ヘルスケア事業を加速・強化するために、2020年よりNECソリューションイノベータからカーブアウトする形で創業されたフォーネスライフ株式会社様。人間の体を構成する「タンパク質」を解析する技術と、ICT・AI技術を用いて現在の疾病リスクを見える化し、一人一人の健康サポートを行うサービス「フォーネスビジュアス」を主力事業としている。今回は、会社立ち上げ期のコーポレートブランドコンセプト・ビジョン・ロゴ策定から、サービスブランドの構築・ウェブサイトやアプリ開発をおこなった。
江川様:これまでNECグループで行っていたヘルスケア事業をさらに強化、加速していきたいと考え、グループからカーブアウトする形で、フォーネスライフを創業しました。私が勤務していたNECグループでは、10年以上、アメリカにあるSomaLogic社と共同で研究開発を行っていました。その研究の中で、SomaLogic社の一度に7000種類のタンパク質を測定する技術「血中タンパク質解析技術」に注目をしました。この技術はこれまであまり精度の良くなかったものを飛躍的に向上できるものすごく画期的な技術です。このSomaLogic社の技術とNECがもつAI技術とをかけ合わせれば、たった数滴の血液成分で、早期発見よりもさらに早い段階で健康状態や疾病のリスクを見える化できます。人々がずっと健康でいられる社会の実現に向けて大きな価値を提供できると考えました。
私は当時、経営企画や法務の仕事を担っていたのですが、人々が長く健康でいられる社会の実現に向けて、この技術をいち早く事業化させたいと思いました。スピード感を持って取り組むには、新しく会社を立ち上げるのがベストと考え、私自身の社会人人生の全てをかける想いで創業を決意しました。
また、フォーネスライフ(Foneslife)という企業名は、“命の声”と言う意味のギリシャ語「Fones (声)tis zois(命)」を語源とし、“命の声”、体からのシグナルに耳を傾け続けるという想いを込めて命名しました。
江川様:創業後、その後のビジネス展開を記者会見の場で発表するために、様々な準備が必要でした。その中でコーポレートロゴを作成したいというのは明確に決まっていたため、フォワード(現:バイウィル)さんにお声がけをしたのが最初の接点です。また、当時事業の大きな構想や会社として訴えていきたいキーメッセージはあったものの、それらが明確に形になっていたわけではなく、フォワード(現:バイウィル)伊佐さんと議論を重ねるうちに、弊社のサービスをより沢山のお客様に届けていくためにはブランド戦略が必要だと強く感じるようになりました。そこで、ロゴだけでなく、コーポレートブランドのコンセプトやビジョン、タグライン制作といった、ブランド開発全般の支援をお願いすることにしました。
社内外に向けて軸となるメッセージを掲げることで会社としての魅力や求心力を高める
江川様:事業をどのように成長させていくべきか、未来に向けて会社の方向性を明確に打ち出せたことで、今やるべきことが何かをしっかりと整理することができました。それによって、組織づくり、特に採用に大きな効果がありました。求める人物像が具体的に定まり、採用を加速させることができました。
フォワード(現:バイウィル)伊佐:ビジョンを掲げ、社外に向けて発信したことが、同じ志を持った人や共感をした人を惹きつける力になったのかもしれませんね。
江川様:そうですね。創業して間もない頃は特に「人」の力が重要なので、組織力強化に繋がったのはとても良かったと思います。
江川様:まずサービスの意味や意図をわかりやすく伝えられるようにしたいという目的がありました。中長期的に考えると、幅広くサービス展開をしていく可能性があったので、新しいサービスが増えるたびに「フォーネスライフの○○」「フォーネスライフの□□」と名称が増えていっては、周囲に理解を得られにくいのではと感じていました。
そこで、ビジョンである「誰も病気にならない未来。誰もが自分らしく生きられる社会へ。」に近づき、ビジネスの成長も加速させていくためには、弊社が強みとしている複数のサービスを一つに集めブランド化する必要性があるという考えに至ったのです。
弊社のサービスの強みは、SomaLogic社の血中タンパク質の測定技術です。しかし、その技術で将来の疾病を予測できるだけでは足りません。リスク予測を元にその後どのように生活習慣を改善すればよいのか、行動変容に落とし込んでこそ「誰も病気にならない未来」の実現に近づくことができます。そこで健康維持・改善がトータルで叶うサービスブランドとして、専用アプリを使った生活習慣改善メニューの提案や、コンシェルジュとの健康相談メニュー、といった行動変容に繋がるサービスを一つに集約する形で、フォーネスビジュアスが誕生しました。
医療関係者向けサービスサイトも制作
江川様:社会的な健康経営に対する意識の高まりもあって、企業からの注目も集まり、営業も軌道に乗ってきています。それぞれのサービスを別々で展開していたら健康経営という切り口でアプローチすることはできなかったかもしれません。
複数のサービスを包含したことで軸がぼやけてしまうかもしれないという懸念はありましたが、企業の健康経営をサポートするトータルソリューションとしてブランド化したことで、サービスの切り口に広がりが生まれ、様々なニーズを持つお客さんとの接点を作ることができました。
また弊社はNECのグループ会社ですので、サービスがブランド化されたことで、グループの営業部の方々が商談の場で弊社サービスを紹介しやすくなったという変化もあり、サービス全体の訴求力が高まったと感じています。
江川様:フォワード(現:バイウィル)さんが弊社の事業に深く入り込み、ディスカッションパートナーとして寄り添った支援を行ってくださったお陰で、会社として今進めるべきことは何なのかをしっかりと整理することができました。
やりたいことや大きな構想はあったのですが、創業して間もなかったこともあり、具体的に何から取り掛かるべきかはまだ漠然としていて、さらに時間もない状況でした。その中で弊社の状況に柔軟に対応しながら、ロゴだけでなく、ブランドコンセプトやビジョンといった戦略的な部分の重要性にも気づかせていただきました。その後のサービスブランドの立ち上げやサービスサイト、アプリ開発といった全ての支援においても、しっかりとこちらの情報を咀嚼し、同じ目線に立って考えていただけたのが印象的です。
また、どの支援に対しても、すごく沢山のオプションを出してくださいました。特に企業ロゴやサービスロゴの数の多さには驚きましたが、このパターンならこれ、この状況であればこちら、というように様々な状況を想定してくださいました。弊社のことをよく理解いただいているからこそと感じます。
全体的に、一緒に創りあげているのだという感覚も味わえましたし、一つ一つの行程が終わる度に、次にやるべきことが整理されていったことが良かったです。
江川様:短期的には、フォーネスビジュアスというサービスをより多くの方に広めていきたいと思っています。「早期発見よりもっと早く」ということを掲げてはいますが、 脳卒中や心筋梗塞にかかってしまう方はまだまだ多いので、健康意識の高い2~3割の方に留まらず、自分の体の状態を知ることの重要性をもっと啓発していく必要があるし、より多くの方にこのサービスを認知してもらい、適切な生活習慣の改善で未来は変えられるという体験を少しでも増やしていきたいと考えています。
そしてもう少し中長期的な話をすると、サービス単体を広めることに留まらず、「誰も病気にならない世界」を創るために、病気や健康に関する価値観を変え、制度や仕組みも変えていきたいと考えています。フォーネスビジュアスでリスクを見える化した後の段階として、製薬や創薬、それに伴う自由診療と保険適用という仕組みへのアプローチも有効かもしれませんし、また、健康診断という大きな仕組みにアプローチしていくことも必要かもしれません。いずれにしても短期的に成し遂げられることではなく、10年20年という時間軸での取り組みになると思いますが、「誰も病気にならない未来」を創るためにチャレンジしていきたいと考えています。
(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)