新型コロナウイルスの影響による3密回避やリモートワークの推進といった動きを受け、多くのBtoBビジネスでは、マーケティング・営業活動のデジタルシフトが急速に進んでいます。このデジタルシフトの流れの中で、いま自社Webサイトの重要性が非常に高まっています。
しかし、多くの企業がWebサイトに注力するほど、オンライン上で似たような情報が溢れ、他社との差別化や自社サービスの認知拡大が難しくなります。したがって、BtoB企業に求められることは、自社ブランドの価値を改めて明確にし、自社が選ばれる要素をWebサイトにしっかりと落とし込むことです。今回は、その具体的な手法について、皆さんにお伝えしようと思います。
Webサイト制作・リニューアルを通じて、自社のブランド価値をWebサイトに落とし込む方法は、下記4つのSTEPで構成されます。
STEP1:戦略策定(自社のブランド価値を明確に定義する)
STEP2:企画(ブランド価値と、Webサイトのコンテンツを接続する)
STEP3:制作(適切な外部パートナーを選定~連携する)
STEP4:運用(部署横断で継続的な運用を図る)
各STEPの詳細について、以下で説明していきたいと思います。
STEP1の戦略策定では、自社のブランド価値を定義します。そもそも、ブランドは顧客に対して何らかの価値を想起させ、期待を高める役割を果たします。ステークホルダーの期待を高め続けるためには、あらゆる接点における一貫性と継続性が重要です。
一貫性と継続性を担保するために、どのようにすれば明確なブランド価値定義が実現できるのでしょうか?その方法として弊社が提唱しているのが、ブランドの提供価値を「コアバリュー」「ベネフィット」「エビデンス」「リソース」の4つの概念から構造的に捉え、ブランドコンセプトを策定するというものです(下記図参照)。
そして、ブランドの提供価値を策定するにあたっては、2つのアプローチがあります。
まず、一つ目の「ブランド価値伝達の観点」から考えると、ありがちなのはブランドの提供価値である4つの概念の中でどれかの要素が欠け落ちてしまっているWebサイトです。これらを2つに大別すると、イメージ偏重型とファクト偏重型になります。
イメージ偏重型とは、ブランド提供価値の4つの概念でいう「コアバリュー」と「ベネフィット」にフォーカスしすぎているサイトです。例えばデザイン・イメージ重視で作られたせいで『何の会社なのか』『どんな商品・サービスなのか』が伝わりにくい、あるいは抽象度の高いキャッチコピーにこだわっているが、何が・なぜ良いのか伝わりにくいといった特徴があります。
ファクト偏重型は、ブランド提供価値の4つの概念でいう「エビデンス」と「リソース」にフォーカスしすぎているサイトです。例えば、商品やサービスの紹介が淡々と描かれているだけで、顧客にとってのベネフィットが伝わりづらい、あるいは情報量が多すぎるといった特徴があります。
以上を踏まえて、「ブランド価値伝達の観点」でいうあるべきWebサイトとは、ブランド提供価値の4つの概念が要素として漏れなく、かつ一貫性をもって組み込まれ、Web上のコンテンツに反映されているようなサイトです。
自社のブランド価値について、4つの概念ごとに上記の問いで整理をしながら、各要素が現在のWebサイトに分かりやすく記載されているかを確認してみてはいかがでしょうか。
次に、2つ目の「意思決定プロセスの観点」から考えると、ありがちなWebサイトはBtoBビジネスにおける購入意思決定のプロセスのうちどれかの要素が抜け落ちています。これらを2つに大別すると、「ヒアリング偏重型」と「クロージング偏重型」になります。
「ヒアリング偏重型」は、BtoBビジネスにおける購入意思決定プロセスのうち、課題認識・ニーズ喚起と情報収集にフォーカスしすぎているWebサイトです。例えば、顧客の悩みや課題を整理できるようなコンテンツ(お役立ち資料やブログ記事など)が充実している一方、課題の解決に関わる情報量が少ないといった特徴があります。
「クロージング偏重型」は、比較検討と導入決定にフォーカスしすぎているWebサイトです。例えば、『なぜ自社が他社より良いか』に関するコンテンツ(商品・サービス紹介や事例、料金表など)が充実している一方、顧客のお悩みや課題を整理するコンテンツが少ないといった特徴があります。
以上を踏まえて、「意思決定プロセスの観点」でいうあるべきWebサイトとは、課題認識・ニーズ喚起や情報収集といった営業の初期段階から比較検討・導入決定などクロージングの段階まで営業プロセスの要素が網羅されており、営業ツールとして効果的に機能するサイトです。
ここからは、ブランド価値と、Webサイトの各ページにおけるコンテンツとの接続例を紹介していきます。
現在のトレンドとして、多階層でページ量の多いサイトは好まれていません。したがって、TOPページにある程度の情報が広く浅く網羅されていることが望ましいです。ポイントとしては、冒頭のキャッチコピーでは、自社の「コアバリュー」を分かりやすく、かつ端的に表現しましょう。それに続く、問題提起や自社のサービス紹介では、自社の「ベネフィット」(顧客のどんな悩みが、どのように解決されるのか)をわかりやすく表現することが重要です。さらに、その後商品・サービスの特徴を説明する箇所では、「エビデンス」や「リソース」を具体的に伝えることが求められます。
機能やスペックの羅列ではなく、それを顧客にとってのベネフィットに変換することが必要になります。そのためには『顧客にとってどのような便益があるのか』『その商品・サービスを利用すると何が変わるのか』を詳しく説明することが重要です。ポイントとしては、キャッチコピーでは「コアバリュー」や「ベネフィット」を分かりやすく、かつ端的に表現することが重要です。それに続く商品・サービスの特徴を紹介するページでは、『顧客の何がどのように変化するのか』を伝えるための「ベネフィット」やその実現手段及び他社との差別化手段になる「エビデンス」や「リソース」を分かりやすく記載しましょう。
自社のベネフィットや顧客特性を抜け漏れなく、網羅する形で、事例収集からコンテンツ化までを図ることが重要になります。ポイントとしては、まず事例のタイトルに『顧客にとって何が良かったのか』『どんな変化があったのか』が伝わるための「ベネフィット」の要素を入れ込むということです。さらに、事例記事の本文で、「ベネフィット」から「エビデンス」(実際に提供したもの、こと)、「リソース」(他社との違いを生み出す資産)が一貫性をもって語られていることも重要です。
実績・事例よりも更新性が高いため、定期的な情報発信を通じて、課題認識・ニーズ喚起や情報収集といった営業の初期段階に対して効果を発揮します。ポイントとしては、ブログ記事のタイトルとして、「ベネフィット」というよりは、顧客のお悩みや課題をそのまま載せることも有効です。なぜならお悩みや課題に関するキーワードで検索されることも多く、SEOの観点でもこちらの方が有効な場合があるからです。
以上が、ブランド価値とWebサイトのコンテンツとの接続イメージになります。しかし、依然としてBtoBビジネスならではの難しさも残されています。BtoBビジネスにおいては、概念や言葉が複雑であり、またスペックや機能を価値に転換するのが難しいといった理由から、提供価値をストレートに表現しづらい場合が多いです。『どのように伝えるか』という表現の仕方について工夫することで、提供価値を分かりやすく伝えましょう。表現を工夫するためのポイントを3つ紹介します。
下記のブログの「BtoBビジネスで提供価値を明確化する上で気を付けるべきポイント」という章でもより詳しく解説しておりますので、よろしければ参考にしてください。
STEP3の制作では、適切な外部パートナーを選定し、連携を図ります。このステップでBtoB企業様から伺うことの多い不満を2つ紹介します。
1つ目は、デザインやイメージ偏重になりがちという点です。実際に、一般的な制作会社はデザインや最新ツール(最近だとマーケティングオートメーションツールなど)にこだわった提案が多いです。もちろんカッコいい・最新のサイトであるに越したことはないですが、それを優先し過ぎて分かりやすさが犠牲になると本末転倒です。制作会社にフィードバックを行なっても、中々改善されないkとも多く、制作側のモチベーション的にも“一見地味だけどわかりやすくて機能しやすい”という着地点には到達しにくいことが多いです。
2つ目は、制作会社が、こちらの指示待ち状態になってしまうということです。特に、1つ目の不満を解消するべく、こちら側からコミュニケーションを取れば取るほど、意図を汲み取った制作会社側からの提案は少なくなり、指示待ちになりやすいです。
では、なぜこのような不満が生じてしまうのでしょうか?それは、一般的な制作会社の守備範囲はSTEP2企画の一部とSTEP3制作・STEP4運用がメインであり、STEP1戦略策定から一気通貫して支援できる制作会社は少ないからです。そのため、戦略策定を内製で担保しようとし、自社工数が相当かかってしまう、あるいは戦略不在のWebサイトになってしまいがちです。そこで、弊社では、「戦略策定」を担当する企業と「制作」を担当する企業を明確に分けて、3社体制でプロジェクトを進めることを推奨しています。
STEP4の運用では、部署横断で継続的な運用を図っていきます。一般的に、Webサイト運用といえば、Googleアナリティクスなどのツールを活用した、データに基づくWebサイト改善活動を指すことが多いです。一方、弊社が推奨するWebサイトの運用はWebサイトというプラットフォームを進化させるために、幅広く社内各部署・担当者の連携を図っていくことです。例えば、広告・PR・SNSなどを活用した集客がテーマであれば、マーケティングと広報の担当者間で連携が必要でしょうし、顧客の課題整理や解決のためのコンテンツ開発(SNS対策)がテーマであれば、マーケティングと営業の担当者間で連携が必要になるでしょう。また、部署横断の運用体制を作るための土台として活用できるのがブランドロードマップです。
ロードマップを策定するための手法を解説した資料のダウンロードはこちらです
以上が、皆さんにお伝えしたかったことになります。Webサイト制作・リニューアルにおいて、自社のブランド価値をWebサイトに落とし込むための手順とポイントをまとめると以下のようになります。
STEP1:戦略策定(自社のブランド価値を明確に定義する)
STEP2:企画(ブランド価値と、Webサイトのコンテンツを接続する)
STEP3:制作(適切な外部パートナーを選定~連携する)
STEP4:運用(部署横断で継続的な運用を図る)
皆様にとって少しでも有意義な情報を提供できていれば幸いです。