今回は、パーパスを策定する際にどのようなプロセスで進めるべきかをお伝えします。

先に結論をお伝えしますと、「社員視点」をいかに担保するかがポイントになります。以前の記事で、パーパスには「自社らしさ」の要素を含めるべきとお伝えしましたが、この「自社らしさ」を反映させるには、社員の声を引き出すことが必要です。パーパスは社員にとって内発的な原動力となるべきものですので、真に魅力的なパーパスを作るために「社員視点」を担保することは必要なこととなります。

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パーパス策定のタイミング

まずは、「パーパス策定をいつ始めるべきか?」です。パーパス策定の動きをスムーズに立ち上げ、その後の社内共有や浸透と連動させるために、下記のような「必要性」と「きっかけ」を意識したタイミングで策定を始めることを推奨します。これからパーパスの策定を検討されている方はぜひ意識してみてください。

パーパス策定の「必要性」を感じやすい:

  • 外部環境変化により経営・事業戦略の見直しを図るタイミング
  • 中期経営計画策定のタイミング
  • サステナビリティやSDGsへの本格的な取り組みを開始するタイミング

パーパスの策定の「きっかけ」となりやすい:

  • 社長・経営陣交代のタイミング
  • 周年記念のタイミング
  • M&Aなど組織統合のタイミング

パーパスの策定プロセスで抑えるべきポイント

以前の記事で、パーパスには「社会的価値」に加えて、「自社らしさ」の観点を含むべきだとお伝えしました。なぜなら「社会的価値」だけでは非常に抽象的な話になるので、同じ業界ではどの企業も似たような内容になりがちだからです。そのような「自社らしさ」が抜け落ちてしまったパーパスですと、社員から見たときに、なかなか”自分ごと”化が難しくなってしまいます。そうなると、当然業務上の思考・行動は変わらないので、アウトプットも変わらず、せっかくパーパスを策定したのに機能しなかったという結果に終わってしまいます。

つまり、「自社らしさ」を担保し、社員の共感性が高いパーパスを策定することが必要なわけですが、そのためには下記2点を踏まえたプロセス設計が効果的です。

① 「既に社内にあるもの」を丁寧に抽出すること

「社会的価値」と言っても、自社のリアルとかけ離れた”取ってつけたようなもの”では共感は産まれません。現在の自社の強みや大切にしていること、DNAなどを丁寧に掘り下げてその要素を基点とすることが重要です。

② 現場社員をしっかり巻き込むこと

パーパスは社員にとって内発的な原動力になるものですので、社員自身が日々感じていることをしっかりと自らの言葉で表出させることが効果的です。トップ(経営陣)主導で策定するのは良いですが、社員も策定に関わった感覚を持てるような巻き込みが重要といえます。

パーパス策定の3STEPとは?

ここからはパーパス策定の具体的なプロセスについてです。パーパス策定は「探索・発散」→「整理・統合」→「言語化」の3STEPで進めます。

まず、STEP1「探索・発散」では、経営陣や社員に対するインタビューやワークショップ、外部環境の将来予測を始めとしたデスクトップリサーチを行います。STEP1の洗い出しが不十分だと、どんなに上手く内容を整理をしても良いものを作ることはできませんので、最も重量なSTEPとなります

次に、STEP2「整理・統合」では、経営幹部を中心としたワークによってSTEP1で洗い出した要素を整理・統合していきます。なぜ「経営幹部を中心としたワーク」かというと、経営層が「これでいこう」と腹をくくることが大切だからです。ただし、経営層が作ったものに対して社員からのフィードバックを取り入れながら進めることで「社員視点」もしっかりと担保していくべきです。

最後に、STEP3「言語化」は、コピーライティングはもちろんのこと、アウトプットを魅力的に視覚化することも含まれます。パーパス策定の背景等を知らなくても、そのアウトプットを見ただけで良いねと言ってもらえるものを目指して最終化しましょう。

ここからは各STEPごとに簡単に説明をしていきます。

 

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パーパス策定のプロセス ~STEP1 探索・発散

「自社」「顧客」「社員」「社会」の4つの視点で、パーパスの要素となる情報の洗い出しを行います。
そして、この中で最も重視すべきなのは「社員視点」す。パーパス経営の実効性を高めるには、パーパスが「社員の内発的な原動力」となることが必要です。そのためには、表層的に社員の意見を聞くだけではなく、社員の根源的な想いまで引き出すことが重要です。

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また、「社会視点」に関しては、PEST分析に「Environment(環境)」を加えたSTEEP分析によって、自社を取り巻く現在~未来の社会課題を抽出します。昨今、サステナビリティ推進の動きが活発化しているように「Environment(環境)」の重要性が増しているので、PESTではなくSTEEP分析の枠組みを推奨しております。ワークを通して、今後の社会課題を社員自身に考えさせたり、議論させていく形となります。

 

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パーパス策定のプロセス ~STEP2 整理・統合

STEP1で抽出された「自社らしさ」と「社会的価値」の接点となる「存在意義」を見出していきます。

多くの会社を見ていると、パーパスが「自社らしさ」か「社会的価値」のどちらかに寄ってしまいがちであり、特に「社会的価値」一辺倒になっている事例がよく見受けられます。「こんな社会課題を実現します」と書いていても、どうしてその会社がやるのか?に答えられるものになっていないのです。なので、今後パーパスを作る際は「社会的価値」の要素を入れていくことはベースとしたうえで、「自社らしさ」を入れ込んでいく意識をすることが重要です。


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パーパス策定のプロセス ~STEP3 言語化

最後に、「自社らしさ」と「社会的価値」をシンプルな一文にまとめるのが言語化の作業です。

<パーパス言語化の具体例>
  • ソニーグループ
    「クリエイティビティとテクノロジーの力で」×「世界を感動で満たす」
    (「自社らしさ」×「社会的価値」)
  • ネスレ
    「食の持つ力で」×「現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」
    (「自社らしさ」×「社会的価値」)

よくあるケースが、「社会的価値」だけが描かれたパーパスになってしまうことです。原因としては、「自社」「社員」視点での深堀りが足りないからだと考えられます。このような「ほかの会社と変わらないよね・・・」と思われてしまうパーパスでは、社員の共感やワクワクは産まれません。上記具体例のように「自社らしさ」が最終アウトプットにまできちんと反映されたものを作りましょう

また、パーパスそのものはシンプルで分かりやすいものが良いですが、その分抽象度は高くなりがちです。そこで、より「自社らしさ」を伝える説明文章を作成するのも効果的です。ソニーグループでは、パーパスそのものに加えて説明文を付記しています。
(参考:https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/purpose_and_values/text/


さらに、策定したパーパスは「言語化」に加えて「視覚化」をしておくことで、その後の浸透フェーズのポイントとなる「多頻度接触」に繋げやすくなります。インパクトのあるキービジュアルに落とし込むことで強く印象づけたり、言葉だけでは人によって捉え方に差が出やすいですが、ムービーにすることで同じイメージが持ちやすくなります。その後、視覚化したクリエイティブを活用しながら、日常での接触頻度が高い各種ツールに展開することがポイントです。(例:社内ポスター、名刺、Zoom背景、TVCM、Youtube、社内イントラ など)



ここまでお読みいただきありがとうございました。

最後になりましたが、弊社では貴社のご状況(事業特性や規模など)に合わせたパーパス策定のご提案やディスカッションが可能です。これからパーパスを作ろうとしている方でも、既に進行中の方でも構いませんので、お気兼ねなく一度ご相談ください。

 

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パーパス策定の進め方