概要

「ミュゼ」ブランドを幅広く展開し、美容脱毛専門サロンの運営や化粧品の商品開発、販売などを行うミュゼプラチナム様。事業の拡大に伴い、事業部ごとの分断が目につき全社としてのまとまりが薄くなる中で、改めて事業部間の意識統一を図るため、ブランドコンセプトの策定とクレドの再策定を実施した。その後、社内共有会の実施や人事評価制度への反映など浸透活動にも精力的に取り組まれた。

ご提供サービス

ブランドコンセプトクレド策定



全社の意識統一を目的にスタートしたブランドコンセプト・クレド策定

─────まずはブランドコンセプトとクレドを策定するに至った背景や、課題感を教えてください。

川名様:きっかけはアプリの制作でした。私たちは脱毛サロン、コスメ、ホワイトニングなど複数の事業を展開しているのですが、各事業のハブになるような会員様向けアプリのリニューアルを検討していたときに、改めて考えると各事業間のまとまり、軸のようなものがないと感じて、そこからこのプロジェクトが始まりました。1つの会社として各事業部の意識統一や連携が取れてこそ良いアプリができると考えました。

マーケティング部 CRM課 課長 川名紗織様マーケティング部 CRM課 課長 川名紗織様

黒羽:業務を進める中で迷いが生じるようになってきていました。目の前の業務に対しても、「これってどういう伝え方がいいんだっけ」とか、「私たちは何を軸にしてお客様へのメッセージを表現するんだっけ」などと迷うことが増えてきて、そもそもから見直した方がいいのではと。ここ数年で新しい事業が増えてきた中で、自分たちの指針になるものがあった方が良いんじゃないかとはよく話をしていたので、これをきっかけに声をあげようというのが最初でした。


マーケティング部 CRM課 主任 黒羽紘美様
マーケティング部 CRM課 主任 黒羽紘美様

 

鎌田様:2人から話が上がってきたときに、役員の中で「アプリだけの話ではなく、会社をあげての話だよね」「事業部ごとに縦割りになったり、一人のお客様に対して皆で接点を探してしまうような状況は本来あるべき姿ではない」という話になりました。ちゃんと全体として考えようと。既に店舗に浸透していたクレド(行動指針)はあったのですが、それはあくまで現場(店舗)のもの。本社社員向けのクレドも一応あったのですが、大分前に作ったもので、最近入社してきた人たちはその存在すら知らないということもあった。なので、改めてミュゼプラチナムのブランドコンセプト並びに本社社員向けのクレドを作ろうということになりました。

執行役員 教育部 部長 鎌田真理子様執行役員 教育部 部長 鎌田真理子様

────弊社をパートナーとして選定して頂いた理由やポイントはどういったところでしょうか?

黒羽:私がもともとクリエイティブの業界にいたのですが、詳しい方にヒアリングをする中で、ブランディングが得意な会社としてフォワード(現:バイウィル)さんの名前が挙がっていました。その時に「クライアントと同じ目線に立ってくれる」ということや「押し付けではなく、自分たち(クライアント側)の考えや想いを重視してくれる」と聞いていました。コンセプトやクレドは“自分たちの言葉”になるものなので、そういうことを大事にしてくれるパートナーと進めた方がいいと考えていました。

鎌田様社長にもインタビューをして頂きましたが、話の引き出し方や、弊社の想いを聞いてくださって、大事にしているものを無くさないようにと一緒に考えてくれたことが印象に残りました。数社の中からどこかを選ばなければならないという感覚ではなく、ここ(フォワード(現:バイウィル))にお願いしたいという感覚が得られました。

また、クレド策定にあたり、部署や業務が異なってもそれぞれの立場でしっかり落とし込める内容じゃないといけないとなったときに、「部署別のOKNGシーン」というところまで落とし込むというご提案を頂いたことも良かったです。フォワード(現:バイウィル)さんからも「インナーブランディングに強い」というお話はありましたが、他社様と比較した時に、今まさに自分たちがやろうとしているところに強みを感じました。

─────プロジェクトの内容や進め方、またプロジェクトメンバーの参画意識や変化など、進行中に印象に残ったことはありますか?

鎌田様:各部署からプロジェクトメンバーを選任して、みんなで一から考えるのは新鮮でした。普段の業務でも部署横断での打ち合わせというのはありますが、今回ほど幅広い部署の人たちと「ブランドに対してどういう思いを持っているか」や「お客様像をどう考えているか」といった根源的なことについて意見を交換できる機会はなかなかありませんでした。ある意味このプロジェクトをきっかけに二人(川名様、黒羽様)とも関わりが深くなりましたし、他部署の人の考えを深く知る機会というのはとても大事だと改めて感じました。

黒羽:ブランドマネージメントの責任者としてミュゼを15年背負っていたメンバーから、こういう機会を持てたことで、共通の軸となるコンセプトやクレドを持ち、浸透させていくことが大事なことだと社員皆に伝わった、それが良かったと言われたことが印象に残りました。

川名様:プロジェクトの中で、コンセプトを実現する上での課題を事業部どうしで指摘し合う場があり、心理的にグサグサきそうで大変だと感じました。ただ、他部署からこう見られているんだということに気づいたり、今まで見えてなかった他部署の課題の背景が見えたり、結果的に事業部間の理解が進んだので良かったとは思います。

フォワード(現:バイウィル):そうですね。確かに他部署への指摘という側面もあり、ハードな部分もあったと思います。コンセプトを実現していく上で、今その障害となるような行動や姿勢があるのであればそれを変えていく、こういう風に変えていきましょう、というのをきちんとクレドに落とし込んでいきたいという意図で実施しましたが、皆さん事務局の方々が、人と人、部署と部署との関係にもすごく配慮しながら進めてくださっていたので我々としてもとても助けられていました。また、これは副次的な効果ですが、組織間の健全な対立が少ないということも議論の中で出ていたので、そういうことをきちんとできるようにしていくという意味でも1つのきっかけになったのではないかと思います。

 

全社向け共有会の実施や人事考課への接続。丁寧で地道な取組によってクレドが社員の共通言語に

─────続いて、ブランドコンセプトやクレドの浸透活動として実施した取り組みを教えてください。

今回策定したクレド
今回策定したクレド

 

鎌田様:まず出来上がったコンセプト・クレドの全社向け共有会を2回に分けて実施しました。社長も役員も全員出席のもと、プロジェクトメンバーでもあった広報責任者がファシリテーター役で進行していきました。プロジェクト発足の背景から、そもそも「コンセプト」「クレド」というものがどういうものなのかの説明、実際に策定したコンセプトとクレドの内容説明という流れです。最後に、役員1人1人が9個あるクレドの中から1つをピックアップして、「私はこのクレドを大事にして、こういうことをやっていきます」という宣言をしました。ここは参加者の皆さんもすごく真剣に聞き入っていました。

ちなみに弊社の場合、全社員が集まる場というのは年1回の決算報告会しかありません。その中で、こういう新しい取り組みについて全員を集めて説明するということ、どれだけ本気で重要な取り組みなのかということを最初にトップからも伝えてもらいました。

共有会の後は、各部門でOK・NGシーンを落とし込む機会を設けました。部門は細かすぎない範囲で5つに分けてOK・NGシーンを考え、さらに各部署でディスカッションしました。その後の浸透活動は基本的に各部署に任せていますが、私の部署では、新入社員のオリエンテーションでクレドの説明をした上で、プチ研修のようなものを行いました。クレドの説明を聞いた上で、まず目先の目標を設定してもらい、各上長にもメールで共有を行いました。このプチ研修は、クレドが出来上がったタイミングで課員から提案があり、是非やろうという方向で進めました。

─────人事考課にも接続を図ったとのことですが、その点についてもお聞かせ頂けますでしょうか。

鎌田様:人事考課に関しては、今までは過去のあまり機能しなくなっていたクレドを基に、クレドに沿った行動ができていたかを自己評価していました。それを今回、2020年上期の目標設定の時に新しく策定したクレドに変更しました。評価のウェイトは部署や役職によって異なります。ちょうど先月、新しいクレドになって初めての自己評定でしたが、「どう考えていいかわからない」という声も少しありました。部署や個人によっては、自分の部署や業務とクレドの項目との結びつきが弱かったという印象があって、まだクレドの理解が浅い人向けにOK・NGシーンをもう少し具体的にレクチャーしなければならないなどの課題も感じています。

オフィス各所にクレドが掲示されているオフィス各所にクレドが掲示されている

─────浸透活動の成果と言いますか、クレドに沿う形で社員の意識や行動が変わったなどの手応えはありますでしょうか。

鎌田様:今回このクレドを作って、会社の中で共通言語になっていっていることを感じます。役員会でも「自分ごと」や「成果へのこだわり」という言葉がよく出てきます。今まで言葉を選んだり探したりしていたところが、クレドができたおかげで、「それ誠実さないですよね」とか上下関係なしに意思表示できるようになりました。変にトゲが立つことなく、大事にしたいことがちゃんと相手に伝わるという感覚はあります。

黒羽:私と川名さんの部署では「それってお客様に対して嘘じゃないですか」などと言う人が多いです。

川名様:あと、「誠実さが足りない」もすごく言いますね。弊社は新しい商品やサービスも沢山出ますし、キャンペーンも数多く打っています。コロナ禍で売り上げが落ち、早く売上を回復させなきゃという中で、一歩間違えばお客様に無理をさせるような形になってしまう。そんな時に、一歩立ち止まって「それはお客様に対する誠実さが足りないのでは?」などという議論ができるようになりました。

鎌田様:私の部内では、クレドの中でも「当事者意識」を一番強化しなきゃいけないという議論をしたのですが、それが結構響いたようでした。先程のプチ研修の話ですが、「教育」という自分の業務において「当事者意識」を持った行動というのを課員が考えてくれて、そこからの提案だったと思います。今までより一歩先に進んだことを提案してくれたので、これもクレドのおかげかなと思っています。

川名様:別の話になりますが、ブランドコンセプト(コアバリュー/ベネフィット/エビデンスの要素を構造として1枚にまとめたシート)を業務の中で活用しているシーンもあります。私自身もよく見る方で、1週間に2~3回は見ます。新しい施策を企画するときや、判断に迷いが生じそうなときなど。今度オウンドメディアを作るのですが、その軸となるものを提示するときも、今回のブランドコンセプトが使えると感じていました。

ブランディングと言うと、カッコいいものを作るとか素敵なものを作るとかそういうイメージもありますが、私たちがお客様に伝えていきたいイメージと、お客様が持つ印象をイコールにしていくことと捉えています。これからミュゼも変わっていかなきゃいけない、変わっていくフェーズにある中で、今回作ったブランドコンセプトとクレドをその一番の土台としてもっと社内に落とし込んで、そこからきちんとお客様に伝えていきたいと考えています。

─────本日はありがとうございました。

 

(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)

 

*「ブランド戦略全般」に関するサービス内容はこちら>>ブランドコンサルティング