉遊び”になってしまい、収益に結びつきにくいというのが「落とし穴」になります。

一方、アクション・アウトプット重視型とは、コンセプトの設計自体が粗くても、核となる部分だけを明確にしたら、あとは社員の行動とアウトプットに全力を注ぐタイプです。

ある意味で、目に見える施策の成果によってブランドを社内外に根付かせようという真っ当なアプローチですが、開発コストが大きな業界やマス商材を扱うブランドでは採用しにくいアプローチでもあります。この場合は、コンセプトを「絵に描いた餅」にしないという意識や風土は形成し易いのですが、ブランディングのPDCAが機能しにくく、ブランディングの効果・効率が上がらなかったりすることで、結果的にそもそものブランディングという活動自体が軽視されることになってしまいがちというのが「落とし穴」となります。

こうして見ていくと、「どんな進め方をしても落とし穴ばかりじゃないか!」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません(笑)

次回はこうした「落とし穴」にはまらず、自律的にブランドを育て、
「選ばれ続ける」状況を創るための我々なりのアンサーをお伝えしたいと思います。