はじめまして。
インターン生の日下夏輝です。
私は現在ビジネススクール(MBA)に通いながらフォワード(現:バイウィル)でインターンをしています。
このブログでは、ビジネススクールで学んだことを、フォワード(現:バイウィル)内に蓄積されたナレッジと合わせてご紹介していきたいと思います。
近年、パーパスの概念に注目が集まり、新たにパーパスを掲げ、ミッション・ビジョン・バリュー(以下MVV)を再定義する企業が多くみられます。
一方で、パーパスやMVVを新たに創りだす、再定義することが目的となり、創業者や経営者の哲学や想いが込められず、オリジナリティのないものになってしまうこともあるのではないでしょうか。
そこで今回は経営者(創業者)の哲学や想いをバリューやカルチャーへ練りこみ、競争優位にまで高めたNetflixの事例を取り上げていきたいと思います。
Netflixは2億2000万人以上のユーザーを抱える世界最大級の動画配信サービスを提供しており、ユーザーの心理を掴んだレコメンド機能とオリジナルコンテンツで世界中のユーザーを惹きつけています。
Netflixは創業当初のDVDレンタル事業から、現在のレコメンド機能とオリジナルコンテンツに強みを持つ動画配信サービスに至るまでイノベーションを起こし続けてきました。
DVDレンタル事業の時代には、延滞料金ではなくサブスクリプションを採用することで、顧客との継続的な関係を実現しています。
DVDレンタル事業から動画配信サービスへの変化では、顧客がどの作品をレンタルしたのか?という過去の情報だけでなく、視聴した時間、視聴に使った端末、検索時のページのスクロール状況といった、より詳細でリアルタイムに近い顧客の視聴傾向までも収集することを可能にし、さらには一人一人の顧客の心理にあわせたコンテンツのレコメンドを可能にしています。2019年には顧客の75%以上がレコメンドから次に見るコンテンツを選択しています。
オリジナルコンテンツでは、これまでに収集した顧客の心理情報とAIを活用し、原作の選択から監督や俳優のキャスティングまでを可能にし、より顧客の心理にマッチしたコンテンツ制作を実現しています。さらに最近では、ムービーの中でユーザーに選択肢を提示し、選択していくことでシナリオが変化するインタラクション・コンテンツを展開しています。
では、なぜNetflixはこのようなイノベーションを起こし続けることができるのでしょうか?
Netflixがイノベーションを起こし続けることができる背景には、Netflixのカルチャーの存在があります。
Netflixのカルチャーである「能力密度」や「圧倒的な自由と当事者意識」などが、”有能な社員が極めてクリエイティブかつ生産的に働ける環境” を醸成し、この環境がNetflixの日々の業務での迅速な意思決定や市場の変化に迅速に適応する「柔軟性」、新たなサービスを創り出す「創造性」を高め、さらにはNetflixのカルチャーにマッチした「優秀な人材の採用」を可能にしています。
Netflixの「柔軟性」や「創造性」はこれまでにイノベーションを起こし続けてきたことから競争優位だといえます。「優秀な人材の採用」については、”人的資源”といわれるくらいですから、優秀な人材を持続的に採用し続けることができるというだけで充分な競争優位といえるでしょう。
では、そのようなカルチャーがしっかりと社内に根付いている理由はどこにあるのでしょうか。
例えば「超オープンなコミュニケーション」であれば、問題が生じた場合には必ず当事者同士で対面で率直に話し合うという明確なルールがあります。このルールは社員の明確な行動指針でもあるために、一般化するとバリューともいえるでしょう。
明確なバリューがあるからこそ、Netflixに社員の自然な行動の傾向であるカルチャーにまで高めることができているのです。
上記に挙げたように「能力密度」や「圧倒的な自由と当事者意識」などの特徴的なカルチャーを持つNetflixですが、その源泉はどこにあるのでしょうか。
Netflixのカルチャーができた背景には、創業者リード・ヘイスティングス自身の大きく2つの経験によって培われた哲学や想いがあります。
1つ目の経験はNetflixの前に設立したピュア・ソフトウェア時代のこと。組織マネジメントにおいて、ルールやポリシーを記載したハンドブックを作成していましたが、自由を制限することが優秀な人材の離脱を招き、長期的なイノベーションの芽を摘んでしまいました。結果として市場の変化に適応していくことができず、最終的にはライバルに買収されてしまいます。この経験が学びとなり、Netflixの「圧倒的な自由と責任」を創出しました。
2つ目はNetflix創業後のこと。金融危機に直面した際、やむを得ず社員の3分の1をレイオフしました。しかし、社員が3分の1減少したにもかかわらず、以前より明らかに多くの成果を出していたといいます。優秀な社員だけが働く環境となったことで、切磋琢磨してお互いから学びとる環境となり、オフィスの雰囲気が劇的に改善しました。この経験が「能力密度」「超オープンなコミュニケーション」「チームワーク」「ネットフリックスはチーム」というカルチャーの原点となりました。
ここまで見てきたように、Netflixのカルチャー・バリューには、創業者であるヘイスティングスCEOの経験から得た哲学・想いが練りこまれています。これによりNetflixは「柔軟性」「創造性」「優秀な人材の採用」といった競争優位性を高め、イノベーションを起こし続けることを可能にしています。
注意していただきたいのは、自社のカルチャーを創りたいと考え、Netflixのカルチャーを模倣するだけではいけないということです。Netflixやその他の優れた企業のカルチャーやMVVを模倣しても、冒頭で説明したように、創業者・経営者の哲学や想いが込められずオリジナリティのないものになってしまい、従業員の方々の納得感を得られず、カルチャーとして浸透することもありません。
弊社フォワード(現:バイウィル)ではカルチャーを創り上げるにあたり、経営者の哲学や価値観を引き出すお手伝いからスタートさせていただきます。そうして引き出した哲学や価値観を練りこんだバリューを一緒に策定し、浸透させ、カルチャーとしての定着を目指していきます。
経営者の哲学が重要だからこそ、それを練りこんだカルチャーを一緒に作り上げていきましょう。
参考資料
■Netflixのカルチャー:さらなる高みをもとめて(Netflix公式サイト)
https://jobs.netflix.com/culture?lang=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E
■【CEO直撃】なぜネットフリックスは、恐ろしいほど「自由」なのか(News Picks)
https://newspicks.com/news/5375795/body/
■ネットフリックスとナベツネ、新旧メディア王者5つの意外な共通点( DIAMOND online )
https://diamond.jp/articles/-/199666
■ネットフリックスからイノベーションが生まれる理由──能力密度や率直なフィードバックによる組織文化とは(Biz/Zine)
https://bizzine.jp/article/detail/8015
▼パーパス策定に関する他の記事を読みたい方はこちら
パーパスを策定するための3STEP~最も重要な「社員視点」を担保するために~