概要

電動・小型・一人乗りのマイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP(ループ)」を提供する、株式会社Luup様。自社充電拠点の電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えるなど、サービスの環境負荷を減らすための取り組みを進めておられます。今回、バイウィルがカーボンクレジットの調達をご支援させていただいたことで、LUUPのライドはCO2排出量が実質ゼロとなりました。

詳細は、以下のプレスリリースにてご確認いただけます。
https://luup.sc/news/2023-09-08-co2-free/

ご提供サービス

J-クレジット(再エネ電力由来)の調達・販売

電動・小型・一人乗りのマイクロモビリティで、日本に次世代の移動インフラをつくる

── 改めて、Luup様、および「LUUP」というサービスのご紹介をお願いいたします。

向山様:最近、我々のモビリティが街を走っている数も増え、「LUUP」というサービスや「株式会社Luup」という会社をご認識いただいている方は、有り難いことに少しずつ増えてきているように感じておりますが、やはり「電動キックボードの会社」というイメージを持っている方も少なくありません。
ですが、我々自身は「電動キックボードを普及させたい会社」だとは思っておらず、会社のミッションとしては、”街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”ということを掲げています。

向山 哲史様

取締役CFO 兼 経営企画部長 向山 哲史様

 

日本、特に都市部においては、これまで鉄道を中心に街が形作られてきたという側面が強いです。そのため、駅前の不動産の価値は高く、20分30分と離れるほどに価値が下がっていくという現在の都市構造が生まれました。ですが、これは未来永劫、不変であるべきではないと思うのです。

たまたま日本では、高度経済成長期に大量輸送を前提とした鉄道という交通手段が整備されてきたので、これを骨組みにして街が作られてきました。ですが、技術革新を経て「マイクロモビリティ」と呼ばれる乗り物が生まれたことにより、必ずしも大量輸送を前提としなくても、一人ひとりが自由に好きなところに行けるという世界がこれまでよりも広がりやすくなりました。それにより、必然的に日本の都市構造も変わっていくべきだと我々は考えています。

弊社は現在、このマイクロモビリティのなかでも「電動キックボード」と「電動アシスト自転車」を取り上げて事業にしていますが、将来的にはご年配の方がお一人でも乗っていただきやすい三~四輪の躯体も含めた「電動・小型・一人乗りのマイクロモビリティ」で、日本に次世代の移動インフラを作っていくことを目指しています。

未来のマイクロモビリティイメージ

未来のマイクロモビリティイメージ
ユーザーの年齢に応じて機能を制御するなどし、誰もが乗ることのできるユニバーサルな車両の導入を目指している


マイクロモビリティがもつ可能性は、これだけではありません。「環境負荷の小さい交通手段である」という点は、これからの時代を支える大きな魅力だと考えます。
たとえば、近所のコンビニへ行くために自動車に乗らなければいけないという地域の方もいらっしゃるかと思います。ですが我々は、その距離の移動には自動車を使わなくてもよいようにできたらと考えています。なぜなら、自動車は1トンの鉄の塊です。電気で走ったとしてもガソリンで走ったとしても、それだけ重いものを動かすには大きなエネルギーを必要とするわけです。これは、環境への配慮が一層求められるこれからの世の中において、見過ごすことはできません。

一方、我々が提供するマイクロモビリティは、非常に小型です。さらに、電気で動くので、化石燃料で動かす場合と比べて圧倒的に環境負荷が低くなります。事実として、マイクロモビリティが人ひとりを1km移動させるのに必要なエネルギー消費量は、自動車の約40分の1と試算できます。
つまり、マイクロモビリティがもっと利用されるようになれば、人々の移動に伴うエネルギー利用量を格段に減らすことができるのです。

したがって、人々の移動をより自由に、便利にするだけでなく、環境にも優しいという点で、次世代の交通インフラとして発展させていきたいと考えております。

── すでに利用されている方は、LUUPのどのようなところに魅力を感じておられるのでしょうか?

向山様:現時点では、やはり「便利である」という理由がもっとも多いと思いますね。私も含め、弊社の社員もLUUPを愛用しているのですが、たとえばお昼ご飯を食べにいく際などにも、つい乗ってしまいます。弊社オフィスは少しばかり駅から離れているため、「5分10分歩くならLUUPに乗っていこうか」と選びがちです。ご利用いただいている皆様も、同じようなお考えではないかと思います。

先ほど、環境に優しい乗り物だとお伝えしましたが、「環境によいから」という理由でサービスやプロダクトを選んでいる方は、日本ではまだそう多くないのではないか、というのが正直なところです。ですが、中長期的な流れとしては、たとえば「便利」「安い」などと同じ判断軸のひとつとして、「環境に優しい」「サステナブルである」という視点が入ってくることは間違いないことだと考えています。

実際に、アメリカやヨーロッパではすでに「サステナビリティ」が判断軸の一つとして確立されていますし、海外の電動キックボードのシェアサービスにおいては、「エコフレンドリーな交通手段である」ということを最大の訴求ポイントとして謳っている会社がいくつもあります。
我々も、そのような流れを先取りして、今から準備を進めているところです。

LUUP

 

ユーザーにもポートオーナーにも寄り添う、「環境に優しい交通手段」へ

── そもそも環境に優しい交通手段である電動モビリティですが、今ではLUUPのライドはすべて「実質CO2フリー」になりましたよね。その一助として、弊社もカーボンクレジットの調達支援をさせていただきましたが、どのようなお考えでCO2排出量ゼロを目指されたのですか?

向山様:我々は上場もしておりませんし、義務的にCO2排出量をゼロにしなくてはいけないというわけではありません。制度面や義務感からやっているというよりも、環境への意識が高いユーザーの方がこれから増えていくだろうなかで、そういった方に寄り添えるような、選んでいただけるサービスにしたいという想いがありました。

一方、ユーザーの方だけではなく、我々の事業を支えてくださるポート(LUUPの貸出・返却場所)のオーナー様についても同様です。ポートオーナー様の多くは法人ですが、今の日本では、一人ひとりの消費者よりも法人のほうが、ESG経営やSDGsへの対応という形で環境への意識が高まっていると感じます。実際に、「環境に優しいサステナブルな交通手段」としてのLUUPに価値を感じて、ご賛同いただける法人様は非常に多いです。

LUUPのポートを設置いただいているのは、オフィスビル、マンション、ホテル、コンビニエンスストアなど多岐にわたりますが、どの業界でも、ポートを提供することがサステナブルな社会の構築に繋がるとしてご協力いただいている法人様は少なくありません。
つまり、「環境への取り組みを進めたい」という企業様に寄り添えるサービスであればあるほど、ポート数はさらに増やせると思います。そして、それはさらにLUUPが便利になるという意味でもあり、まだ環境意識がそれほど高まっていない方も含めて、ご利用いただけるユーザーの皆様にメリットを還元できます。


このような考えから、可能な限りの環境負荷を減らすべく、弊社がもつモビリティの充電拠点に関してはすべての電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えました。ですが、自社拠点以外の電力については、切り替えてくださいと一方的にお伝えするわけにもいかず、どうすべきか悩むなかで「カーボンクレジットでのオフセット」という方法にたどり着きました。

── カーボンクレジットを活用されるにあたり、Luup様は三井住友銀行様にご相談され、その結果として三井住友銀行様と連携協定を結ぶバイウィルがご支援させていただくことになりました。銀行様にご相談されたのには、どのような経緯があったのでしょうか?

向山様:当初、カーボンクレジットを活用したいと思っても、まず何から始めればいいのかわからないという状態でした。「J-クレジット」というものがあるのは知っているけれども、自分たちでマーケットに行って購入するようなものなのか、はたまたバイウィルさんのような仲介してくれる会社があるのかということも含めて、何もわからなかったのです。

そんな折、ファイナンスの面でお世話になっている三井住友銀行様とお話をするなかで、バイウィルさんをご紹介いただきました。明確なご相談を持ちかけたというよりは、周辺のお話をしているなかでその話題になったという流れではありましたが、そもそもどこに相談していいのかもわからない状況でしたので、いつもお世話になっている銀行様にご紹介いただけるというのは、心強かったですね。

 

ご支援内容と3社の関係

今回のご支援内容と3社の関係

── ありがとうございます。最後に、実質CO2フリーへの転換も踏まえ、今後の展望などお聞かせいただけますか。

向山様:今回、LUUPのライドが実質的なCO2フリーになったことにより、人々が既存の交通手段からLUUPに乗り換えることで削減されるCO2の排出量は、すでに月間50トン(*1)以上に達していると試算しています。

ライド数は今後もさらに拡大していくと想定していますので、将来的にはLUUPがあることで数百トン以上というCO2の削減に貢献できることが見えています。とはいえ、世の中に排出されているCO2量から考えるとまだまだ小さい数字ではあるのですが、排出量の多くを占める運輸セクターに関わる者としては、電動マイクロモビリティを広めることで、少しでも社会全体のCO2排出量を減らすことに貢献できたらと考えています。
そのために、まずはLUUPが「便利なだけでなく環境にも優しい交通手段である」と知っていただくことをひとつの目標として、引き続き努力していきます。

そして、電動マイクロモビリティを広めるため、ポート数の拡大には引き続き力を入れていきます。先ほども申し上げたように、「環境によいこと」を判断軸のひとつとしてお持ちで、環境のために行動しなくてはならないと急がれているのは、現時点ではやはりポートオーナー様のほうが多いです。ですので、ライドが実質CO2フリーとなったことを糸口にして、賛同してくださるポートオーナー様をさらに増やしていければと考えています。

ユーザーやライド数の増加にあわせて「環境に優しい交通手段である」ということを繰り返しお伝えすることで、社会的な環境意識の高まりにお応えできるだけでなく、意識の変化そのものもけん引できるのではないかと考えています。

そのための取り組みとして、2023年10月、ライド終了後のLUUPアプリにCO2排出削減量が表示されるよう、機能追加もいたしました(*2)

アプリでのCO2排出削減量表示イメージ

アプリでのCO2排出削減量表示イメージ
出典:「LUUPアプリにCO2排出削減量が表示されるようになりました」(https://luup.sc/news/2023-10-11-co2-app/

 

LUUPが環境に優しい交通手段であればあるほど、ご協力いただくポートオーナー様に還元できるメリットが増えます。そうしてポート数が増やせれば、ユーザーの皆様にとっては利便性が向上しますし、環境意識の高まりにも応えられる貴重な存在になれるはずです。そして、我々にとっては、これらの流れを加速させることで、ミッションの実現にますます近づくことができるのです。

このように、ライドが実質CO2フリーになったことにより、全方位に対するメリットがさらに強化できたと思います。「便利なだけでなく環境に優しい交通手段」というLUUPを知っていただき、ぜひ皆様に使っていただけたら嬉しいです。

── 次世代のインフラを創りながら、環境意識の高まりにも寄り添い、リードする。そのようなLuup様のお取組みに少しでもご協力できたこと、光栄です。ありがとうございました。



(*1) LUUPによる移動が、LUUPが無ければ一定の割合で既存の交通手段によって行われていたと仮定したときに排出されるCO2の量(Luup試算)を示しています。

(*2) 新機能の詳細については、以下のプレスリリースをご覧ください。
「LUUPアプリにCO2排出削減量が表示されるようになりました」(https://luup.sc/news/2023-10-11-co2-app/

 

(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)