企業版ふるさと納税で栽培棟、育苗棟ハウス寄贈を実現。美郷町が「施設園芸×ゼロカーボン農業」で手に入れた地方創生
津山ガス 株式会社 様
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業種
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サービス
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企業規模
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事業・提供サービス
| 自治体名 | 島根県美郷町 様 |
| 事業内容 |
1.農林業・商工業の振興および地域経済の活性化 |
| ご担当者様名 |
島根県美郷町産業振興課 課長 行田将士 様 島根県美郷町産業振興課アグリ事業開発室 室長 鈴木潤 様 |
島根県の中山間地域に位置する美郷町は、総面積の約89%を森林が占める自然豊かな町です。同町は以前より「ゼロカーボンシティ先進地宣言」を掲げ、環境省の重点対策加速化事業に採択されるなど、町を挙げて再生可能エネルギーの利活用や脱炭素化に積極的に取り組んできた「環境先進自治体」でもあります。
今回同町では、深刻化する「人口減少」への切り札として、町のリソースである環境配慮(脱炭素)と高収益な施設園芸を融合させた「ゼロカーボン農業モデル」を展開。バイウィルのコーディネートのもと、企業版ふるさと納税(現物寄付)を活用して渡辺パイプ株式会社様より先進的な農業研修用栽培棟、育苗棟ハウスの寄贈を受けるプロジェクトを実現しました。
【プレスリリース】バイウィル、渡辺パイプによる島根県美郷町への「企業版ふるさと納税」を支援
国の補助金に頼らず、なぜ「企業版ふるさと納税(現物寄付)」を選択したのか。そして、初面談から僅か3ヶ月という異例のスピードでハウス完成まで至った秘訣とは何だったのか。美郷町産業振興課の行田様、鈴木様にお話を伺いました。
プロジェクト名
みさと農業再生プラン
ご提供サービス
企業版ふるさと納税マッチング支援(現物寄付スキーム)
<目次>
1. 農地を守りつつ、新たに収益を生む「施設園芸」への挑戦
・「自立して経済的に成り立つ攻めの農業」で人口減少に挑む
・施設園芸の利点と「ミニトマト」選定の理由、夫婦就農のこだわり
2. 「儲かる施設園芸」×「既存リソース(脱炭素)」の掛け合わせで生まれた「ゼロカーボン農業」
・バイウィルと出会い、現場の切実なニーズが「ハウス寄贈」へ結実
・面談から施工完了まで僅か3ヶ月。役場内で評価されたバイウィルの推進力
3. 寄贈ハウスがもたらした圧巻の成果と、美郷町が描く持続可能な未来
・「太陽光×ヒートポンプ」の冷房ハウスが実証した、猛暑を乗り越える高単価出荷
・地域の課題だった資源は、専門パートナーとの共創で「最高の財源と人」に生まれ変わる
農地を守りつつ、新たに収益を生む「施設園芸」への挑戦
「自立して経済的に成り立つ攻めの農業」で人口減少に挑む
――まず初めに、美郷町様が街づくりにおいて当時抱えていた課題と、目指していらっしゃる理念についてお聞かせください。
行田 様:私たちの町が直面している最も根本的で、解決すべき最大の課題は「人口減少」です。すべての政策の根幹はここにあります。この厳しい現実に立ち向かい、町外から意欲ある若者を呼び込み、定住してもらうための切り札として始めたのが、『攻めの農業政策』です。
美郷町はもともと水田が多く、米作りを中心とした農業が盛んな土地柄でした。しかし近年は、仕事をしながら自分の土地を守るために米を作る「兼業農家」が主となっており、農業そのものが衰退の危機に瀕していたのです。これまでの農業政策は、国の補助金を活用して既存の農地をどうにか維持する、いわば「守りの農業」に主眼が置かれていました。
しかし、それでは地域に新しい担い手は入ってきません。守るべきものはしっかりと制度を切り分けて維持しつつ、それとは全く異なる文脈で、「農業をひとつの職種として成り立たせ、自立してしっかりと経済的に成り立っていく『攻めの農業』」のプランを作らなければならないと考えました。
島根県美郷町産業振興課 課長 行田様
施設園芸の利点と「ミニトマト」選定の理由、夫婦就農のこだわり
――「攻めの農業」として、なぜ「ミニトマト」による「施設園芸」を選ばれたのでしょうか?
鈴木様:天候に左右されやすい露地栽培や米づくりとは異なり、ビニールハウス等の施設内で温度・湿度・水・養分を人工的にコントロールして栽培する「施設園芸」であれば、狭い面積であっても計画的に高品質な作物を大量に収穫し、高い収益性を確保することができます。
数ある作物の中で私たちが「ミニトマト」に注目したのは、美郷町として15年以上にわたり栽培ノウハウを蓄積しており、専門の指導体制が整っていたからです。未経験からでも、専業農家としてしっかりと生活を営んでいける試算を弾き出し、プロジェクトを本格始動しました。
『美郷町ミニトマト就農研修制度』
中山間地域でも高単価で安定した販売が見込めるミニトマト栽培で“稼げる農家”を目指す。
さらにこだわったのは、移住してくる担い手は「できれば夫婦(ペア)で」という点です。全国の先進地を視察して痛感したのは、農業を1人で孤独に始めるのは精神的にも体力的にも非常に難しいということです。夫婦であれば、作業の補完をし合いながら、生活面でも収入面でもお互いが支え合うことができます。現在、このプロジェクトで3組6人の研修生が来てくれていますが、皆さんご夫婦で埼玉などの都市部から移住し、専業農家を目指して地域おこし協力隊の制度を活用しながら日々研修に励んでいます。

島根県美郷町産業振興課アグリ事業開発室 室長 鈴木様
「儲かる施設園芸」×「既存リソース(脱炭素)」の掛け合わせで生まれた「ゼロカーボン農業」
バイウィルと出会い、現場の切実なニーズが「ハウス寄贈」へ結実
――「攻めの農業(施設園芸)」と、美郷町様が元々強みとして持たれていた「脱炭素」は、どのように結びついたのでしょうか。
鈴木様:施設園芸(ハウス栽培)は高い収益性を期待できる一方で、ハウス内の温度や湿度を人工的にコントロールするため、どうしても「重油などの燃料コストや電気代」という膨大なエネルギーコストがネックになります。
そこで着目したのが、美郷町がすでに町を挙げて取り組んでいた「再生可能エネルギー」という既存リソースでした。美郷町が誇る再エネを最大限に活用し、エネルギーコストを再エネで賄う仕組みを作ることができれば、コスト競争力も抜群の「魅力ある環境配慮型農業」ができるのではないか。そう考えて、施設園芸と脱炭素をガッチャンコさせた『ゼロカーボン農業モデル』を着想したのです。
ただ、コンセプトは描けたものの、具体的なスマート農業技術の導入や、それに必要な大型設備(ビニールハウス等)の資金調達など、多くのことが手探りの状態でした。
――そのような状況の中で、バイウィルがプロジェクトに関わることになったきっかけと、今回の現物寄付(ハウス寄贈)が決まるまでの経緯を教えてください。
鈴木様:きっかけは、バイウィルのご担当者様からお電話をいただいたことです。内容は、全国でインフラ事業を展開されている渡辺パイプ株式会社様が、自社の企業版ふるさと納税を活用し、支援・寄付先として農業に注力している自治体を探されている、というご案内でした。
当時、美郷町ではゼロカーボン農業の研修施設を立ち上げるにあたり、まさに「研修用のビニールハウス」を確保することが最優先課題でした。バイウィル様がその現場の切実なニーズを渡辺パイプ様へダイレクトに伝えてくださったことで、「金銭の寄付」ではなく「ビニールハウス2棟(栽培棟・育苗棟)の現物寄付」という、美郷町にとっても渡辺パイプ様にとっても最も価値のある形での寄贈があっという間に決まったのです。バイウィル様は単に「寄付企業がありますよ」と繋ぐだけでなく、美郷町に対して「今、プロジェクトを進める上で一番何が必要ですか?」と丁寧にニーズを引き出してくれ、マッチングを行ってくださいました。
面談から施工完了まで僅か3ヶ月。役場内で評価されたバイウィルの推進力
――通常、自治体がこうした大型設備を整備する際は「国の補助金」に頼ることが多いと思います。なぜ今回は補助金ではなく「企業版ふるさと納税(現物寄付)」を選択されたのでしょうか?
行田様:自治体業務において補助金の活用は定番ですが、正直なところ補助金には多くのハードルがあります。 使途が厳しく限定される上に、複雑極まりない申請書類、採択までの長いタイムラグ、完了後の膨大な実績報告や何年にもわたる実態調査など、とにかく「手間」と「しがらみ」が付きまといます。
今回、渡辺パイプ様側には「今年度中に寄付を成立させたい」というスピーディーな意向があり、美郷町側にも「事業に必要となる農業用ハウス」という明確なニーズがありました。 補助金に頼って延々と申請手続きや調査のしがらみに縛られるくらいなら、民間パートナーの手を借りてスピーディーに事業を動かすメリットの方が遥かに大きい、と考えました。
――実際のプロジェクト推進において、バイウィルの伴走や対応はどのように役立ちましたか?
鈴木様:バイウィル様のスピード感と実務のサポート力には、本当に驚かされました。2025年12月にバイウィル様と美郷町が初めて面談を行い、翌1月22日には渡辺パイプ様との企業間初面談、1月末には現地調査、そして3月末にはもう寄付が完了していたのです。
自治体の事業スピードとしては異例中の異例と言える展開でした。企業との調整や申請手続きに伴う膨大な工数を、バイウィル様が間に入って劇的に削減してくださったからこそ実現できたスピードです。もし自治体だけでやろうとしていたり、補助金を使っていたりしたら、年度内の施工完了など絶対に不可能だったと思います。 「バイウィル様に頼むと、申請関連の手間もリードタイムの速さも違う。」と、役場内でもバイウィル様への信頼と評価が共有されています。
渡辺パイプ様から寄贈されたビニールハウス
寄贈ハウスがもたらした圧巻の成果と、美郷町が描く持続可能な未来
「太陽光×ヒートポンプ」の冷房ハウスが実証した、猛暑を乗り越える高単価出荷
――実際に現物寄付で寄贈された先進的なハウスを活用した、実証実験の成果について教えてください。
鈴木様:これまでの農業において、ビニールハウスは「冬に暖めるもの(加温)」という常識がありました。しかし、近年の夏の異常な暑さは、作物の生育にも作業する人間の体力にも限界をもたらします。
そこで、今回ご寄贈いただいたハウスを含む研修施設(みさとと。トレーニングファーム)では、太陽光パネル(遮光率30%のソーラーシェアリング)で発電した電気をそのまま使って、日中に贅沢に冷房(ヒートポンプ)をかける仕組みを取り入れました。
昨年からこの実証実験を動かしてみたところ、夏場にハウス内を涼しく保つことで病気がほとんど発生しなかっただけでなく、通常の産地では出荷が激減する「8月〜11月」の秋深い時期まで、高品質なミニトマトを長く、多く収穫し続けることができたのです。
大生産地の出荷が減るこの「端境期」は、市場での取引単価が一気に跳ね上がります。美郷町のゼロカーボン農業モデルは、環境に配慮してコストを抑えるだけでなく、「他が出荷できない猛暑期に、高品質なトマトを高単価で市場に送り出す」という、極めて戦略的で強い農業ビジネスを成立させることができると証明したのです。
ビニールハウス内で育っているミニトマト
――今回のプロジェクトを通じて、町内にはどのようなポジティブな変化や定住促進の効果が生まれていますか?
鈴木様:今回のプロジェクトを契機に、私たちが思い描いていた「移住・定住を伴う就農エコシステム」の点と点が、すべて美しい一本の線でつながりました。
まず住まいのサポートとして、太陽光パネルを完備した町営の「サステナブル住宅(一戸建て)」を用意しています。家賃は6万3,000円と田舎にしてはやや高めですが、地域おこし協力隊の制度を活用して住宅補助や活動給(月給)を2年間支給し、安心して研修に集中できる環境を整えています。
『みさとと。サステナブルハウス』
住環境や子育て支援制度を整え、移住者家族の受け入れ体制を整えている美郷町。
この手厚いサポートと、稼げるゼロカーボン農業の魅力に共感し、すでに埼玉などの都市部からご夫婦3組が美郷町に移住し、研修を開始しています。農業を1人で始めるのは困難ですが、夫婦で役割を補完し合えば、自立へのハードルは劇的に下がります。現在、1期生の研修生たちは2年間のプログラムの修了間近を迎えており、来年度には町が整備した「町営リースハウス」で、専業農家として正式に自立就農する予定です。
これまでの地方創生にありがちだった「研修期間が終わったら、初期投資の借金に耐えかねて都会に戻ってしまう」という負の連鎖を、美郷町は完全に断ち切りました。「初期コストを抑え、使用料(リース料)を払い、安心して儲かる専業農家として定住できる」という理想のストーリーが、今まさに目の前で現実になっています。

ビニールハウス内に設置されているヒートポンプ
地域の課題だった資源は、専門パートナーとの共創で「最高の財源と人」に生まれ変わる
――最後に、同じように一次産業の衰退や人口減少に悩み、一歩を踏み出せずにいる他自治体の担当者様へメッセージをお願いいたします。
鈴木様:全国どこの自治体も、「豊富な森林や自然はあるが活かしきれていない」「補助金でギリギリ維持しているが、これからの未来が見えない」と同じ悩みを抱えているはずです。
しかし、自治体の職員だけで、この複雑な環境制度や最新のスマート農業、民間企業とのマッチングをすべてやり切ろうとするのには限界があります。自分たちだけで抱え込まず、バイウィル様のような「地域活性化と脱炭素に本気で並走してくれる専門パートナー」を信頼し、その力を借りることが、実は最もスマートで確実な近道です。
自治体が本気で「この町を変えたい」というコミットメントを示し、プロフェッショナルのノウハウを掛け合わせれば、最高の形で応えてくれるパートナーと必ず出会えます。諦めずに一歩を踏み出すことで、地域の課題だった資源は、未来の町を豊かにする「最高の財源と人」へと生まれ変われると思います。
<美郷町ミニトマト就農研修制度の魅力>
万全の研修:専門指導員の直接指導や農家研修、農林大学校での座学など充実した研修カリキュラム
生活保障:研修中の給与支給(地域おこし協力隊)に加え、住居費を町が負担
環境への配慮:再エネを活用した「魅力ある農業(儲かる農業+環境負荷低減)」の実践
<募集概要>
募集期間:2026年5月~12月
募集人数:4名~6名
対象者 :地域おこし協力隊制度が利用可能な18歳以上の方
選考方法:1次選考(書類・面接)、2次選考(現地面接)
・特設サイト(詳細・お申込みはこちら)
・現役研修生のリアルな声(インタビュー記事)
・研修生の活動報告(note)
――人口減少や農業衰退という深刻な課題に対し、「脱炭素」と「攻めの農業」を掛け合わせた独自のモデルで挑む美郷町様。
「補助金頼み」から脱却し、企業との共創によって移住・定住の確かな好循環を生み出していく姿に、行政の枠を超えた強い情熱と先進性を感じました。
本日は貴重なお話をありがとうございました。(取材日 2026年6月24日)
(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)