前回は、社外向け周年施策の前提となる「ブランドの提供価値」についてお伝えしました。今回は、そのブランド価値をどのように顧客や消費者に伝えていくのかをご説明します。

メディアの4つのタイプ

消費者にブランド価値を伝えていくための「メディア」は、その特性から4つのタイプに整理されます。

・Paid media(ペイドメディア)
企業が「購入する」メディアで、CMや新聞といったマスメディア広告、Web広告や屋外広告などがあります。

・Earned media(アーンドメディア)
企業が「獲得する」メディアで、テレビや新聞、Web等のニュースや特集記事がそれにあたります。広告ではなく、
プレスリリースを通じた取材などの形でそれが実現されます。

・Shared media(シェアードメディア)
消費者によって「共有される」メディアで、消費者が作り出すコンテンツに掲出されます。SNSや口コミサイトが
これに当たります。

・Owned media(オウンドメディア)
企業が「所有する」メディアで、自社のWebサイトやSNSアカウントなど、自社が運営するメディアです。

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これら4つは合わせてPESOメディアといわれます。このうち、企業がコントロールできるのは「ペイドメディア」と「オウンドメディア」で、「アーンドメディア」と「シェアードメディア」はコントロールすることができません。したがって、周年事業では、周年記念広告や特設サイトを作るなど、コントロール可能な「ペイドメディア」や「オウンドメディア」を活用したものが多くみられますが、効果や範囲は限定的になってしまいます。より多くの人にブランド価値を伝えるには、“情報波及”を起こして、「アーンドメディア」と「シェアードメディア」を機能させることが重要です。その情報波及に必要なのが、PR戦略です。

周年を機にブランド価値を世の中に広める「PR戦略」

広告は、情報を伝えたい主体者が直接的に相手に伝えるものですが、PRは第三者メディアを通して消費者・顧客に伝えることです。そのため、消費者にとってはPRの方が情報の信頼性が高くなります。しかし、メディアはブランドが伝えたいことをそのまま伝えてくれることはありません。ブランド価値などブランドが伝えたいこと(ブランドイン)を、メディアが伝えたいこと(メディアアウト)に変換する必要があります。それは、下記の4つの観点で「ブランド」と「世の中」を接続することで可能となります。

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①社会性
メディアが広く社会に知らせるべきと考えるかという視点です。環境・健康・政治などの社会問題との関連がこれに当たります。ブランドのミッション・ビジョン・バリューにはどのような社会的価値があるかを考えるのがポイントです。

②時流・季節性
“いま”消費者が知りたい情報であるかという視点です。ブランドのベネフィットを“いま”必要とする理由がこれにつながります。

③意外性
驚きや発見を与えられるかです。業界や市場における、従来にない新しいベネフィットやエビデンスがこれに当たります。

④実利性
消費者にとっての利益を与えられる情報であるかということです。具体的には、おトク情報などです。明確に競合を上回るベネフィットやエビデンスです。

これら4つが、メディアアウト=ニュースバリューを創るための観点です。以上の4つの観点を用いて、「ブランド」と「世の中」を接続する「周年+αのニュースバリュー」を創り、それをコントロール可能な「ペイドメディア」や「オウンドメディア」を使って発信していくことが、ニュースに取り上げてもらうことにつながります。

さらに、近年ではメディアを通じてだけではなく、個人SNSを通じたブランド価値の伝達が起こりやすい環境になっています。それには、先ほどのメディアアウトの視点に加えて、個人の感情トリガーの視点が有効です。SNSでシェアしたくなるような感動や驚き、笑い、怒りなどを刺激することが拡散につながります。拡散された情報は、その反響によって社内にも効果をもたらします。

社外発信による社内への効果

例えば、皆さんの会社(ブランド)がTVCMを打つ、ニュース番組で大きく取り上げられる、のようなことを想像してみてください。それを見た、皆さんのご家族・ご友人などから、「○○さんの会社、素敵なCMやってるね!」とか「ニュースで見たよ!」などの反応があったら、どのように感じるでしょうか?勿論その内容にもよりますが、自社に対して少し自信や誇りを持てたりする感覚が産まれるのではないでしょうか。

ブランド価値を社外に発信することで、まずその発信内容に興味を持ったり、さらに家族や友人、世間一般からの評価を実感したりすることによって、エンゲージメントの向上が期待できます。これがミラー効果です。この効果によって、社内施策だけでは及ばないところを効果的に補完することができます。

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ここまで、メディアの特性を活かしてより効果的にブランド価値を伝えていくための考え方をご説明しました。ブランド価値の伝え方は、周年だからといって極端に何か変わるわけではありませんので、周年以外の様々な場面においてもこれらの考え方を活用頂けますと幸いです。次回は、周年企画の進行・運用のプロセスについてお伝えします。

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周年ブランディングの進め方 ⑤進行・運用プロセスのポイント