近年は、世界的に気候変動対策が重要視されるようになり、
地球温暖化の主な原因である「温室効果ガス」の削減に向けて様々な取り組みが進められています。

皆さんは、「カーボンニュートラル」「カーボンオフセット」「カーボンクレジット」などの言葉を知っていますか?

地球温暖化に関する話や、企業の経営計画の中などで、上記の言葉を耳にする場面が増えてきたという方も多いかもしれません。

本ブログでは、これらの単語について、簡単に解説していきます。
 
◾️目次

1.カーボンニュートラルとは 「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」
2.カーボンオフセットとは 「他の場所で実現した削減・吸収量で埋め合わせること」
3.カーボンクレジットとは 「取引される温室効果ガスの削減量・吸収量のこと」
4.カーボンクレジットで、多くの人を巻き込んだ脱炭素活動を実現

1. カーボンニュートラルとは 「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」

【カーボンニュートラルとは?】

大気中には、地表面から放射された熱(赤外線)を吸収する性質を持つ「温室効果ガス」というものが存在しています。
温室効果ガスとして多くの人が思い浮かべるのは、二酸化炭素(CO2)かと思いますが、他にもメタン・フロンなど複数のガスがこれに当てはまります。

そして、この温室効果ガスが増加すると、地球の地表面付近の気温が上がり、地球が温暖化します。

温室効果ガスは、電気・熱の生成時や、森林伐採、食料生産などの人間の活動によって排出されているため、温暖化の進行を止めるためには、人間が生活の仕方を工夫して、温室効果ガスを減らすことが必要です。

そのような中、地球温暖化がこれ以上進行することを防ぐために生まれた考え方が、「カーボンニュートラル」です。

では、カーボンニュートラルとは一体どのような意味なのでしょうか?

カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」です。

温室効果ガスは、火力発電などによって排出される一方で、植林、森林管理などによって吸収も行われています。

こうした温室効果ガスの「排出量」から「吸収量」を引いた値がゼロになった(=排出量が吸収量と同量になった)状態を表す言葉がカーボンニュートラルであり、カーボンニュートラルを目指すということは、「温室効果ガスをできるだけ排出しないようにすること」と「温室効果ガスをできるだけ多く吸収すること」を目指して活動するということになります。

 

240402_カーボンクレジットとはスライド1

 

【多くの国・企業がカーボンニュートラルを目標に設定】

世界の平均気温は、2020年時点で工業化以前(1850~1900年)と比べて、既に1.1℃上昇したことが示されており、このままの状況が続くと、更なる気温上昇が起こると予測されています。 このような気候変動が起こると、今後、豪雨や猛暑などのリスクが高まり、日本においても、農林水産業、水資源、自然生態系、自然災害、健康、産業・経済活動等への影響が出ると考えられています。

このような事態を回避するために、世界で温室効果ガスの削減に向けた目標が設定され、それに向けた取り組みが進められています。

2015年に採択されたパリ協定では、産業革命以降の気温上昇を2℃ないし1.5℃に抑制することが長期目標として掲げられ、現在では、その実現に向けて120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」を目標として掲げています。

日本においても2020年10月に政府によって「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること(=カーボンニュートラル)」を目指すことが宣言されました。

また、こうした流れの中で、多くの企業もカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げています。

例えば、ソニーグループや富士通グループなどは、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標を掲げており、科学的知見と整合した企業の削減目標の設定を支援する国際イニシアチブであるSBTiからの認定も受けています。

【参考】

2. カーボンオフセットとは 「他の場所で実現した削減・吸収量で埋め合わせること」

気候変動対策は世界的に加速しており、多くの企業・団体がカーボンニュートラルの達成に向けた取り組みを求められています。

実際に、投資家がESGの観点を重視する流れは強まっており、多くの企業が、気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)や脱炭素に向けた目標設定(SBTRE100)などに取り組んでいます。

また、日本においては、温対法・省エネ法といった法律によって、一定の要件に当てはまる事業者に対して、温室効果ガスの排出量やエネルギーの使用状況を報告する義務が課されるようになっています。

このような状況の中、脱炭素活動の一環として、「カーボンオフセット」を実施する企業も増えてきています。

カーボンオフセットとは、「他の場所で行われた温室効果ガスの排出削減・吸収量を購入することなどによって、温室効果ガスの排出量を埋め合わせること」です。

多くの企業・団体が、カーボンニュートラルに向けた目標を設定し、事業の在り方を工夫するなどして、排出量を削減するための取り組みを行っていますが、どうしても自社・自団体で行う排出削減の取り組みでは達成しきれない部分が出てくる場合もあります。

そのような場合には、排出量に見合った温室効果ガスの削減・吸収活動に投資することなどによって、排出量のオフセット(埋め合わせること)ができると考えられています。

3. カーボンクレジットとは 「取引される温室効果ガスの削減量・吸収量のこと」

そして、「カーボンオフセット」と関連して使われることの多い単語に「カーボンクレジット」があります。

カーボンクレジットとは「温室効果ガスの削減・吸収活動によって生じた削減量・吸収量を販売・購入することができる仕組み」のことです。

温室効果ガスの削減量・吸収量がクレジットとして認証されると、売買取引が可能になります。

日本においては、2013年度から、環境省、経済産業省、農林水産省によって「J-クレジット制度」というカーボンクレジットの取引制度が運営されています。

カーボンクレジットの購入者は、購入した分の排出量・削減量を、自社・自団体の排出量の埋め合わせ(カーボンオフセット)に使うことができます。

また、カーボンクレジットの創出者(温室効果ガスの削減・吸収に取り組んだ人)は、クレジットを販売することで、脱炭素に貢献しているというアピールができるだけでなく、売却益を活用して、更なる脱炭素貢献活動を行うこともできるようになります。

 

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4. カーボンクレジットで、多くの人を巻き込んだ脱炭素活動を実現

このようなカーボンクレジットの取引制度が活発に利用されるようになると、クレジットの購入者と創出者の中で資金循環が生まれ、目標設定や報告義務を課されている大手企業だけでなく、より多くの人がカーボンニュートラルに向けた取り組みを行いやすくなると考えられます。

カーボンニュートラルの達成に向けて、まず個人・企業・団体が自身の排出量削減に取り組むことはもちろん大切ですが、それに加えて、カーボンクレジットが活用されることによって、排出削減活動に取り組むための経済的な後押しが生まれることとなり、より多くの人を巻き込んだ大規模な脱炭素活動が促進されるのではないかと期待されています。

 

【参考文献】