「作ったけれど売れない」懸念を払拭。鏡野町が成果報酬型スキームで挑んだ森林J-クレジット創出と、地元企業への8年長期還元
津山ガス 株式会社 様
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業種
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サービス
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企業規模
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事業・提供サービス
| 自治体名 | 岡山県苫田郡鏡野町 様 |
| 事業内容 |
1.放置森林の解消と適切な間伐・整備推進 |
| ご担当者様名 |
鏡野町役場 森林づくりセンター 平田 誠 様 |
中国山地の中央に位置し、総面積の約8割を豊かな森林が占める岡山県鏡野町。
豊富な森林資源を誇る同町ですが、多大な手間や「創出しても売れないリスク」への懸念から、一度は森林J-クレジットの創出を断念しかけていました。
しかし、初期費用(予算化)が不要な「成果報酬型」スキームを活用することで、これらの懸念を払拭。
2024年7月、岡山県鏡野町・作州かがみの森林組合・バイウィルの3者は、中国銀行の紹介のもと、森林J-クレジット創出に向けた取り組みを開始しました。
【プレスリリース】岡山県鏡野町で、町と森林組合が森林クレジットの創出に着手。バイウィルが手続きを支援
2025年9月には、地元企業の津山ガス株式会社様へ「8年間の継続的なJ-クレジット取引」を行う連携協定を締結したことに伴い、鏡野町にて感謝状贈呈式が執り行われました。
【プレスリリース】岡山県鏡野町にて「地域脱炭素推進に係る感謝状贈呈式」を開催
そして2026年2月、本共同プロジェクトにおける森林クレジット創出が国から正式に認証。
地域内での持続可能な環境価値循環モデルが大きく前進しました。
【プレスリリース】岡山県鏡野町とバイウィルの共同プロジェクト、森林クレジット創出が正式認証。カーボンニュートラルへ前進
今回は、一度は先送りとなった難題を克服し、持続可能な財源循環を作り出すことに成功した本プロジェクトについて、
鏡野町役場 森林づくりセンターの平田様にお話を伺いました。
ご提供サービス
J-クレジット創出・地産地消支援(成果報酬型コンサルティング)
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地元金融機関(中国銀行様)と連携し、初期費用(予算化)不要の成果報酬型でクレジット創出の手続き・認証をフルサポート
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創出後のクレジットを地元企業(津山ガス様)へ8年間の長期契約で仲介し、地域内での環境価値循環(地産地消)を実現
<目次>
1. マンパワー不足と「売れないリスク」で一度は諦めたJ-クレジット創出への再挑戦
・ウッドショック後の価格急落と森林離れ。「守るだけ」の林業に抱いていた強い危機感
・知識や初期予算ゼロでも動けた理由。地域銀行の推薦と「成果報酬型」が決め手
2. 町村の合併で散り散りになった過去資料の探索と、専門知識のハードルをバイウィルが並走
・平成の大合併で分散した過去資料のデータ探索に奔走
・難解な専門用語と審査機関との交渉をバイウィルが「翻訳・伴走」。行政実務を止めずに推進
3. 創出クレジットが地元企業へ8年間の長期還元。町にもたらされた新たな財源と未来への展望
・「創出しても売れない」懸念を払拭。地元・津山ガス様との「8年間長期売買契約」
・税金に頼らない「独自の再投資財源」を獲得。小規模から一歩踏み出すことが地方創生の鍵
マンパワー不足と「売れないリスク」で一度は諦めたJ-クレジット創出への再挑戦
ウッドショック後の価格急落と森林離れ。「守るだけ」の林業に抱いていた強い危機感
――まず初めに、鏡野町様が町内の森林管理において当時抱えていた課題についてお聞かせください。
平田様:一番大きなショックだったのは、令和3年度(2021年度)の「ウッドショック」後に訪れた、国産材価格の急落でした。
当時は世界的な木材不足で外材が入ってこなくなったことから、一時的に国産材へ強いスポットが当たり、木材価格が高騰しました。「これで日本の林業や森林の価値も上向くのではないか」と強い期待感を抱いたのですが、結果としてその高騰はごく短い期間で終わり、一気に急降下してしまったのです。長く続くと期待していた分、この急落は業界にとっても行政にとっても非常に大きな衝撃でした。
またそれと並行し、町内の山林所有者様からも切実な声が数多く寄せられるようになっていました。「今後の山のあり方をどうすべきか分からない」「後継者もいないので手放したい、町に寄付したい」といった相談が日常的に舞い込んでおり、森林の価値や魅力が目に見えて落ちてきていることを肌で感じていました。
行政としても「新規就農者・林業従事者の確保に向けた補助制度」などを講じてはいたものの、コロナ禍の対応等も重なり、既存の制度を維持して「山を守る」だけで手一杯な状況が続いていました。木材価格の低迷と所有者の森林離れが進む中で、これまでの延長線上ではない新たな打開策が必要だと強く感じていました。
鏡野町役場 森林づくりセンター 平田様
知識や初期予算ゼロでも動けた理由。地域銀行の推薦と「成果報酬型」が決め手
――元々J-クレジットには関心があったものの、一度は先送りにされていたと伺いました。
なぜ今回、バイウィルと一緒にプロジェクトを進められたのでしょうか?
平田様:以前から、役場内や当時の町長の間でJ-クレジットの導入について協議が行われていました。しかし当時は、「創出手続きにかかる膨大なマンパワーをどう確保するか」「認証が下りたところで、本当に買ってくれる需要家(販売先)がいるのか」という点に大きな不安があり、結局「専属職員や時間・手間の確保が難しい」という結論に至り、プロジェクトを一度先送りにしていた経緯がありました。さらに当時は森林環境譲与税の事業を形にしていくことが最優先だったため、クレジット創出は二の次になっていました。
そうした中で状況が一変したきっかけが、包括連携協定を結んでいた中国銀行様からのご紹介でした。「創出手続きから販売までをワンストップでカバーしてくれる企業がある」とバイウィルさんを薦めていただいたのです。
バイウィルさんにお任せすることになった決め手は、地元に精通した中国銀行様の強い推薦と、バイウィルさんが提示してくださった「成果報酬型(初期費用不要)」という提案スキームでした。
通常の行政手続きでは、事前に「〇〇万円」といった予算を議会で確保して購入するのが原則です。そのため、「成果がどうなるか分からない前例のない取り組み」に対して、先に予算をつけて購入することは役場の仕組み上非常にハードルが高く、他自治体からも「予算化の説明が難しくて進まない」という相談をよく受けます。
その点、バイウィルさんのスキームは「事前に予算化する必要がなく、創出できて売れたらその分の手数料をお支払いする」というものでした。「何もしなければ何も生まれないが、お願いすれば1万円でも新しい収入(財源)が入ってくる」というロジックは非常に説明がしやすく、町長をはじめ役場内でも一気に納得感が広がりました。
さらに、自分たちにとって最大の懸念だった「創出後の販売」についても、都市部や地場のネットワークを活用して買手を探していただけるというお話だったので、長年抱えていた不安や課題感が一気に解消され、スムーズにプロジェクトを始動させることができました。
鏡野町森林クレジット創出事業のスキーム図
町村の合併で散り散りになった過去資料の探索と、専門知識のハードルをバイウィルが並走
平成の大合併で分散した過去資料のデータ探索に奔走
――クレジット認証の申請プロセスにおいて、過去の施業履歴や面積の証明などでご苦労された点はありましたか?
平田様:一番時間がかかり、骨が折れる作業だったのが「過去の施業履歴や森林面積を証明する書類の探索」でした。
J-クレジットの認証を受けるためには、鏡野町が過去に町有林で行ってきた施業の申請書、図面、事業実績などの証明資料を遡って提出する必要があります。しかし、鏡野町は「平成の大合併」によって4町村(旧鏡野町、奥津町、上齋原村、富村)が合併してできた自治体です。そのため、過去の施業文書が旧町村単位の役場(現・振興センター等)など、物理的に町内4箇所に分散して保管されている状態でした。
さらに、保管施設の老朽化による建て替えなども重なっていたため、どの資料がどこに保管されているのかを把握すること自体が非常に難しい状況になっていたのです。担当者2名で手分けをして、各地区の保管場所を片っ端から探し回りました。資料の探索だけで約1ヶ月もの時間を要したと思います。
ようやく見つけ出した何百枚もの紙資料を提出できるようにデータ化する作業も一苦労でした。平日の日中は通常の行政窓口や通常業務を止めるわけにはいかないため、休日や夜間に役場へ出てきて、ひたすらスキャナーでPDF化する作業を1〜2週間かけて進めました。
当時のバイウィル担当者の方には、データ提出までに大変お時間を取らせてしまい申し訳なかったのですが、こうした泥臭い作業を地道に乗り越えたことで、ようやく申請のスタートラインに立つことができました。

鏡野町の豊かな山林(鏡野町羽出地域 七色樫)
難解な専門用語と審査機関との交渉をバイウィルが「翻訳・伴走」。行政実務を止めずに推進
――審査機関とのやり取りや専門手続きにおいて、バイウィルのサポートはいかがでしたか?
平田様:正直なところ、バイウィルさんがいなかったら途中で断念していた、あるいはスタートすら切れていなかったと思います。
審査機関とのやり取りや手続きのメールを見させていただく機会があったのですが、そこで使われている文言や専門用語が非常に難解だったことが強く印象に残っています。行政の一般的な知識だけでは、使われている言葉の意味を正しく理解することすら難しく、「自分たちだけで直接対応するのは不可能だ」と痛感しました。
バイウィルさんは、そうした高度で専門的な用語や審査機関からの要請を、私たちが理解できる言葉に一つ一つ「翻訳」して丁寧に進捗を説明してくださいました。「今こういう状況です」「ここで必要なのはこういう内容です」と噛み砕いて教えてくださったので、「あ、そういうことだったのか」と納得しながら進めることができ、本当にありがたかったです。
自治体にとって一番の課題は、やはり「マンパワー(人員)不足」です。特に当時はコロナ禍への対応などもあり、日常的な行政サービスを止めるわけにはいかない状況でした。
もし外部に頼らず自分たちだけでやろうとしていたら、日常業務が圧迫されて支障をきたしていたでしょうし、最悪の場合は途中で頓挫していたかもしれません。専門的な審査機関とのネゴシエーションや実務をバイウィルさんに丸ごと伴走していただけたからこそ、行政実務の負担を最小限に抑え、スムーズに認証まで漕ぎ着けることができました。
創出クレジットが地元企業へ8年間の長期還元。町にもたらされた新たな財源と未来への展望
「創出しても売れない」懸念を払拭。地元・津山ガス様との「8年間長期売買契約」
――無事にJ-クレジットが認証された後、地元企業の津山ガス様へ売買が決まった際の率直な感想をお聞かせください。
平田様:他自治体様から「苦労してクレジットを創出したけれど、買い手が見つからずに在庫として残っている」という話を事前に聞いていたので、創出手続きが進む一方で「本当に買ってくれる企業様が現れるのだろうか」という不安は最後まで拭えずにいました。
そんな中、バイウィル営業担当者様から「単発の売買ではなく、津山ガス様と『8年間の長期契約』を結べそうです」と連絡をいただいた時は、本当に驚きました。具体的なお話を伺った瞬間、思わず役場で「おおっ!」と声が出てしまったほどです。単年での売買ではなく、8年という長期間にわたって購入していただけるという話は想定外でしたので、とにかくびっくりしましたし、ありがたかったです。
地元企業の津山ガス様が、鏡野町が取り組む環境保全やゼロカーボンの理念に深く賛同し、長期パートナーとして購入を決断してくださったことには感謝の言葉しかありません。 最終的な国の審査が通るか祈るような気持ちで進めていた時期でしたので、創出の見通しと同時に、確実な販売先が8年間という長期で決まったことで、一気に胸のつかえが晴れていく感覚がありました。
この決定を町の財政部局や町議会へ報告した際も、「作ったはいいが売れるのかと心配していたけれど、長期で確実に売上が入る仕組みができたのは本当に素晴らしいことだ」と、議員さんや職員から大変喜ばれ、役場全体でこのプロジェクトの成功を実感することができました。
税金に頼らない「独自の再投資財源」を獲得。予算や人員の壁を越えて一歩踏み出すことが地方創生の鍵
――今回得られたクレジット売却益の使い道と、全国の自治体担当者様へのメッセージをお願いいたします。
平田様:今回のプロジェクトによって得られたJ-クレジットの売却収入については、町有林の間伐や保育事業(森林の整備・育成)など、次の森林保全事業の財源として活用していく予定です。
これまで一般財源や森林環境譲与税などに頼って賄っていた森林施業の一部を、自分たちの自然資源が生み出したクレジット収益で充当できるようになります。これは町の財政部局にとっても非常に有難いことであり、税金だけに依存しない「持続可能な財源獲得と自然保全の好循環」を町内に作ることができたと感じています。
全国の自治体様の中にも、鏡野町と同じように「豊富な森林資源はあるが活かしきれていない」「J-クレジットに関心はあるけれど、手間や費用、販売面への不安から一歩を踏み出せない」と悩まれている担当者様は多いのではないでしょうか。
アドバイスと言うと大変恐縮ですが、実際に取り組んでみて感じたのは「予算やマンパワーの不足を理由に諦めず、まずは最初の一歩を踏み出してみること」の大切さです。自治体はどうしても「専門知識や予算がないから」「前例がないから」と慎重になりがちですが、成果報酬型のようなスキームや専門機関のサポートを活用すれば、行政の負担を抑えながら前進させることができます。
自分たちだけで抱え込まず、バイウィルさんのような専門機関や地元の金融機関様と手を取り合い、まずは相談してみる。そうすれば、ただ眠っていた地域の森林資源が、未来の町を豊かにする「独自の財源」へと必ず生まれ変わるはずです。
――自治体の財源・人員不足という課題と向き合いながら、地域の自然資源を新たな「価値」へと昇華させ、地元企業とともに未来への投資循環を作り出していく。行政の枠を超え、持続可能な地域創生へ挑む鏡野町様の強い覚悟を感じました。
貴重なお話をありがとうございました。(取材日 2026年8月17日)
(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)