概要

菓子、食品、冷菓等の製造、仕入れ及び販売を主要な事業としている森永製菓株式会社様。近年、経営戦略の柱の一つとして「ダイバーシティの推進」を掲げ、精力的に浸透活動を進めている。今回、2021年に策定した「ダイバーシティポリシー」の浸透を目的として、マネジメント者向け研修を実施した。

ご提供サービス

  • 「ダイバーシティポリシー」浸透を目的としたマネジメント者向け研修
  • 社員の共感を促進するためのイメージ動画制作

2030ビジョン実現に向けた基本方針の一つである「ダイバーシティ推進」

─────全社として「ダイバーシティの推進」を掲げていらっしゃいますが、その背景にはどういった狙いがあるのでしょうか?

西田様弊社では、2030ビジョン『森永製菓グループは、2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります。』に向けた基本方針の1つとして「ダイバーシティの推進」を掲げています。2030ビジョンを実現し弊社が持続的に成長していくには、イノベーションを起こすことが必要不可欠です。イノベーションを起こすためには多様な人材が個性を発揮し、相乗効果を発揮することが重要になるため、ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)を基本方針の1つとして掲げています

また、2021年5月に森永製菓グループとして新たな企業理念を発表しているのですが、その文脈においても、パーパスを実現するためには、D&Iを推進し多くの人が個性を発揮できている状態が必要不可欠だと整理しています。このように、経営の中でD&Iが重要な軸として位置づけられています。

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経営戦略部 ダイバーシティ推進室 西田遥子 様

 

赤田様2030ビジョンについて補足すると、お客様に幸せを提供していくことはもちろん、社会課題の解決に繋がるような価値を創出することが重要だと考えています。そういった新たな価値を生み出すためにはイノベーションが必要であり、その手段としてD&Iが位置付けられています。

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経営戦略部 ダイバーシティ推進室 室長 赤田喜郎 様

 

─────「ダイバーシティの推進」というテーマにおける、これまでの経緯を教えていただけますでしょうか?

西田様取り組みの始まりは2001年の女性活躍推進です。その後2012年にダイバーシティ推進担当を設置しました。その中で、優先的に取り組んだ女性活躍推進において女性が育ってきた一方、違和感をもつ人も増え「どうして女性だけ取り上げるのか」といった声が男女双方からあがってきました。推進側としても、そもそも女性といっても一人ひとり違うという事に気づき、マジョリティがマイノリティを活かすといったD&Iではなく、一人ひとりの個を活かすD&Iの推進へと転換していきました。

転機となったのは2020年です。従来ダイバーシティ推進は人事部内の一担当の位置づけでしたが、現社長である太田自らが旗を振り、社長直轄組織としました。2021年にはD&Iの推進を2030ビジョン達成に向けた重要方針として経営戦略の中心に掲げ、ダイバーシティ推進室を経営戦略部に移管しました。同時にD&Iとはあらゆる社員の一人ひとりの個性を活かすことだという考えのもと、一般的なダイバーシティの解釈だけにはとどまらない森永製菓らしいダイバーシティを表現する概念として「ダイバーシティポリシー」を発表しました。それまではボトムアップの取り組みという側面が強かったのですが、2020年以降会社全体の重要な取り組みとして位置づけられました。

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今回の研修では「ダイバーシティポリシー」と「5つの指針」の浸透に取り組んだ。文章をご覧になりたい場合はこちら

 

単発的な取り組みで終わらせないために、浸透施策全体を設計。会社として本気度を伝え、本格的にスタートを切るためのマネジメント者向け研修

─────「ダイバーシティポリシー」浸透施策を設計する中で、マネジメント者向け研修を行うことになった理由は何でしょうか?

西田様会社が本気でD&Iを推進していくとなったときに、まずはマネジメント層がポリシーを語れずして浸透はできないと考えていました。その他の層にも、マネジメント者に研修を実施した事実が伝わることでダイバーシティ浸透にかける会社の本気度が伝わるだろうと思いました。

他に重視したことはダイバーシティポリシーを自分事として感じてもらうことです。最初から全員が正しく内容を理解し、共感することは難しいと思いますが、「これが私たちがD&Iの推進で共に目指すありたい姿です」と上司が自らの言葉で宣言するということも狙いの1つでした。

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フォワード(現:バイウィル)ご提案時の、ダイバーシティポリシー浸透施策の全体像

 

─────弊社をパートナーとして選んでいただいた理由はどういった点でしょうか?

西田様フォワード(現:バイウィル)には当初からダイバーシティポリシー浸透施策の全体像をご提案いただいており、研修に関しても、WhyからHowまでを一貫して考えさせるプログラムをご提案いただけたため、依頼をいたしました。

本件は、会社の風土を醸成していく取り組みであり、一朝一夕で成し得るものではありません。担当者の交代と共に取り組みそのものが無くなることのないように、5年、10年と活動が継続していく仕組みを作ろうと考えていました。そのため研修も様々な施策を一貫して行う中の1つとして位置付ける必要がありました。

また、「D&Iの推進」には誰にも当てはまる“正解”や“特定のスキル・ノウハウ”があるわけではなく、それぞれの社員や組織が置かれた状況の中で適切な方法を作っていくことが求められます。ですので、スキル研修のようなHowのインプットだけでなく、「どうしてD&Iを推進すべきなのか」といったWhyから考えて、Howに落とし込むことが重要でした。

また、フォワード(現:バイウィル)には根気強く相談に乗っていただき、当社の考えをしっかりと把握した上で、研修のコンテンツを上手く整理してくださったこともありがたかったです。

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マネジメント者向け研修のプログラム概要

 

ダイバーシティポリシーを自分事化するために、各コンテンツでこだわったポイントとは?

─────ここからは、研修の具体的なコンテンツについて伺います。大きく分けると⑴イメージ動画視聴、⑵D&I推進で起きがちな失敗、⑶自部署のありたい姿を描く、⑷アクションプラン立案といったコンテンツをご提案し、皆様と共に内容を固めていきました。それぞれこだわったポイントがあれば教えてください。

西田様まず、研修冒頭に視聴するイメージ動画ですが、2つポイントがあります。1つはダイバーシティポリシーが描くありたい姿を同じビジュアルで想像してもらうことです。言葉だけだと人によって解釈が異なってしまう可能性があるので、ポリシーを補完するものとして位置づけていました。また研修のスタートとして、様々な社員が現在もいきいきと活躍をしている姿を映すことで現状を肯定しつつ、ポリシーを実現するとよりよい未来になるのだという高揚感を感じてもらうことで、前向きに研修に臨めるようなものにしたいと考えていました。

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社員の共感を促進するためのイメージ動画(画面キャプチャ)

 

西田様次に、「⑵D&I推進で起きがちな失敗」についてです。ケースワークとして、ダイバーシティポリシーを実践しようとしたときに現場で起こりがちなシーンや行動を取り上げ、受講者に本当に目指すべき姿はどういうものかを考え、議論してもらいました。組織のD&I推進について考える際、「とはいえこういう人もいて困るよね、、、」と自身とは異なる属性の人の行動に対してネガティブな意見が出たり、活かす側と活かされる側のような発想になったりしがちです。このように、職場で起こりがちな事例を幅広くケースワークとして取り上げることで、「自分もこういうことをしていたかもしれないな」と気が付けたり、起きがちな行動や考え方を客観的に捉え解決策を議論することで、知見を広げられることを意識しました。

 「⑶自部署のありたい姿を描く」については、「ダイバーシティはこうあるべき」といった世の中の一般論に留まるのではなく、「自分自身はどうしていきたいか」を起点とし、主体的に考えられるように設計しました。そのために現場メンバーに事前にアンケートを実施し、自部署の現状や課題感について定量的・定性的に把握した上で、ありたい姿を描くことができるようにしました。

 「⑷アクションプラン立案」では、自部署のありたい姿を実現していくために5つの指針に沿って課題抽出し、優先順位付けした上でアクションプランを立案し、参加者同士で相互にフィードバックを行いました。前述のアンケート結果を深堀しながら具体的なシーンを想定して課題設定を行い、その課題を解決するアクションプランを立案するという進め方によって、リアリティかつ実効性のあるアクションプランを立てることができたと思います。

また、研修後の取り組みとして、立案したアクションがきちんと現場で納得感をもって実行されるように、研修参加者である各マネジメント者が主催者となる職場分科会を開きました。これは、ダイバーシティポリシーを各現場でどう実現していくのかをメンバーと話し合う機会となるものです。この取り組みのポイントは3つです。まずマネジメント者が現場メンバーに対して自分の言葉でD&Iやダイバーシティポリシーについて語るということです。自分の言葉で語れるということは、自分事になっているということだと思います。次に、すべての現場社員が誰かしらから直接説明を受ける状況を作ることです。最後に、上司が決めたアクションプランをただ受け入れるのではなく、たたき台としてメンバー全員で考え議論し、全員が自組織のアクションプランを自分事として捉えられるようにすることです。社内イントラ等に載せて「見ておいてください」と社員任せにするのではなくて、多少強制力を働かせてでも、ダイバーシティポリシーについて考える時間をきちんと設けられたことがよかったと思います。

 

社員からのD&I推進に関する相談が増加。社内事例を収集・発信し、より質の高いアクションを促進したい

─────今回のマネジメント者向け研修の参加者の方々からの反応や声として印象に残っているものはありますか?

西田様研修そのものに対する感想としては「D&Iがどういうことで、どう進めていけばいいかを理解できた」という声が多くありました。またマネジメント者同士が部門横断でディスカッションしたことで「D&Iについて考え、議論していく空気感が醸成されてきている」といった声も聞きました。職場分科会については「これまでは上司と部下の間で業務を推進するための会話が多かったが、組織を運営するためにどうするべきかを議論できるきっかけになって良かった」という声もありました。

目に見える変化として印象に残っていることとして、私がフロアを歩いていると、「こういう場合はどうすればよいか」といったD&Iに関する相談を直接もらうことも増えました。一回の研修でこのように変化が見られることは珍しく、驚きました。 一方で、まだどんな行動をすればいいか具体的なイメージが湧かないという声もあります。ダイバーシティポリシーと5つの指針を体現した事例をしっかり作って、社内で展開していきたいです。

 

赤田様今回職場分科会を実施したことで、その後自走していくチームも生まれてきました。所属しているチーム内でコミュニケーションの場づくりを増やす取り組みが生まれたり、新しい取り組みを実施していきたいので内容について相談したいというチームが出てきたりと各職場がD&Iの推進を自分事として捉えた取り組みが生まれています。課題もまだまだありますが、能動的なアクションにもつながってきているのではないかと感じています。

 

─────今後ダイバーシティを推進するうえで課題になりそうなことや、取り組みとして実施予定のことはありますか?

西田様全員が「ダイバーシティポリシーを知っている」という状態までは一定程度達成できていると思っています。一方、ダイバーシティポリシーに関する解釈のずれはまだ見られるので、そのずれができる限り無くなるよう取り組んでいきたいです。そのうえで、現場における行動に繋がるようサポートしていくことや自社内の事例を発信することが重要だと考えています。今回立案されたアクションプランの中で成功事例を取り上げ、結果的にイノベーションや成果につながったかどうかも今後追っていきたいと思います。

また、社員みなさんがD&Iに関して相談を気軽にしてもらえるようなダイバーシティ推進室にしていきたいと思っています。そのためには、私たちが一人ひとりに寄り添って考えるスタンスを継続していくと共に、常に推進室からも情報発信を行うような仕組みづくりも行っていきたいと思っています。

赤田様先日、各職場で立案した200以上のアクションプランシートをダイバーシティ推進室のメンバーですべて確認をしてチームごとにフィードバックを行いました。現状としてはまだまだチームによって、取り組みの質・量にばらつきがありますので、それらを底上げしていくことも今後の伸びしろと捉えています。全社で取り組みを継続的に積み重ね進化させていくことで、ダイバーシティポリシーの浸透を図り、2030ビジョンの達成に資する組織作り、風土醸成を行っていきたいと考えています。

 

─────ありがとうございました。

 

(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)