11月10日から始まったCOP30では、国際社会の関心が「目標」から「実行」へと移行しています。その「実行」の主体として「自治体」が注目されており、その象徴がCOP28で発足した「CHAMP」です。このCHAMPとは何か、そして自治体が注目される理由についてカーボンニュートラル総研のS.TAKANOが考察します。

なお、以下、「COP」は全て、「UNFCCC-COP」の略です。

CHAMPとは:国と自治体を接続する初の国際枠組み

CHAMP(Coalition for High Ambition Multi-level Partnerships)は、2023年のCOP28(ドバイ)で発足した、「国と自治体・都市を公式に接続する」ための国際枠組みです。現在までに70カ国超が参加しています(日本も参加)。

CHAMPの新しい点は、自治体を国の気候対策の「公式パートナー」と位置づけた点です。自治体レベルの緩和・適応策を、国のNDC(削減目標)の実行プロセスに公式に組み込むような仕組みの構築を、参加国政府に求めています。

なぜCOP28以降、自治体が注目されるのか

この流れには二つの要因があります。

第一に、「自治体も、NDC実行の主体である」という点です。エネルギー、運輸、建築物など主要排出源の対策は、地域の条例や都市計画といった自治体の実行力が関係します。

第二に、「気候リスクの最前線は地域である」という現実です。豪雨や猛暑などへの具体的な適応策(防災・減災)を講じるのは自治体です。

この流れを決定づけるのが、COP30ホスト国ブラジルの存在です。ブラジルはCHAMPの共同議長国(ドイツと共に)に就任しており、自治体や先住民との連携(多層ガバナンス)をCOP30の主要テーマに掲げています。

COP30 で打ち出された CHAMP 関連の主な動き

  • 共同議長国の就任:ブラジルとドイツが共同議長に就任し、C40(世界大都市気候先導グループ)などが運営を支援する体制が整い、多層統治の枠組みが「制度的に」強化
  • 実装計画「Multilevel Action PAS(Plan to Accelerate Solutions)」の発表 :実装を加速するため、「多層ガバナンス・ソリューション加速計画(Multilevel Action PAS)」が発表。「2028年までに100の国家気候計画(NDC)に多層的統治構造を組み込む」という具体的な目標が提示
  • 欧州連合(EU)の参加:EUがCHAMPへの正式参加を表明し、国と自治体が協働する枠組みがグローバルに強化
  • 自治体側からの「制度化」要求:自治体・地域政府の連合体(LGMA)からは、自治体をUNFCCC プロセスにおける「不可欠なパートナー」として正式に認めるよう強く要請するなど、気候交渉の実施主体として明確に位置づけるよう求める、踏み込んだ要求が提示

おわりに:自治体も脱炭素の主役になる時代へ

COP28からCOP30への流れは、脱炭素の主戦場が「地域」にも移行してきたことを示しています。目標を掲げる国と、それを実装する自治体——両者が真に並走する未来に向け、自治体の力が今、問われています。