2025年5月28日、参議院本会議において、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」の改正法が可決・成立しました(以下、「改正GX推進法」)。
これにより、2050年カーボンニュートラル達成に向けた日本の取組が新たなフェーズに入ります。
今回は、2023年に成立して施行されているGX推進法が改正に至った背景やポイントについて、バイウィル カーボンニュートラル総研の森英哲が解説します。
そもそも、「GX」や「GX推進法」とは?
GXとは、2050年カーボンニュートラル達成や、それに向けた温室効果ガス排出削減の目標達成を経済成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上を両立させる経済社会システム全体の変革です。
このGXを実現するために、補助金や税制優遇等の企業支援策や排出量取引制度等の仕組みを整備したのがGX推進法です。
「GX経済移行債の発行」や「成長型カーボンプライシングの導入」、「GX推進機構の設立」が主な柱ですが、「同法は法的な強制力に乏しく、企業の自主性に依存しているのでは」との声も聞かれます。
今回の改正における主なポイント
日本の排出量取引制度は3段階での発展を予定しており、今回の改正は第2フェーズのルールを制度化したもので(下表ご参照)、主な変更は「任意参加から義務化へ」と「実効性の強化」の2点です。
改正前の同法では、GXリーグという枠組みの中で、企業の自主的な参加を前提に試行的な排出量取引が実施されてきましたが、具体的な義務や対象事業者の範囲、罰則規定等は明記されていませんでした。
今回の改正後は、CO2直接排出量が一定規模(10万トン)以上の事業者は業種を問わず参加が義務付けられ、排出枠の割り当てや取引市場の整備、未履行時の負担金措置などの規定で実効性が強化されます。
今後の展望
今回の変更を踏まえ、改正GX推進法の履行は日本におけるGXの実効性を高め、GX分野における日本の地位向上や脱炭素技術の創出へと繋がることが期待されます。
一方で、同法については具体的な制度設計や運用に関する詳細ルールがまだ決まっておらず、順次整備されていく段階です。
読者の皆さまにおかれましては、まずは今回の改正内容を確認し、今後の政府発表やGX推進機構の動向等に注目しながら、自社におけるGX取組の加速を進めてはいかがでしょうか。