概要

SIおよびコンサルティング、各種ソフトウエアの開発・販売など、IT領域で幅広い事業を展開するキヤノンITソリューションズ株式会社様。
今回、同社がもつITインフラサービスが統合され、「SOLTAGE(ソルテージ)」という新ブランドが誕生。ブランドコンセプトの策定からクリエイティブ制作まで、ブランドの立ち上げをバイウィルがご支援させていただきました。

ご提供サービス

サービスブランド「SOLTAGE」
•    ブランドコンセプト策定
•    ロゴマーク制作
•    キービジュアル制作
•    ブランドムービー制作
•    ブランドサイト制作
•    ブランドロードマップ策定
•    サービス紹介資料制作

「特長を訴求しづらい」と言われたITサービス。その事業成長を目指して選んだのは、事業部門初の「ブランディング」

── まずは、今回ブランディングを始めるに至った経緯を教えてください。

五十嵐様:2年前の夏、親会社であるキヤノンマーケティングジャパン(株)の中で、「サービス型事業モデル」にあたる事業を拡大・拡充するという方針が発表されました。これはお客さまに継続してサービスを提供する、いわゆるストック型のビジネスモデルのことで、クラウドサービスやデータセンターなど、私たちが担当しているITサービス事業も重要な役割を担っています。そのため、どうすればITサービスのプレゼンスを上げることができ、目標を達成できるのかを、これまで以上に考えることが求められました。

私は広報宣伝の立場ですので、まずはPR施策やマーケティングについて考えたのですが、これには限界があると感じました。実はそれまで、ITサービスのプロモーションは個々のサービスごとに行われており、発信するメッセージもそれぞれの担当者が考えていたのです。そのメッセージが正しいのかを確認しようにも、正解と言えるものもありません。そのため、発信されているメッセージに統一感はなく、制作物なども方向性がバラバラになっているという状況にありました。

このままの状況でプロモーションだけを進めるのは厳しいと感じた私が辿り着いたのが、「ブランディング」でした。ただ、いきなり「ブランディングしたいです!」と言っても誰もついてきてはくれないと思いますので、書籍を読むなどしてブランディングの概念やメリットを自分なりに理解したうえで、企画にまとめました。

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ITサービス事業企画部 ITサービス支援課 五十嵐様

 

寺本様:当時、私が感じていた課題はいくつかあったのですが、最も大きかったのは、「目に見えないITサービスはその特長を訴求しづらい」と部署内外から思われていたことでした。
弊社は「VISION2025」というビジョンを掲げているのですが、そこでは今後の事業展開について、「サービス提供モデル」「システムインテグレーションモデル」、そして「ビジネス共創モデル」という3つの事業モデルを持ち、それぞれを連携させながら提供価値を最大化していこうと語られています。その中で、私たちの事業部は、継続したサービス提供によって顧客課題を解決する「サービス提供モデル」という領域におり、その中核を担っています。
実は、かつての組織はほぼ縦割りで、アプリケーション開発や、プロダクト提供チーム、私たちのようなサービスを提供するチームが部門ごとに独立していました。ところが、ビジョン策定により、開発チームでお付き合いのあるお客さまに対してITサービスもご案内するなど、部門を跨いだクロスセルやアップセルを進める方針が示されたわけです。

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ITサービス事業企画部 部長 寺本様

 

寺本様:そんななかでぶつかった壁が、先ほど申し上げた「特長を訴求しづらい」と思われていたことでした。ITサービスの中でも、例えば西東京のデータセンターは目に見え、他事業部のメンバーにも内容をわかってもらいやすい。一方で、クラウドサービスやネットワークのように“目に見えない”サービスは、何が魅力なのかがわかりづらく、どうやって売り込めばよいかわからないという声が挙がっていました。事業部内のメンバーは感覚的に営業できていましたが、それでも「なぜ、うちのITサービスがよいの?」という問いには明快に答えられなかったのです。

なんとかこの課題に手を打たなくてはというときに、五十嵐から「ブランディングによってITサービスをまとめてわかりやすくし、社内・市場でのプレゼンスを上げていく」という提案をもらいました。これしかないな、という感覚でしたね。「特長を訴求しづらい」という課題の解決はもちろんのこと、データセンターだけが社内外で目立っているという状況についても、ブランディングによってその他のサービスも引き上げることで、ITサービス全体の存在感を高められるのではないかと感じました。

── ブランディングへの期待が高かったことが伺えます。その重要な局面でのパートナーにバイウィルを選んでくださったのは、どのような理由だったのでしょうか?

五十嵐様:バイウィルさんに出会ったとき、実はすでに他の企業様にお願いしようとほぼ決めていました。そんな状況でもお願いしたいと思った理由はいくつかありましたが、決め手になったのは、最初からKGI・KPIの設定についての提案があったことです。他社様にお話を伺うなかでは、ブランドリリース後のお話を具体的にしてくださったところはありませんでした。ですが、私たちは事業を成長させるためにブランディングに取り組もうと思っていたので、ブランドをリリースした後の目標が重要だったのです。
KGIやKPIの設定が終わった今も、やはりそれがバイウィルさんにお願いしてよかった一番のポイントですね。

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本プロジェクトでのご支援の全体像

 

寺本様:プロジェクトマネージャーを担当してくれる渡邉さんにお会いしたときに、ピントが合った感覚を得たのも決め手になりました。熱い方だったんです。私たちが新しいブランドに欲していたものと通ずるかもしれないですが、ただロジカルにゴリゴリ進めるよりも、熱やパッションのある方に伴走してほしいと思っていたので、その点でぴったりでした。

社外への調査では予想外の結果が。客観的に自身のサービスを見つめ直すことができたコンセプト策定

── 嬉しいお言葉をありがとうございます。プロジェクトはブランドコンセプト策定からスタートしましたが、印象的なことはありましたか?

寺本様:まず、その進め方に驚きましたね。ブランディングに取り組んだことのない私は、すぐにロゴなどのデザインに取りかかるのかなと思っていました。実際は、ブランドの現状を調査して、ターゲットを考えて、パーソナリティを設定して……と、助走がとても長かったです。
ですが、その期間に自身が扱うサービスを改めて見つめ直すことができたのが、とても有意義だったと感じています。議論に参加したメンバーはとにかく通常業務が忙しく、サービスの現状やこれからについてゆっくり考える時間は、こんな機会でなければなかなか取れません。だからこそ、あらゆる部署を跨いで20名ものキーマンに参加してもらい、皆でサービスを見つめ直したあのプロセスは、一番実りの多い時間でした。

また、このプロジェクトが始まる前は、他部署の部長が担当サービスについてここまで熱く語っているところを見る機会は、それほどありませんでした。ですが、プロジェクトミーティングでは「こうしていきたいんだ」という熱い話がどんどん出てきたのです。さまざまな意見が出て大変なシーンもありましたが、皆でいい議論ができて嬉しかったです。
ここまで深く話し合うと、もう参加したメンバー全員がSOLTAGEを他人事にはできなくなりましたね。

五十嵐様:たしかに、私たち企画部だけという少人数でプロジェクトを進めていたら、社内に共感者がおらず、今頃つらい思いをしていたと思います。今のような、組織を跨いだムーブメントにはなっていなかったはずです。

 

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ブランドコンセプト策定の流れ

 

寺本様:もう一点、そのような有意義な議論ができたのは、プロジェクトの一番初めに行われた市場調査とお客さまインタビューのおかげだったと思います。初めて、自分たちが提供しているサービスを客観視できました。正直、その結果は、私や経営陣が考えていたこととは乖離があったのです。私はお客さまインタビューにも同席したのですが、お話を伺うなかで、自社サービスなのに外からの見られ方を全然わかっていなかったんだなと気づきましたね。そういった客観的な情報が、その後の議論の軸となりました。

特に印象に残っているのは、SOLTAGEのブランドパーソナリティ(ブランドの性格を表すもの)を決めていたときのことです。2つの方向性があり、意見が分かれました。ひとつは「寄り添う」「安心感のある」「親切」などの温かさがあるイメージです。もう一方は、「高品質」「センスがいい」「頼りになる」というスマートなもの。こちらも、ITインフラを扱ううえでは、捨てがたいイメージでした。

最終的に、パーソナリティは前者で決定しました。この決定の鍵になったのが、まさに市場調査やお客さまインタビューの結果でした。私たちは、お客さまから期待されているのは「技術」「品質」だと考えていたのですが、結果を見ると、それほどスマートなものを望まれているわけではないことがわかったのです。もちろん、品質も見られてはいますが、お客さまが特に期待し、評価してくださっているのは、「寄り添い」「人」など温かさのある要素でした。
インタビューの際にも、弊社のサポートに対して『社員よりもうちのことを考えてくれる』とか、『想いがあり、社内の誰よりもうちの仕事に詳しくなっている』など、嬉しいお言葉をたくさん頂けましたね。

ですので、今回のブランディングでは、「自身の“強み”を伸ばし、期待されている私たちになろう」という結論に至りました。期待されていることを完璧にこなすのも、簡単ではありません。もちろん、なりたい姿になるにも相当な努力が必要です。だったら、期待されていることを極めて、きちんとお客さまにお返ししたいと考えました。

五十嵐様:それぞれが仕事に対して考えや熱意を持っているからこそ、想いだけで話していると議論の決着はつかなかったと思います。明確な根拠になるデータを、最初に取ってもらえてよかったです。

ブランディングを通して、SOLTAGEは我が子のように。自分たちの仕事をさらに好きになれた

── コンセプトがまとまった後、ようやくクリエイティブ制作に入りました。今回、多くの制作物がありましたが、記憶に残っていることはありますか?

五十嵐様:クリエイティブはあまり苦労した覚えがなく、総じて楽しかったです。初期段階からスパッと良い案を出してくださって、プロにお願いすると違うなと感じました。

やはり感性というのは人それぞれで、よいと思うデザインやコピーは違いますよね。だからこそ、ブランドコンセプトを事前に固める意味を感じました。「先進的でかっこいい」という意見が出たとして、「でも、私たちのコンセプトはその方向ではないよね」とすぐに軌道修正できるのです。そのため、あまり苦労せずにクリエイティブ制作を進められました。
 

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SOLTAGE」新ロゴ、新ステートメント

 

SOLTAGE Webサイト

「SOLTAGE」ブランドサイト

 

寺本様:すぐにデザインに入らないことに初めは驚いていましたが、ブランドコンセプトに時間をかけたのは本当に良かったですね。議論がぶれなかったというのもそうですし、議論に参加していない人にロゴを紹介する際にも、ブランドコンセプトから説明をすると正しく意図を捉えていただけます。

やはり、ストーリーを知っているロゴは、愛着がまったく違うです。今までにもサービスのロゴはありましたが、思い入れが違う。これは、私たち企画部だけではありません。議論に参加したメンバーも同様に、愛着をもってロゴを使ってくれている気がします。

───プロジェクトをともに進めるなかで、皆様のSOLTAGEへの想いに変化があったんですね。

寺本様:そうですね。ブランディングを通じて、自分の仕事やブランドを好きになりましたね。これまで、営業担当をしていた頃は、私自身も「特長を訴求しづらい」なんて思うこともありました。ですが、今はSOLTAGEを子どものように感じるというか……愛着が湧いていますね。足りないところすらも可愛く見えてくるほど。

五十嵐様:足りないところを足りないままにしておくのはよくないな、という想いが芽生えますよね。もう他人事にはできないです。

寺本様:部長たちも「SOLTAGEって人に寄り添うブランドだよね?今、それできてる?」と、よく口にしています。日々キーワードを発信してくれているところを見ると、ブランディング前とは異なり、「ブランドを大切に育てよう」「自分たちの言動で汚してはいけない」という意識が浸透しているように感じますね。

バイウィル:実は、弊社がブランドコンサルティングを通して叶えたいことの一つが、「社員の方々が自分たちのブランドを好きになること」です。もちろん、お客さまから愛されることも大切ですが、社員の方々が好きになれるブランドを創るご支援をしたいという価値観が強いので、そう感じていただけていることがとても嬉しいです。ありがとうございます。

他事業部からも「必ず紹介したい」と思われるブランドを目指して

── ブランドとしてはまだまだこれから育てていこうというフェーズですが、今後、SOLTAGEをどのようなブランドにしていきたいですか?

寺本様:自部門はもちろんですが、他事業部の人たちにも愛着をもって営業してもらいたいですね。会社の方針だから嫌々売るというわけではなく、自信をもって勧めてもらえるブランドになりたいです。
また、今回私たちは「ブランディング」という手法を選びましたが、他社より選ばれる存在になるためには、価格や機能など他の要素だけで戦う道もあったと思います。ですが、私たちは事業部門で初めての「ブランディング」を選んだので、それが間違いじゃなかったと証明したいです。

五十嵐様:先日、社内報にSOLTAGEが掲載されたのですが、その際にも「必ず紹介したい、と思われるブランドになりたいです」と書きました。他事業部の社員も「SOLTAGEを持っていきたい!勧めたい!」と思うような、愛されるブランドにしたいですね。

 

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社内に掲示されている「SOLTAGE」のポスター

寺本様:そのためには、まずはSOLTAGEを知ってもらって、想いを理解してもらうことが大切ですよね。先ほどお話したように、ブランディングに携わったメンバーにはすでに明確な変化が起きています。だからこそ、それ以外の社員とは温度差があるはずで、これから進める社内浸透は簡単ではないと思いますし、少し怖さもあります。
ただ、プロジェクトに参加していなかった社員も含めて、「SOLTAGEって最近よく聞くけど何なんだろう?」と、すでに社内では少しざわざわしてきている印象です。社内の至る所に貼っているポスターや、部長陣がよく発信してくれている効果が出ているのかもしれません。ここからますます他事業部の営業メンバーにも愛着を持ってもらえるよう、社内外への浸透活動に取り組んでいきます。

── SOLTAGEがさらに愛されるブランドになるよう、浸透活動も伴走させていただきますのでよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

 

(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)