快適で安全な建物環境を目指し、ビルディングオートメーションシステムの導入・メンテナンスや省エネルギーソリューションを展開する株式会社キクチ様。
エンゲージメント(社員の会社に対する愛着心、貢献意欲)の向上を目指し、理念体系の見直しに踏み切ることに。その取り組みにバイウィルが伴走させていただき、パーパス・ビジョン・バリュー(以下「PVV」)の策定をご支援しました。
菊地様:きっかけとなったのは、エンゲージメント向上プロジェクトの立ち上げでした。社員の定着に課題感があり、私や竹田を中心に立ち上げたプロジェクトです。
エンゲージメントの向上に向け、社員がどのような気持ちで働いているのかを知るべく、まずは社内でエンゲージメント調査を実施しました。結果は想定よりもはるかに厳しく、「働きがい」とは複合的ものであり、多くの課題が存在していることを改めて認識しました。
ですが、数多くある課題を、ひとつひとつ解決していくにも、 人的なリソースや時間には限界があります。
そこで、調査結果をもとに取り組みの優先順位を考えてみたところ、「会社がどこに向かうのかがわからない」という問題がすべての土台にあるのではと思い至りました。こうして、ミッション・ビジョン(以下「MV」)の浸透が、エンゲージメント向上の鍵になるかもしれないと考えたのです。
専務取締役 菊地 大介様
竹田様:実は、調査をするまでもなく、MVが浸透していないと感じる場面は日々ありました。そのため、当初はMVの“浸透促進”プロジェクトを企画案として出すことにしました。
竹田様:当時のビジョンは元々、中期経営計画の一部として作られた言葉でした。その言葉が当社らしいという理由から、ビジョンとして据えられるようになったという背景があり、「そもそも、このMVを掲げつづけるべきなのかを検討したほうがよいのではないか」という意見を受け、まずはMVとは何か、どのように作るのか、から勉強することにしました。
書籍をいくつか読むなかで、ここまで作り込むものなのであればプロの力を借りるべきだと思い、バイウィルさんを含めたコンサル会社数社にお問い合わせしました。
人材開発部 主任 竹田 晃子様
菊地様:バイウィルさんのご提案を聞き、やはり今のMVのままではいけないと思い至ったのが、作り直すことになったきっかけです。PVVやMVVなど会社が掲げる理念は、社員に浸透し、愛されるべきものですので、社員の皆がイメージでき、共感できることがとても重要です。だからこそ、経営陣だけで作るべきものではないと分かりました。
これまでのMVは経営層で決めたものでしたし、バイウィルさんから提案いただいた「社員を巻き込みながら策定するプロセス」にも納得感があったため、力を借りてリニューアルすることを決意しました。
竹田様:バイウィルさんはPVV・MVVの策定の実績を多くお持ちでしたし、ご提案いただくなかで元々抱えていた「やりきれるだろうか」という不安も解消されて、進んでいくイメージが持てました。安心してお任せすることができましたね。
菊地様:不安はなかったです。パーパスとは、会社の「社会的な存在価値」を示すものですよね。環境に向き合う当社の事業とは親和性が高く、「社会に貢献したい」という想いをもって入社してくれる社員も多いので、より共感してもらいやすくなると思いました。
本プロジェクトにおけるPVV策定の流れ
竹田様:これまで直接聞くことは少なかった、社員の価値観や仕事への考えを知ることができ、新鮮でした。改めて、皆が「お客さまのために」と思いながら仕事をしていることを感じられて、嬉しかったです。
菊地様:現場でお客さまに接する社員が、具体的にどのようなことを強みと捉えているのか知れたのは良かったです。もちろん経営層が考える「会社としての強み」と重なる部分も大きいですが、お客さまとの接点における強みには新たな気づきもありました。また、様々な部署の社員にインタビューしてもらったことで、組織ごとの風土や価値観への解像度が上がり、「自社らしさ」に関する議論を進めるうえで軸になったと思います。
菊地様:パーパスは経営層でのディスカッションで策定しました。会長・社長の代表2名の価値観や思考を改めて整理できたのがよかったです。これからのキクチを描くにあたって、共通する考えとそうでない部分を明確にし、共通しない部分についてはどのように着地させるのかを、バイウィルさんにリードしてもらい整理できました。
バイウィル:お二方とも「会社を成長させていかなければ」という強い思いと、一方で「自社だけ成長すればよいわけではなくて、社会貢献あっての会社の成長である」とのお考えが一致されていたので、スムーズでしたよね。
策定された新パーパス
竹田様:現場を引っ張るリーダー層だからこそ、「会社の10年後を考えよう」とはいっても今の仕事の延長線上で考えてしまい、目先の業務から切り離して考えるのが大変そうだったのが印象的でした。初めは、ワークショップの中で投げかけられた問いに対して、なかなか意見が出ないシーンも少なくありませんでした。
ですが、バイウィルさんが準備された外部環境の情報をもとに議論を重ねるうちに、視野が広がったというか、自身の業務だけでなく「外部環境を踏まえると、会社としてこうあるべき」という意見がどんどん出るようになったんです。それがとても嬉しかったですね。
ワークショップの様子
菊地様:会社の「社会的な価値」を客観的に語れるようになるという、その変化が短期間で起きたことは、とても意義深い経験だったと思います。 皆、視座がぐんと上がった様子でしたね。幹部候補、次世代リーダーの育成にも繋がったと思います。
ビジョン策定のワークショップでは私も議論に参加していたのですが、同じグループだったメンバーから、私も考えたことのないようなアイデアや新しい知識がどんどん出てきたのも嬉しかったです。これからの会社の発展にますます期待が持てました。
竹田様:実は始まる前、忙しい方々に参加していただくこともあり、あまり乗り気でなかったらどうしようと不安に思っていたんです。ですが、実際はとても盛りあがり、深い議論ができました。参加者にはこれまでの策定プロセスには関わっていない方も多く、パーパスとビジョンを紹介するところからのスタートとなりましたが、「パーパスやビジョンを実現するためには?」という問いに真摯に向き合ってもらえたのが嬉しかったですね。
また、元々「バリュー浸透のキーマン」になることを期待して集まっていただいた参加者の方々ではあったのですが、実際に策定プロセスに携わったことで、「部下に浸透させていきたい」と自発的に言ってくれる方もいました。このプロジェクトを実施してよかったと強く感じています。
菊地様:ディスカッションには複数事業の部長・課長や、各拠点の事業所長にも参加してもらいました。そのため、それぞれの強みや経験も違えば、日頃大切にしている想いも違うはずです。だからこそ、それらを共有しあってお互いの仕事や想いを知り、そのうえで「どのようなことを共通の価値観としてもつべきか」について話しあえたことには大きな意味があったと思います。
菊地様:「パーパス」というのは、会社が続くかぎり変わらないものです。そのように確固たる「会社が向かう方向」を全員で共有するという、これまではあまりできていなかったことを進めることによって、会社が変わるという期待感を持っています。
また、バリューが新しくなったことで、現状の価値観が変化したり、発展したりすることも期待しています。会社が変わり、社員の皆の価値観や行動も変わり、それぞれの仕事が社会貢献に繋がっているのだという実感が持てるようになれば、働きがいを感じてもらえるようになるのではないかと考えています。
PVVの浸透は社員の皆の協力があってこそですが、それ以上に、浸透をリードする私たちや策定に関わってくれたメンバーがPVVを意識しなくてはいけないと考えています。PVVが社員全員に理解・共感され、日々の業務の原動力になれるよう、浸透活動を進めていきます。
竹田様:PVVのリニューアルによって共通の価値観が改めて整理されたので、皆の足並みを揃えてさらに力強く進んでいきたいです。それが、エンゲージメント向上にも繋がると信じています。
浸透活動の一歩目として、当社の創業50周年記念式典で、新しくなったPVVをお披露目しようと準備を進めています。皆に楽しんでもらえるような企画も考えているので、発表した際に、社員の皆が会社のこれからに期待感を持ってくれたら嬉しいです。
2024年5月9日に開催された「創業50周年記念式典」の様子をお届け 創業50周年記念式典は、全国から社員の皆さまや関係者の方が集まり、執り行われました。
50年を振り返るムービーによって会場が温まったところで、菊地社長よりPVVが発表されました。心のこもったメッセージとともに発表されたPVVに、社員の方々も少なからず共感していただけたのではないかと思います。
発表の後、ビジョン策定に参加されたリーダー3名が登壇され、「ビジョン策定に参画した率直な感想」「ビジョンへの想い」「PVV実現のために、どのようなことを実践していきたいか」という3つのお題でトークセッションが行われました。
これまではあまり実施されてこなかったという、社員の方々に向けた方針説明の場。新たな指針となるPVVの発表、そして、会長や社長だけでなく、次世代を担うリーダーの方々の想いが伝えられたことで、これからのキクチを創っていく社員の皆さまの気持ちがひとつになったのではと思います。
ひとを想う力で、ともに「心地いい」を創る。パーパス実現に向けた一歩目となる、素敵な記念式典でした。
|
(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)