各種メディアでも取り上げられることが多くなっていますが、昨今、日本企業においても「パーパス」を策定する企業が増えてきました。そして策定したパーパスを社内に浸透させていく活動の中でも、特に大切であると言われているのが「個人と会社のパーパスを接続する」ということです。

 

本セミナーでは、サイボウズ株式会社 ソーシャルデザインラボ 渡辺清美氏をゲストに迎えて、パーパス・カルチャー浸透の取り組みや、会社のパーパスとMyパーパスを接続させた渡辺氏の活動などをご紹介いただくと共にパネルディスカッションを行いました。今回のPART2ではパネルディスカッションの様子をお届けします。

 

Part1:サイボウズ株式会社 ソーシャルデザインラボ 渡辺清美氏によるプレゼンテーション(Part1の記事はこちら

Part2:パネルディスカッション

 

【サイボウズ株式会社様 HPhttps://cybozu.co.jp/

【サイボウズ株式会社様のパーパス・カルチャー】https://cybozu.co.jp/recruit/about/philosophy/

 

【Part2】画像1

右:サイボウズ株式会社 ソーシャルデザインラボ 渡辺清美氏

左:株式会社バイウィル 執行役員 齋藤雅英

サイボウズ株式会社がパーパス・カルチャーを大切にする理由

齋藤雅英(以後、齋藤):渡辺さん、プレゼンテーションありがとうございました。早速ですが、サイボウズ社が社員の自立を前提としたパーパスやカルチャーを重視する理由をお聞かせください。

 

渡辺清美氏(以後、渡辺氏):多様性のある組織で幸福に働くには、自立していることが必要だと考えられているからです。トップダウンでの経営がうまくいかなかった経験をふまえ、社員が質問責任や説明責任を意識して、与えられるのを待つのではなく主体的に活動することを重視するようになりました。

 

齋藤:社長が青野さんに交代したばかりの2005年には離職率が28%とピークに達したとのことでした。青野さん自身の考え方も一大決心して変革を進めたと思うのですが、青野さんが挫けそうになったこともあったのでしょうか?

 

渡辺氏:挫けそうなことがあって、変革に取り組めたようです。基本的には社員の反応や反響が良かったので続けられているのだと思います。

 

齋藤:新しい文化をつくるのも、その文化を維持するのも大変ですが、時には文化に反する振る舞いもあると思います。どのように対処されているのですか?

 

渡辺氏:文化を大事にできない人には退出いただくということもいわれています。振る舞いが理念にてらしてみてどうなのかということは、ときどき議論されることはあります。

 

齋藤:毅然とした姿勢ながらもオープンに対話されているのですね。

会社のパーパスとMyパーパスを接続する仕掛け・仕組み

齋藤:プレゼンテーションでも説明がありましたが、改めて、サイボウズのパーパスとMyパーパスを接続する会社としての仕掛け・仕組みを教えてください。

 

渡辺氏:誰でも起案ができる制度があります。サイボウズは副業ができるので、会社以外の活動をしながら会社との接点を重ね合わせて提案することもできます。また、他の部署への「大人の体験入部」制度や「ジョブボード」という仕組みもあり、自分の部署で実現できない場合は他の部門で実施するなど、重ね合わせるためのオプションが多数用意されています。

 

齋藤:そうなのですね。お客様からMyパーパスを追求し始めると会社を辞めてしまうのでは?と聞かれることがあります。サイボウズの場合は、会社以外の活動を野放しにするのではなく、会社に還元しやすい仕掛け・仕組みがあるのがすばらしいと感じました。

 

渡辺氏:エコシステムを大切にしています。会社を辞めて起業する人や別の会社で働く人もいますが、新たなチームでサイボウズのサービスを使ったり広めたりと繋がるケースも多いです。

 

齋藤Myパーパスがクリアになっていない社員に向けての仕掛け・仕組みもあるのでしょうか?

 

渡辺氏:コロナ禍でキャリアを問い直す方も増え、また、社員も増加していることもあり、「キャリア月間」を新設し、働く意味を仲間と共に壁打ちしながら見つめ直す仕組みがあります。メディアプラットフォームのnoteで発信する社員も増えました。私自身、ブランディング部門だったので会社として「サイボウズ式」を発信していましたが、今は様々な部署・チームがそれぞれの視点で自由に発信しています。語る軸は人それぞれですが、サイボウズとの重ね合わせを意識しながら発信しています。

 

齋藤:先ほどのプレゼンテーションでボードを掲げてMyパーパスを紹介していましたが、サイボウズの社員全員が同様に言語化しているのでしょうか?

 

【Part2】画像2

サイボウズ 渡辺清美氏のMyパーパス

 

渡辺氏:社外イベントでボードに書いたので、社員全員が書いているわけではありません。サイボウズでは社内のグループウェア上でX(旧twitter)のような「分報」でのタイムリーな情報発信、プロフィールの共有、自分のスペースでのオープンな対話などを通じてMyパーパスのようなことを発信・共有しています。

 

齋藤:アウトプットするという雰囲気・文化があるのですね。

 

渡辺氏:はい、グループウェアを提供する会社なので私が入社した頃から今も変わらずに情報共有することが前提となっています。例えば、賞与や給与の仕組みなど社員“発”で色々なことが発信されてアップデートにつながっています。

 

齋藤:会社によっては経営層が社員の声を“経営がわかっていない人たちの声”と認識し、意見が出されても受け止めない、受け止めたふりをすることがあるのですが、サイボウズではこのようなことがない感じですね。

 

渡辺氏:社内の掲示板には反対の意見含めて色々なことが書き込まれます。多様な意見や選択肢があることを前提として傾聴してくれます。疑問や意見があるならば社内でオープンに意見を交わしてほしいというスタンスです。

経営層が「覚悟」を抱いて会社を変革する

齋藤:今でこそ共通の文化になっていると思うのですが、離職率28%だった頃はそうではなかったとも想像します。初期の頃に取り組んだことを教えてください。

 

渡辺氏:離職率が高い時期はヒエラルキー型の組織でした。事業部制でもあり、好業績な定番商品を扱う部門は賞与があっても、少人数の新規事業や管理部門は賞与がゼロというときもあり不満を感じている社員もいました。2005年に社長が青野に代わったのですが、相対評価で社員同士を競い合わせるのではなく、絶対評価で一人ひとりが評価され働きやすくなるように変革し始めました。M&Aで事業拡大して売上や利益、時価総額の向上を狙っていたときもありましたが、2007年にグループウェア事業に集中するとしたことも転機となりました。賞与も全社共通の目標や基準が反映されるようになりました。

 

【Part2】画像3

離職率と売上高の推移

 

齋藤:人事制度を変えて事業も絞ったとのことですが、事業を絞ることで業務の効率化が進んだことが働きやすさの向上に繋がったのでしょうか?

 

渡辺氏:グループウェア事業に絞ったことでシンプルになったと言えます。

 

齋藤:事業を絞ることで社員も自分たちが本当にやりたいことに専念できるようになったんでしょうね。大きな変革を短期間でやり遂げた青野社長の覚悟や実行を推進したマネジメント層の協力の結果だと推察します。

 

渡辺氏:確かに「覚悟」という言葉を大切にしていますね。

 

齋藤:変革したいと思う経営者・経営層は多いものの、実行するには覚悟が大切であると再認識しました。渡辺さん、ありがとうございました。

 

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