概要

損害保険会社として、業界に先駆けてたくさんの画期的なサービスを生み出してきたセゾン自動車火災保険株式会社様。近年、自律型人材の育成を目的に、エンゲージメント向上の取り組みに力を入れている。今回、顧客接点部門のマネジメント層を対象に、1年間という長期にわたるチームビルディングプロジェクトを実施した。

ご提供サービス

  • 自組織のビジョンを描き、メンバーを巻き込む力を身に着けるためのマネジメント層向け研修の企画・実施
  • 自組織のメンバーとアクションプランを立案し、実行するための職場分科会の企画・実施
  • エンゲージメントサーベイとフィードバック研修を組み合わせた、アクションプランのPDCA実行支援

”自律型人材”の育成のカギとなる従業員エンゲージメント向上のために。注目したのは現場マネジメント層のチームビルディング

─────今回、エンゲージメント向上を目指した取り組みを行われた背景はどのようなものだったのでしょうか?

越智様:まず、弊社では会社の成長サイクルを回すために”人”が原動力になるという考え方があります。”人”と一口に言っても、人事制度や組織の仕組み、働き方など様々なテーマがありましたが、その中で”自律型人材”の育成にアプローチすることになりました。会社の事業的にも、ペット保険など扱う商材を増やしさらなる成長を模索するタイミングでした。そんな中で、日常業務においても顧客の変化を敏感に察知し、課題解決に向けて周囲を導いていけるような、まさに”自律型人材”が求められているという背景もありました。

そういった”自律型人材”を育成するために鍵になるのが従業員エンゲージメントの向上だと考えています。弊社やグループ会社では、これまでもエンゲージメント向上に取り組む施策を行ってきました。例えば、エンゲージメントサーベイを従業員向けに実施し、部門ごとに改善策を立案するといった施策です。しかし、調査結果を大きなくくりの部門でしか見れなかったため、本当に組織変革に繋げていくには至らず、より細かい部門単位でPDCAを回したいという問題意識がありました。

 

人事部 人事企画 副長 越智康裕 様

人事部 人事企画 副長 越智康裕 様

─────そういった背景をもとに、今回はマネジメント層向けのチームビルディングプロジェクトを行うことになりましたが、どういった狙いがあったのでしょうか?

 

越智様:従業員エンゲージメントを高める取り組みを始めるにあたり、まずは社員の約8割を占める顧客接点部門の社員を対象としました。そして、顧客接点部門のエンゲージメントを向上させる上で障壁になっていたことが2つありました。

1つは、現場のメンバーレベルまで会社のビジョンが浸透していないということです。なので、まずは現場に近いマネジメント層が会社の目指す方向を浸透させる主体者としての意識を持つこと、そして社員同士のコミュニケーション量を増やしていくことを課題として設定しました。それによって、会社の進んでいく方向性への理解や共感を高めることで、エンゲージメント向上を実現しようと考えたのです。

また、障壁の2つ目としては、現場に近い社員であるほど日々の業務をこなすことで精一杯になってしまい、将来を見据えた対応や取り組みができていませんでした。なので、将来の自組織がどうありたいのかを考える機会を創ることにしました。日常業務で忙しいという社員からの声もありましたが、最初のうちは強制的にでも将来について考える場を設定することが重要だと考えていました。

そして、こういった活動の起点はやはりマネジメント層です。まずはマネジメント層が自律型人材としての自覚を持つこと。そのうえで、現場のメンバーと積極的にコミュニケーションを取ったり、将来のありたい姿を考える場を持つことで、影響を波及させていく。そんな全体像を描いて、マネジメント層向けのチームビルディングプロジェクトに取り組むことにしました。

 

現場メンバーの「やりたい」を引き出し、”自律型人材”へ導く

─────マネジメント層向けのチームビルディングプロジェクトを始めるにあたり、パートナーとして弊社を選定していただいた理由を教えていただけますか?

越智様:始めにしっかりヒアリングをしていただいて、弊社の状況にマッチしたご提案をいただき、提案への共感や納得感が高かったことが大きいです。印象に残っているのは、現場メンバーの意識や行動を変えていくために「Will Can Must」の3要素を満たすことが大事だというところです。その中でも今後は「Will(=やりたい)」を伸ばしていかなければいけないという指摘に特に共感しました。実際、現場メンバーは与えられた業務をこなすのでいっぱいいっぱいで、「やりたい」を感じられる瞬間は多くなかったと思います。「やりたい」という気持ちに火をつけることができれば、彼ら・彼女らが自律型人材に育っていくことにも繋がるなと感じました。

社員の行動変革を促すための「Will Can Must」の考え方

社員の行動変革を促すための「Will Can Must」の考え方

エンゲージメント向上を実現するためのポイントは”継続する”ための仕組みづくり

─────チームビルディングプロジェクトの内容について伺っていきます。今回、プロジェクトの全体像を設計する上でこだわりを持っていた点や重視していた点はなんでしょうか?

越智様今回のチームビルディングプロジェクトでは、現場に近いマネジメント層が自律的に組織づくりをしていけることを目指していました。なのでまずは、4時間×2日程度のマネジメント層向け研修を行い、組織ビジョンを描くポイントや、チームメンバーにビジョンを分かりやすく伝え、効果的にチームメンバーを巻き込むためのスキルを伝えました。しかし、こういった1回限りの研修で終わってしまうとその後に活かされないことが多いと思います。なので、きちんと振り返りの機会を持ち、PDCAを回すことを重視しました。具体的には研修後に職場分科会を実施し、チームメンバーもいる場で自組織のアクションプランを最終化しました。さらに、3か月に一度エンゲージメントサーベイを実施し、そのサーベイ結果を基にフィードバック研修を行うという仕組みを回すことができたのが良かったと思います。その度にアクションプランをブラッシュアップし、継続的にアクションを実行させることを意識させました。

欲を言うと、毎回のフィードバック研修の中でも、最初の研修で伝えたマネジメントスキル
を振り返った方がよかったのかもしれません。やはり1回限りの研修だと忘れてしまうことも多いと思います。

チームビルディングプロジェクト全体像

チームビルディングプロジェクト全体像

 

─────ここからは、チームビルディングプロジェクトの具体的な取り組みについて一つ一つ伺います。マネジメント層向け研修については、どういう点が良かったと感じていらっしゃいますか?

越智様:マネジメント層向け研修のコンテンツについては、率直に中身の濃いものだと感じました。4時間×2日間という長丁場の研修でしたが、必要な情報がしっかり入っていて盛りだくさんなくらいでしたし、参加者にも響いていたと思います。また、グループワークが多く、普段なかなか話せない人同士で話せたことは良かったです。

スライド1-2

マネジメント層向け研修のプログラム概要

─────職場分科会については、どういった印象を持たれていましたか?

越智様分科会のファシリテーションの仕方について細かく指示を出してくださったので、現場でも何をやるべきなのかが明確になったのでよかったです。各チームリーダーの感覚で何となく進めるのではなくて、真面目な社員も多いこともありファシリテーションの仕方を参考にする社員が多く、丁寧に進めることができたと思います。

─────その後、エンゲージメントサーベイとサーベイフィードバック研修を約一年間にわたり、期間を空けて3回実施しました。こちらの取り組みで印象に残っていることはありますか?

越智様現場としては、同じことを課せられてると思われていた側面もあったようですが、しっかりアクションを継続することに繋げられたと思います。また、少しずつ成果も上がっている感覚でした。

また印象に残っている施策としては、現場に近いマネジメント層の中で、自組織のエンゲージメントを高めることに成功している方の実践事例を社内メールで通知しました。これはフォワード(現:バイウィル)の齋藤さんに、「最後に向けて追いこみましょう」ということで、ご提案いただいた施策です。社内で通達を出す方法もありましたが、忙しい中でも閲覧数を増やすために、人事共通アドレスからメールマガジン形式で配信することにしました。

 

「継続は力なり」。地道にPDCAを回し続けることこそが確実な成果創出のポイント

─────1年間を通してプロジェクトに取り組んだ成果として、エンゲージメントの数値が、5段階評価の平均値で約0.3ポイント向上しました。この結果については、どのように捉えていらっしゃいますか?

越智様取り組み自体が初めてだったので、どれくらい良かったのか測り切れない面もありますが、数値の向上自体はポジティブに振り返っています。やはり数値にしっかり変化が現れたのは、エンゲージメントサーベイを実施し、そのフィードバック研修までを徹底して行った結果だと思います。

今回のプロジェクトから感じたのは「継続は力なり」ということです。数値を定点観測して、きちんと振り返りを行ってプランを立てるサイクルを回していくことが、一見地味ですが重要なことだと分かりました。今回は顧客接点部門が対象でしたが、全社に対象を拡大して今後もエンゲージメントサーベイは続けていきたいと思います。

─────ありがとうございました。

 

(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)