【座談会レポート】顧客要請、人材確保…中小企業がいまJ-クレジットを買う理由〜地元森林への想いでつなぐ東城町森林組合×備福通信×中国銀行の循環型J-クレジットの挑戦〜
津山ガス 株式会社 様
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2024年10月、東城町森林組合は、地域の豊かな山林を守り価値化する「森林J-クレジット創出」へ着手しました。
その後、2025年7月のJ-クレジット制度第65回認証委員会にてプロジェクト登録を完了し、2026年3月の第68回認証委員会にて、初回のカーボンクレジット(J-クレジット)の創出に至ります。そして、広島県北東部に位置する東城町の森林を管理することで生み出された本J-クレジットは、創業者が東城町にゆかりを持つ、株式会社備福通信へと販売されます。
森林資源の価値化を担う東城町森林組合、従前より当地への貢献を願っていた備福通信、地域金融・地域経済循環の要である株式会社中国銀行、J-クレジット創出と販売を支援したバイウィル、各者が有機的に連携し成立した本PJは、2026年7月に連携協定式を執り行いました。
本プロジェクトのスキーム図

今回は、約2年越しで結実した本プロジェクトについて、大手取引先からの脱炭素要請や過酷な現場環境に挑む株式会社備福通信から代表取締役の河原様・中井様、広島県内の民間森林組合に先駆けて森林クレジット創出を成し遂げた東城町森林組合より、代表理事 組合長の板倉様・段田様、そして双方の想いに寄り添い「運命的なご縁」を引き寄せた株式会社中国銀行より長尾様・谷村様・安達様にお集まりいただき、株式会社バイウィル 執行役員 カーボンニュートラル促進本部長の齋藤がファシリテーターを務め、お話を伺いました。
▼参考:関連プレスリリース
【プレスリリース】広島県の東城町森林組合とバイウィルが森林クレジットの創出に向け、取り組みを開始
【プレスリリース】東城町森林組合とバイウィルによる森林クレジット創出の取り組みがJ-クレジット制度の第65回認証委員会で登録完了
【プレスリリース】東城町森林組合とバイウィルの共同プロジェクト、森林クレジット創出が正式認証。カーボンニュートラルへ前進
【プレスリリース】バイウィル、東城町森林組合の森林J-クレジットを 株式会社備福通信へ販売、連携協定式を開催
<目次>
1.地域内経済循環モデルの構築——中国銀行が描く「環境と経済」が巡る仕組み
2.現場の命を守る経営判断と「創業の地」への還元〜備福通信が歩んだ環境経営とJ-クレジット長期購入のストーリー〜
3.「県内初」への挑戦と、山を守る情熱〜東城町森林組合が乗り越えたJ-クレジット創出の舞台裏〜
4.環境価値と経済価値を巡らせ、地域の未来を拓く〜中国銀行が両者をつないだ伴走支援〜
5.地域循環が生み出す「真の価値」と、未来へ続く持続可能な共創ストーリー
地域内経済循環モデルの構築——中国銀行が描く「環境と経済」が巡る仕組み
バイウィル 齋藤:本日はお忙しいところお時間をいただき、誠にありがとうございます。株式会社バイウィルにて執行役員 カーボンニュートラル促進本部長を務めております、齋藤と申します。
今回の座談会は、私から「ぜひ皆さまのお話をお伺いしたい」と強くお願いして実現いたしました。備福通信様をはじめとする「中小企業が自主的に取り組む脱炭素モデル」は、日本全体の脱炭素化の成否を握る非常に重要な先進事例だと考えております。
今回の事例こそが全国の中小企業が目指すべき理想のカタチです。それぞれの「想い」がどう結びつき、中国銀行様がどのように繋ぎ合わせたのか、そのストーリーを言葉にして広く発信していきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
それではまず、今回のご縁を結んでいただきました中国銀行様へお伺いします。地域金融機関のお立場から、取り組みの全体の流れや概要についてご紹介いただけますでしょうか?
太陽光事業の知見を活かし、「森林」領域での地域循環モデル構築へ
中国銀行 安達様:中国銀行の安達です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
まず、なぜ弊行がJ-クレジットの創出や販売の支援に取り組むようになったのか、そのきっかけからお話しさせていただきます。
もともとバイウィル様とは、弊行が展開している「ちゅうぎんカーボンクレジットクラブ」という太陽光プログラム型のJ-クレジットの取り組みでご一緒させていただいておりました。これは、自社の屋根に太陽光発電設備を設置して自家消費することで、系統電力を購入する場合に比べて削減できるCO2の「環境価値」をクラブで集約する仕組みです。集めた環境価値を、それを必要とされる需要企業様へ販売し、得られた収益の一部を創出者の皆様へ還元しています。
今回の取り組みは、太陽光分野で培った環境価値の創出・流通に関する知見を、森林分野での新たな地域循環モデルへ展開したものと捉えています。

中国銀行 コンサルティング営業部 環境・エネルギー担当、アグリビジネス担当 調査役 安達様
そもそもJ-クレジット制度の背景には、「太陽光発電の導入や適切な森林管理など、環境に良い取り組みをされている創出者様がいる」という大前提があります。仮に創出者様ご自身が、現時点でその環境価値を自社のオフセットに使う必要がなかったとしても、それが素晴らしい取り組みであることに変わりはありません。
その環境価値を、脱炭素やオフセットを必要としている企業様に購入していただき、得られた売却益を創出者様へ還元・循環させることで、地域全体の脱炭素に向けた取り組みを広げていこう——これこそが、制度の根本にある考え方です。
そうした中で「地域金融機関として何ができるか」を模索し、バイウィル様と協議を重ねる中で着目したのが、これまで金融機関としても十分な支援が行き届いていなかった「森林」という分野でした。
適正な森林管理を行うことでCO2の吸収量が増加します。その吸収量を「環境価値(J-クレジット)」へと変換して必要とされる企業様へ販売し、得られた資金を森林整備をはじめとする現場の課題解決へ還元していく。そうした地域循環型のモデルを構築できるのではないかと考え、バイウィル様と連携して本プロジェクトをスタートいたしました。
バイウィル 齋藤:ありがとうございます。単なる売買を超えて地域内で「資金と環境の好循環」を生み出せるのは、地域金融機関である中国銀行様だからこその大きな価値だと感じます。
県境を越えた「東城町森林組合」との出逢いと、「備福通信」の課題意識
中国銀行 安達様:弊行における森林J-クレジット創出支援の中でも、非常に早い段階で取り組ませていただいたのが東城町森林組合様でした。
東城町(広島県庄原市)は弊行の拠点である岡山県に隣接するエリアであり、豊かな森林資源を有しながらも保全の資金づくりに課題を抱えられていました。そこでバイウィル様とともに「森林J-クレジットの創出」をご提案し、地域循環モデルの第一歩としてプロジェクトがスタートしたのが始まりです。
その後、見事に認証・創出されたクレジットの行き先(需要企業様)を探す中で、以前からご縁のあった備福通信の河原社長へご案内させていただきました。
元々、備福通信様はCO2削減活動に大変熱心に取り組まれており、「自社努力だけではどうしても削減しきれない残余排出量をどう補うか」という具体的な課題をお持ちでした。そこに「創業者のゆかりの地である東城町へ貢献したい」という河原社長の強い想いが重なったことが、今回のJ-クレジットご購入につながる大きな決定打となりました。
そもそもJ-クレジット制度は、単に「お金を出して買って終わり」というものではありません。自社でできる限りの削減努力を行った上で、それでもなお削減が困難な残余排出量について、森林組合様などが創出した環境価値を活用してオフセットすることが、カーボンニュートラルの実現に向けた基本的な考え方の一つです。
そうした高い志と課題意識をお持ちの備福通信様に対し、東城町森林組合様が生み出したクレジットをご案内できたことで、継続的なご購入につながる、非常に素晴らしいマッチングと地域循環のスキームを構築することができました。これが今回のプロジェクト全体の経緯となります。
現場の命を守る経営判断と「創業の地」への還元〜備福通信が歩んだ環境経営とJ-クレジット長期購入のストーリー〜
「できていないことばかり」から始まったSDGs推進と、過酷な現場環境が突きつけた「削減の限界」
バイウィル 齋藤:それでは、備福通信様へ最初のご質問です。
「エコアクション21」の認証取得など先進的な環境経営を推進されている御社ですが、手探りの時期もあったかと存じます。どのような経緯があってJ-クレジット購入に至ったのでしょうか?
備福通信 河原様:弊社は昭和45年に岡山県岡山市で創業し、半世紀以上にわたって地域に密着した通信設備工事を行ってまいりました。通信設備の調査設計から宅内工事、施工管理、光ケーブル接続工事などに幅広く携わり、情報の進化や時代の変化とともに歩みながら、皆様が安心してお使いいただけるインフラ環境を提供し続けております。
私が約7年前に社長へ就任した当時は、まだ社内体制も未整備で「SDGs」という言葉もよく分からない状態でした。その頃中国銀行様から「SDGs宣言を出してみませんか?」とご提案をいただいたのです。これがすべての始まりでした。
正直なところ、事前にチェックリストを確認した段階では、社内の現状はできていないこと(バツ)ばかりで「これはまずいな」と頭を抱えました。しかし 当時は若手人材の採用という大きな経営課題も抱えていた時期でもあります。SDGsの項目には「人への投資」や「働きやすい環境整備」といった要素も多く含まれています。これらをひとつずつクリアしていくことこそが、求職者に選ばれる「より良い会社づくり」に直結すると実感し、そこから本格的にSDGsや環境経営への舵を切りました。
まずは環境省の「エコアクション21」を目指し、岡山県様の支援を活用して取得しました。併せて、2018年の西日本豪雨を機にBCP(事業継続計画)策定にも着手と、体制が徐々に整い次に着手したのが、CO2排出量の「見える化」でした。他の金融機関様からCO2可視化サービスのご提案をいただいたのを機に算出を開始し、エコアクション21の取り組みとも連動させながら、スコープ1・2(自社の直接・間接排出)の排出量を正確に把握できるようになったのです。

備福通信 河原社長
しかし、そこで直面したのが「現場の社員の命を守ること」と「CO2削減」の両立という問題でした。近年の過酷な猛暑の中、屋外作業や現場で汗を流す社員に対し「エアコンを消せ」「節電しろ」とは口が裂けても言えません。これほどの猛暑で過度な節電を強いることは、現場の熱中症リスクを高め、社員の生命や健康を脅かすことに直結するからです。現場の安全と命を守る以上、自社の削減努力だけでは減らしきれない領域があるという「削減の限界」を痛感していた、というのが背景にありました。
バイウィル 齋藤:なるほど、ありがとうございます。現場の命と安全を守る経営者としてのリアルな問題意識が背景にあったのですね。また御社が順を追って着実に環境経営のステップを進めてこられた足跡がよく分かりました。
取引先の本気が突きつけた「待ったなし」——SDGsが「選ばれる会社」への武器に変わるまで
ちなみに、このような取り組みを次々と推し進めることができた要因は何だったのでしょうか?
備福通信 河原社長:大きな後押しとなったのは、弊社のお取引先様に多いプライム上場企業をはじめとする大手企業様の存在です。
昨今はスコープ1・2にとどまらず、サプライチェーン全体(スコープ3)での脱炭素が強く求められる時代になり、すでにお取引先様自身が先進的な環境対応を完了されているケースも増えてきました。直接的な強制や命令はないものの、「お取引先様がこれだけ本気で取り組まれている以上、いずれ必ず弊社のような協力会社にも対応が求められるようになるのではないか」と考えておりました。
大手元請企業様から継続的にお仕事をいただく上でも、要求されてから後手後手で対応するのでは遅すぎます。「今のうちから先回りして準備を進めておくべきだ」と判断したことが、社内の取り組みを加速させる大きな推進力となりました。
あわせて、中国銀行様をはじめとする金融機関の皆様が、SDGsや環境経営の支援に力を入れて寄り添ってくださったことも、一歩を踏み出す上で本当に大きな手助けになりました。
バイウィル 齋藤:続いて、先ほどお話にあった「採用」についてもお伺いさせてください。昨今、求職者が企業のSDGsや環境への取り組みを重視する傾向が強まっていると耳にします。河原社長ご自身もそうした世の中の変化を肌で感じられていたのでしょうか。
備福通信 河原社長:そうですね。例えば、地元の岡山県立岡山工業高校様などの場合、卒業生が40名ほどしかいない学科に対して、全国の大手企業や優良企業など1,200社もの求人が殺到するような状況なのです。名だたる企業がひしめく中で、自社を選んでもらうのは至難の業です。
そうした厳しい採用競争の中で、SDGsのチェック項目をほぼ満点に近いレベルまで整備し、環境対応や働きやすい職場環境を真摯につくり込んで発信していかなければ、そもそも学生や求職者から選考の対象として見向きもされません。
バイウィル 齋藤:なるほど、よく分かりました。ちなみに、今回同席いただいている中井様がご入社されたのはいつ頃だったのでしょうか?
備福通信 中井様:私は3年前の転職での入社です。入社した段階でBCPやエコアクション21の認定審査が最終段階に入っており、社内体制がある程度しっかりと整備されている状態でした。

備福通信 中井様
バイウィル 齋藤:なるほど。中井様が転職先を選ばれる際も、備福通信様がSDGsや環境活動に積極的に取り組まれている発信をご覧になって、応募されたのでしょうか?
備福通信 中井様:そうですね。やはり転職先を探すにあたっては、環境経営や様々な認定を取得されているからこそ、社内制度も充実しており、安心して働けると感じていました。実際、子育てとの両立ができる職場環境を重視していたのですが、環境経営に力を入れているだけあって、社内やオフィスの環境整備もすごくキレイで行き届いていたんです。「環境や人を大切にする会社なんだ」と実感できたことが、一番の決め手になりました。
バイウィル 齋藤:社員の方からのこのリアルな声こそ、採用活動における成功の証ですね。
「実質ゼロ」に向けた戦略的決断—東城町との絆とJ-クレジット長期活用の合理性
バイウィル 齋藤:では、もう一点深掘りさせてください。エコアクション21などを通じ自社での削減努力を進められているなか、それでも現時点では自社排出量を完全に実質ゼロ(カーボンニュートラル)にまでは減らしきれていない段階かと思います。ここで残った排出量をJ-クレジットで相殺してまでゼロを目指そうと決断された理由についてもお聞かせいただけますでしょうか?
備福通信 河原社長:おっしゃるように、先ほどお話ししたエコアクション21の取り組みなどを通じて、約2〜3年にわたり自社での削減努力を徹底的に続けてきたのですが、どうしても「これ以上は減らせない」という限界に達してしまっていたんです。
そのタイミングで、世の中的にもJ-クレジット制度の環境が整い始め、中国銀行様から「実はこういった地域循環型の『森林J-クレジット』という仕組みがありますよ」とタイムリーにご提案いただいたのが、最大のきっかけでした。
バイウィル 齋藤:まさに自社での削減努力をやり尽くした上でのご判断だったのですね。河原社長ご自身としては、やはり当初から「CO2排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にすること」を会社としての当たり前の目標・目指すべき到達点として掲げていらっしゃったのでしょうか?
備福通信 河原社長:正直なところ、最初から「絶対に排出量をゼロにするぞ」と大きな目標を掲げていたわけではありませんでした。
まずは自社で設定した基準値から、少しでも排出量を減らしていきたいという素直な思いからのスタートでしたね。ただその一方で、社会全体の要請や世の中の流れが確実に脱炭素へ向かっているという肌感覚もありました。周りの企業様がどこまで対応されるかという様子を見つつも、「自社としてできる手は打っておこう」と進めてきたのが本音です。
バイウィル 齋藤:なるほど、今回先手を打って備えられたのですね。
続いて今回は創出側である東城町(広島県庄原市)との「ゆかり」についてお伺いさせてください。備福通信様にとって、創業者のご出身地である東城町とは、どのような思い入れのある地域・存在なのでしょうか?
備福通信 河原社長:東城町は私にとっては、祖父や母、そして先代たちが生まれ育った大切な故郷です。私自身にとって最も血縁とゆかりの深い特別な土地だと感じています。
そんな中、中国銀行の担当者様から「東城町森林組合のJ-クレジットがありますよ」とお聞きした瞬間、「自分のルーツがある東城町産のクレジットなら、ぜひ購入させていただきたい」と即座に気持ちが固まりました。
単にCO2を相殺するだけでなく、自社にゆかりのある大好きな地域の山林を守る支援ができるというのは、購入する側としても本当に価値のある素晴らしいことだと実感しております。
バイウィル 齋藤:なるほどありがとうございます。ちなみに今回は「1回150トン」という決して小さくないJ-クレジットを、今後長期にわたって継続して購入されるご契約を結ばれました。
単発でなく、「長期間購入し続けよう」と決められた一番の理由は何だったのでしょうか?
備福通信 河原社長:長期購入を決めた理由は、J-クレジットがとても柔軟に活用できる制度だからです。購入したクレジットは自社の排出量をオフセットするために消却することもできますし、万が一自社の排出量がさらに削減できれば、残りを長期的な資産として保持・活用していくことも可能です。そうした自由度と柔軟性がある点は、経営者としても非常に魅力的に感じました。
経営の指針となる「未来の洞察」——脱炭素と業界トレンドを先回りするバイウィルの伴走価値
バイウィル 齋藤:関連して、弊社バイウィルの伴走支援についても少しお伺いさせていただけませんでしょうか?
備福通信 河原社長:バイウィル様からは、必要な情報を分かりやすくご提供いただくだけでなく、今後の見通しや業界・制度の最新動向まで丁寧に説明・共有していただけました。今後の展望をしっかり把握できたので、非常に助かりましたし心強かったですね。
会社を経営していて痛感するのは、SDGsや健康経営などの取り組みも、現場の成果として目に見えるまでには3〜4年かかるということです。取り組み始めた当初は「そんなことして何になるんだ」と社内から言われたりもしましたが、4〜5年経つとそれが世の中の当たり前になっていく。 だからこそ中小企業であっても、「今従業員が理解できなくても、5年後に成果を感じられるように」と逆算して準備しておくための「先回りした情報」が不可欠なんです。
脱炭素や非財務情報といった専門領域において、次の一手となる最新情報をいただけるのは本当にありがたいです。弊社のお取引先はほとんどが大手・上場企業様です。そんなお取引先の役員様や社長様が自ら弊社へ見学にお越しくださり、「中小企業でもこれほど先進的にやっているのか」と高く評価していただけるようになりました。規模は小さくても、先回りして準備を進めておいて本当に良かったと実感しています。
経営において「情報の先回り」が必要なのは脱炭素に限りません。弊社の属する通信業界で言えば、衛星通信が急速に台頭しています。弊社の主軸は有線の敷設工事ですから、「もし将来、すべて無線化されたら自社の事業はどうなるか」というリスクまでシミュレーションして備えなければなりません。
経営判断を下す上で、世の中に先駆けた情報や洞察を提供してくれる存在はそう多くありません。ですから、バイウィル様のように未来の洞察を提供していただけることは、経営材料として本当に価値があると感じています。
バイウィル 齋藤:河原社長、ありがとうございます。大手企業の「今の課題」は、中小企業様にとって「5年先の未来」への準備になります。「大企業がどう動いているか」という生の情報や業界動向を、今後も継続してお届けしなければと身が引き締まる思いです。
「県内初」への挑戦と、山を守る情熱〜東城町森林組合が乗り越えたJ-クレジット創出の舞台裏〜
一度は挫折した「県内初」のクレジット創出——東城町(旧東城町エリア)の82%を占める森林整備への危機感
バイウィル 齋藤:続いて東城町森林組合様にお話を伺えればと思います。
東城町森林組合様には今回、J-クレジットの「創出」から取り組んでいただきました。そこでまず、J-クレジットの創出に取り組もうと思われた「一番のきっかけ」についてお聞かせいただけますでしょうか?
東城町森林組合 板倉組合長:広島県内におけるJ-クレジットの取り組みは、平成23年に県が県営林で登録したのが始まりです。私自身、以前からこの仕組みには非常に強い関心を持っており、今から4年ほど前に県の担当部署へ「組合でも取り組めないか」と直接電話で問い合わせたことがありました。しかし当時は、「単独での登録や運用は非常に難しい」との返答があり、一度は断念しかけた経緯があります。
その後も他の金融機関様などからお話をいただく機会はありましたが、私としては県内15ある森林組合の中で「とにかく一番最初にこのJ-クレジットに取り組みたい」という強い想いを抱き続けていました。
そうした中で、大変タイミング良く、取引先である中国銀行の当時の支店長様から、バイウィル様をご紹介いただいたんです。数あるパートナー候補の中でバイウィル様に決めた最大の理由は、初期費用などの自己負担が一切なく、将来的に発生するクレジット収益から経費を充当できる仕組みだったことです。これが組合として一歩を踏み出す非常に大きな後押しとなりました。

東城町森林組合 板倉組合長
そもそも森林組合は、地域の森林を守り育てることを使命としています。近年、地球温暖化防止や水源涵養、国土強靱化といった「森林の公益的機能」への期待が高まる一方で、この東城町(旧東城町エリア)は土地の82%を森林が占めており、手入れが行き届かない山林も多く存在しているのが現状です。
このJ-クレジットの取り組みをきっかけに、森林所有者の皆様にもう一度ご自身の山への関心を持っていただき、さらにはクレジットの売却益を還元して、少しでも地域の山林整備を進めていきたい——そうした切実な想いからJ-クレジット創出を決意いたしました。
バイウィル 齋藤:そう言っていただけると、弊社としても大変光栄に思います。クレジット創出については、基本的には弊社が手引きをさせていただきながら進めさせていただきました。そうは言っても組合の皆様には、山林を所有する組合員様への丁寧なご説明や、膨大な各種資料のご提出など、多大なご苦労とご協力をいただいたと感じております。
「〇〇左衛門」の名義が残るデータベース…現所有者の特定と審査基準改定という「2つの壁」
バイウィル 齋藤:さて、このプロジェクトの中で、J-クレジットのプロジェクト登録から実際の認証に至るまでの過程において、特に大変だった点や工夫されたことなどがございましたら、ぜひお聞かせいただけますでしょうか?
東城町森林組合 板倉組合長:今回の取り組みについては、本日同席しております段田が主体となって取り組んでくれました 。具体的な実務については彼からお話しさせていただきたいと思います。
東城町森林組合 段田様:苦労した点として、大きく2つございます。1つ目は「森林所有者様の特定」です。J-クレジット登録の母体となるのは「森林経営計画」なのですが、そのベースとなる県の「森林簿」データは不動産登記等を元に作成されています。しかし、実際には所有者が変わっても登記を変更されない方が多く、データの精度維持が非常に難しいという業界課題がありました。
J-クレジット制度では、現在の「真の所有者様」と協定を結べなければクレジットの対象から外れてしまいます。そのため、計画上のデータと実際の所有者情報が一致しない点にはかなり悩まされました。
ただ、市や県と粘り強く協議を重ねた結果、「今後の経営計画作成の過程で、現所有者が判明するようデータを回収・整備していく」という方針を固めていただくことができました。この行政との強固な連携体制が整ったおかげで、今回の登録作業もスムーズに進められるようになったと感じています。

東城町森林組合 段田様
東城町森林組合 段田様:そしてもう1点、申請プロセスの途中で「J-クレジットの方法論(審査基準)」が改定されたことです。私どもが作業を開始したのが9月頃で、11月頭には審査を受けられる段階まで漕ぎ着けていたのですが、まさにその11月頭に基準が更新され、ハードルが上がってしまったんです。
この不測の事態に対して、バイウィルさんには非常に一生懸命に対応してくださいました。細かく打ち合わせを重ねながら一つひとつ課題をクリアしてくださり、おかげで無事に認証まで辿り着くことができました。
東城町森林組合 板倉組合長:担当の段田とバイウィル様がやり取りする様子を見ていましたが、複雑な審査プロセスにおいて的確にご指導・サポートいただき、心から感謝しております。
東城町森林組合 段田様:バイウィル様には、電話やメールだけでは認識のズレが生じやすい書類作成の際には画面共有を使ったWeb会議を頻繁に開いてくれたり、迅速な対応のおかげで、複雑な作業もスムーズに進めることができました。手厚いサポートのおかげで不安もなく、大変心強かったです。
バイウィル 齋藤:そう言っていただけて大変励みになります。ありがとうございます。
先ほどの「森林所有者様の特定」について少し補足させてください。「その辺の森林を使って簡単にJ-クレジットが創出できる」かというと、決してそうではないのです。
まず制度上の大原則として、「今後5年間でどのように森林を整備していくか」を定めた正式な「森林経営計画」が策定されている土地でなければ、申請すらできないという厳しいルールが存在します。
さらに、ベースとなる行政の「森林簿」データも、区画や所有者情報が細かく記載された膨大なものです。しかも歴史が長い分、未登記のまま相続が繰り返されているケースが多く、記載されているお名前が「〇〇左衛門」といった明治・大正時代のような昔の名義のまま止まっていて、現在の所有者様と一致しないという課題が数多く存在します。
データに頼ることができない中で、現在の「真の所有者様」を一人ずつ特定し、正しく計画へ反映させていく地道な作業が必要になるわけです。
その上で、森林組合様はあくまで組合員である個人の所有者様からお山をお預かりしているお立場です。制度上、所有者様お一人おひとりに対して「J-クレジットの取り組みを進めてもよろしいでしょうか?」と個別のご説明と同意いただく必要があり、同意が得られなければ対象から外さざるを得ません。
このように、何重もの厳格なルールや気の遠くなるような確認プロセスを、東城町森林組合様がひとつずつ誠実にクリアしてくださったからこそ、今回のクレジット創出が実現したのです。

株式会社バイウィル 執行役員 カーボンニュートラル促進本部長 齋藤
クレジット創出が手繰り寄せる「土地所有者不明問題」の解消
備福通信 河原社長:なるほど。そういった裏側の苦労があったのですね。
確かに地方や田舎へ行くと「ここは誰の所有する山なのか分からない」という土地がたくさんありますよね。こうしてJ-クレジットをきっかけに所有者情報をきちんと精査・特定していただければ、将来の相続などの際にも非常に助かりますし、所有者不明問題の解消にもつながるな、と思いました。
実は弊社の通信設備工事や設計の現場でも、過疎化が進む地域へ出向くことが非常に多く、山林に電柱を建てたり通信線を引かせていただいたりする際に、土地所有者様の承諾をいただく必要があるんです。
しかし、土地所有者が分からないと「誰に連絡を取ればいいのか分からない」という状態に陥り、工事に一切着手できず事業が何年も滞ってしまうケースが実際にあります。
こうして何年も着工が遅延すると、せっかく買い揃えた資材自体が型落ちして使えなくなってしまうことすらあります。我々の仕事(通信インフラ工事)において、「土地所有者が分からない」というのは本当に死活問題なんです。
ですから、今回のように森林組合様が所有者不明土地の解消へ向けた対策を進めてくださることは、地域の過疎対策やインフラ維持という意味でも、間違いなく大きな一助になると強く感じました。
バイウィル 齋藤:「誰の土地か分からない」というリアルな課題ですね。インフラを支える現場ならではの切実なご意見、ありがとうございます。
まさに仰る通りで、森林J-クレジットを創出していくプロセスの中では、山林所有者名簿の精査や現所有者の特定作業が不可欠となります。そのため、脱炭素や環境保全だけでなく、結果として地域の「土地所有者不明問題」を解きほぐし、インフラ整備や地域課題の解決に寄与するという大きな副次効果・貢献があると考えております。
創業家のルーツが導いた「奇跡の再会」——地域と企業を深く結びつけたご縁
バイウィル 齋藤:それでは最後の質問になりますが、創業者様が東城町ご出身というご縁・ゆかりのある備福通信様が、東城町森林組合様の創出したJ-クレジットを購入したいとおっしゃっているというお話を、中国銀行様などを通じてお聞きになった際、どのようなご感想を持たれましたでしょうか?
東城町森林組合 組合長:冒頭のご挨拶でもお話しさせていただきましたが、全国には本当に多くのクレジット創出事業者がいらっしゃいますし、隣の岡山県内にも多くの林業関係者がおられます。そうした中で、岡山県の備福通信様が当組合(東城町森林組合)のクレジットを選んでくださったとお聞きした時は、ただただありがたいと同時に、「数ある中でなぜ当組合を選んでいただけたのだろうか」と、正直大変驚きました。
その後、備福通信様の創業家の皆様がこの東城町のご出身だとお伺いし、言葉では言い表せないご縁の深さと奇跡のような繋がりを強く感じた次第です。
今回のプロジェクトは、日頃からお世話になっている中国銀行様とのご縁から始まり、バイウィル様をご紹介いただいたことで、こうした素晴らしい結末へと繋がりました。関わってくださったすべての関係者の皆様との繋がりがあったからこそ結実したものだと、心より深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
バイウィル 齋藤:伴走させていただいた私どもにとって、単なるクレジットの売買を超えて、地域と企業を結ぶ深い繋がりへと発展していくことは、一番の喜びです。
環境価値と経済価値を巡らせ、地域の未来を拓く〜中国銀行が両者をつないだ伴走支援〜
50年先を見据える林業へ新たな資金循環を——防災と地域経済を支える「創出支援」の決意
バイウィル 齋藤:それでは続いて、この素晴らしいご縁を繋いだ中国銀行様にお話を伺いたいと思います。
中国銀行 安達様:まず「東城町森林組合様のような創出事業者様への伴走支援」という視点からお話しさせていただきます。
地域金融機関の立場から見ますと、森林組合様や林業関係者の皆様は、地域の森林を守り次の世代へ引き継ぐという非常に重要な役割を担っていらっしゃいます。しかし、林業は50年単位ともいわれる長期的な視点が必要な事業であり、融資をはじめとする従来の金融支援に加えて、新たな収益機会の創出を含む多面的な支援が重要な分野であると認識しておりました。
適切な森林保全がなされなければ、土砂災害などの地域リスクの高まりにもつながり得ます。「地域と山を守り、経済を回すにはどうすべきか」。東城町森林組合様が取り組まれるJ-クレジット創出を通じて、生み出された環境価値が山林所有者様や組合様に資金としてしっかり還元される「循環スキーム」が重要だと考えました。弊行としても、この地域循環のきっかけをバイウィル様や組合様とともに作ることができ、大変うれしく思います。
脱炭素要請への「先回り」と「未来の採用」——真摯な取り組みがもたらす企業ブランディングの真価
中国銀行 安達様:一方で、「ご購入いただく備福通信様のような企業様の視点」でお話ししますと、世の中全体として自発的な脱炭素の機運はまだ発展途上かもしれません。しかし、河原社長もおっしゃっていたように、プライム上場企業をはじめとする取引先から、脱炭素対応を求められる場面は今後さらに増えることが想定されます。中には大手元請企業から「次回の報告会で御社の脱炭素の取り組みを発表してください」と指名を受ける企業様も出てきているほどです。
今後の経営を見据えた時、プライム上場企業をはじめとする取引先からの脱炭素要請に備え、自社での削減努力を進めるとともに、削減が困難な排出量への対応手段としてJ-クレジットの活用を検討しておくことは、将来の事業環境の変化に備える上で重要です。
その上で、地域の森林に由来するJ-クレジットを選択し、その意義を適切に発信することは、地域の森林保全への貢献を社外へ伝える契機となり、企業イメージや採用活動にもプラスの効果が期待できます。
学校教育などを通じて、若い世代がSDGsや環境問題に触れる機会は増えています。こうした世代が社会に出る中で、環境問題に誠実に向き合う企業として認知されることは、将来的な人材確保や持続的な成長にもつながり得ると考えています。つまり、企業が未来のために行う投資(クレジット購入)が、そのまま地元の森林を育む資金となり、地域と企業双方の持続可能性を高めていくのです。地域の中で「資金」と「環境価値」が巡る仕組みをつくり、企業の未来まで見据えてご支援していくこと、これこそが弊行が強い想いを持って伴走させていただいている理由です。
地域循環が生み出す「真の価値」と、未来へ続く持続可能な共創ストーリー
「資金」と「環境価値」が循環する社会へ——地域内経済循環モデルがもたらす本質的意義
バイウィル 齋藤:それでは続いてのご質問に移ります。今回の取り組みによって、東城町森林組合様が創出された「J-クレジットという環境価値」を備福通信様が購入されることで「経済価値」として東城町へ還流するまさに地域内における「循環モデル」が実現いたしました。このスキームについて、皆様それぞれの立場からどのような意義や価値を感じていらっしゃるかお聞かせください。
備福通信 河原社長:今回の循環モデルにおいて、価値を感じている点が2つあります。1つ目は、企業経営における「非財務価値(企業価値)の向上」です。 最近、よくお話しするのですが、現在は財務情報だけでなく、環境対応やESGへの姿勢も企業評価・与信調査の対象としてしっかりと確認される時代になっています。
大手・上場企業様は、単なる数字だけでなく、こうした目に見えにくい小さな取り組みの積み重ねまで見抜いて評価してくださいます。今回、J-クレジットの購入をはじめとする環境対応に取り組んだことで、「企業価値を高める本当の意味」が腑に落ちましたし、そうして信頼していただけるお取引先様と繋がれているのだと強く実感しています。
2つ目は、より個人的な「地域や環境への想い」です。東城町は美しい森林が豊かな水を育む、非常に素晴らしい地域です。また私自身にとっても、先祖代々のお墓があり、幼い頃からゆかりの深い大切なルーツの土地でもあります。
今回のJ-クレジット購入を通じて、東城町の美しい山林や環境が守られ、次の世代へと受け継がれていく——その一助となれたのであれば、これほど嬉しいことはありません。きっと草葉の陰で先祖も喜んでくれているのではないかと思っています(笑)。
バイウィル 齋藤:河原社長、素晴らしいお話をありがとうございます。
それでは続いて、東城町森林組合様からもお伺いできますでしょうか。
東城町森林組合 板倉組合長:冒頭のご挨拶でもお話しいたしました通り、広島県内や周辺市町村の中でもいち早くJ-クレジットに取り組み、民間の森林組合として県内初の一歩を踏み出せたことは、当組合にとって大変意義深いことだと感じております。
日頃から県庁や市役所の幹部の皆様とお会いする機会が多いのですが、今回の取り組みについて非常に高い評価をいただいております。こうした行政からの期待と評価は、当組合が今後の事業展開をスムーズに進めていく上での大きな後押しになると感じております。
また、この事業を通じてご理解・ご同意をいただいた山林所有者の皆様にも、これをきっかけにご自身の森林の大切さや「森林が持つ多面的な役割」を改めて再認識していただければ何よりです。
現在、林業を取り巻く環境は多くの課題に直面しており、決して楽観視できる状況ではありません。しかし、だからこそこの「J-クレジット」という新しい仕組みを最大限に活用し、森林所有者の皆様にしっかりと寄り添いながら、共に持続可能な未来を切り拓いてまいりたいと考えております。
地域循環の輪を広げるために——この事例から紐解く「成功の指針」と実践のアドバイス
バイウィル 齋藤:それでは締めくくりとして、「脱炭素をどう進めるべきか」と悩まれている全国の中小企業様へメッセージをいただきたいと思います。
まず河原社長、同じ課題を抱える経営者の皆様に向けて、ぜひアドバイスやメッセージをお願いできますでしょうか?
備福通信 河原社長:脱炭素や環境問題は、1社だけで取り組んでもどうにもならない巨大な課題です。しかし、どれほど小さな一歩であっても、全国の中小企業が一斉に足を踏み出せば、それは世界を変える非常に大きな力になります。ですから「まずはできることから少しずつでも」と、お伝えしたいですね。
特に、私どもと同じ建設業界の皆様には強く呼びかけたいです。昨今のこの過酷な夏の暑さは、屋外で作業する現場の人間にとって、もはや「仕事にならない」レベルの死活問題になっています。
現場の働く環境を守り、生活しやすい豊かな社会に戻していくためにも、みんなで力を合わせてCO2の削減に取り組んでいく必要があります。自社努力の限界をクレジット活用などを通じた地域との連携で補いながら、全国の中小企業が力を結集して、次の世代へ良い未来を残していきましょう。
バイウィル 齋藤:ありがとうございます。続いて東城町森林組合様より、全国の山林所有者様や他の森林組合様へ向けたメッセージをお願いいたします。
東城町森林組合 板倉組合長:成功の鍵として皆様にお伝えしたいポイントが2つあります。1つ目は、「山林所有者の皆様のご協力」です。何よりもまず、取り組みの趣旨や地域への還元といった意義を丁寧にお伝えし、心からご納得・ご賛同いただくことがすべての原点になります。
2つ目は、「デジタルツールや制度に精通した専任スタッフの存在」です。森林経営計画の策定や証明、さらにはGIS(地理情報システム)などのPC・デジタルツールを高度に使いこなせる担当者の有無がプロジェクトの成否を大きく分けます。
当組合がJ-クレジット創出の取り組みを開始して以降、ありがたいことに県内でもすでに2〜3の森林組合様が視察に来られました。また、関心をお持ちの事業者様や自治体関係者の方々からも「同様の取り組みを検討したい」というお問い合わせを多数いただいております。
もし今後、他の森林組合様や関係者の方々からご相談をいただく機会があれば、当組合としても知見を惜しむことなく、全面的にご協力させていただきたいと考えております。
「特別なご縁」を「次なる必然」へ——地域共創の未来と今後の展望
バイウィル 齋藤:それでは最後に、中国銀行様から他の地域金融機関様へ向けたメッセージをお願いいたします。
中国銀行 安達様:地域金融機関の強みは、クレジットを創出される森林組合様などの事業者様と、備福通信様のようにカーボンクレジットを活用する企業の双方と日頃から築いてきた関係性や地域のネットワークを有している点にあります。
創出者様の想いと購入者様のニーズを結び付け、地域における新たな価値の循環を生み出すことは、地域金融機関が果たすべき重要な役割の一つです。今回の取り組みを通じて、私どももその意義を改めて認識いたしました。今後も、この循環の輪を地域全体へ広げてまいりたいと考えております。
バイウィル 齋藤:ありがとうございます。続いて、現場でご縁を繋がれた支店長様からもコメントをいただけたらと思います。まず、備福通信様をご支援された福浜支店長の長尾様お願いいたします。
中国銀行 長尾様:今回の事例は、伺えば伺うほどドラマチックで心揺さぶられる事例だと感じております。河原社長の未来を見据えた経営思想と、愚直で真摯な姿勢には心から敬意を表します。

中国銀行 福浜支店 支店長 長尾様
中国銀行 長尾様:「SDGs宣言」を出発点として、具体的な取り組みへつなげていくことが重要ですが、備福通信様はチェックリストを1つずつ確認し、未達成項目にどこまでも誠実に向き合ってこられました。その真摯な取り組みが、創業者の故郷(東城町)の森林保全へ繋がり、その姿勢に共感する人材とのご縁を生み、社内でさらに推進力が増すという「理想の好循環」を結実させています。「真面目にコツコツ取り組む企業が報われ、飛躍する」というこの成功事例を、地域の多くの経営者様へしっかりとお伝えしていきたいです。
バイウィル 齋藤:それでは最後になりますが、東城町森林組合様とのご縁を繋がれた東城支店長の谷村様、お願いいたします。
中国銀行 谷村様:今回のお話を伺い、導かれるような深いご縁の存在を強く実感いたしました。実は東城町森林組合様とバイウィル様をお引合わせした弊行の前支店長も、実父が東城町のご出身なんです。備福通信様の創業者様だけでなく、つないだ前支店長までもが東城町にゆかりがあったと知り、言葉にならない感動を覚えました。

中国銀行 東城支店 支店長 谷村様
中国銀行 谷村様:しかし、「特別なご縁だからできた」で終わらせてはいけません。経営者様の潜在ニーズを芽吹かせるには「具体的なお手本」が必要です。今回の取り組みこそが、まさにその「有用な先行事例」です。私たちもこの素晴らしいストーリーと実績を手に携え、私たちが地域を駆け回って次の成功事例を1つずつ増やしていくことで、地域の持続可能な未来づくりに貢献してまいります。
バイウィル 齋藤:今回はお時間をいただき、皆様の熱い想いを深掘りさせていただき、この取り組みの持つ本質的な価値を再認識いたしました。J-クレジットプロジェクトとしてはこれから8年間にわたる伴走が始まります。今後とも定期的に皆様とお会いし、地域の未来を共に創っていけることを心より楽しみにしております。本日は本当にありがとうございました。(取材日 2026年7月15日)