近年、企業のウェブサイトにおいて「サステナビリティ」のページは欠かせない存在となりました。

しかし、いざ担当になると「何から手をつければいいのかわからない」「とりあえず他社を真似てみたが、これでいいのか不安」という声を多く耳にします。

本記事では、サステナビリティサイトの基礎知識からスタートし、投資家だけでなく顧客や生活者の心を動かす「自社らしい」サイト作りの実践ノウハウまでを、一気通貫で解説します。

そもそもサステナビリティサイトとは?

まずは基本的な位置づけと目的から整理しましょう。

企業の「未来への意志」を示す場所

「サステナビリティ(Sustainability)」とは「持続可能性」を意味し、自然環境・経済・健康など、社会全体の持続的な発展を目指す考え方です。企業にとってのサステナビリティサイトとは、単に環境活動の記録を載せる場所ではありません。事業活動を通じて、「自社がどのような未来を描いているのか」「社会に対してどのような責任を果たそうとしているのか」という意志を、ステークホルダー(関係者)に向けて発信する重要な拠点です。

なぜ専用のページが必要なのか?

かつてはCSR(企業の社会的責任)の一環として語られることが多かったテーマですが、現在は経営の中核に関わる重要事項となっています。投資家が投資判断を行うための情報源として重要であることはもちろん、消費者や就職活動中の学生にとっても「この会社は信頼できるか」「将来性があるか」を判断する重要な材料となっています。

サステナビリティサイトの基本的な構成要素

一般的なサステナビリティサイトは、主に以下のコンテンツで構成されています。これらは、読み手が知りたい情報の「基本セット」と言えます。
※全体を俯瞰・整理するための参考情報であり、あらゆる目的やシーンを網羅するものではありません

サステナビリティサイトの基本的な構成要素

① トップメッセージ
経営トップ(社長など)が、サステナビリティに対するコミットメント(約束・決意)を表明します。
② サステナビリティ方針
企業として、どのような指針や価値観に基づいて活動するのかという「基本ルール」を示します。
③ マテリアリティ(重点課題)
自社が優先的に解決すべき社会課題(気候変動、人権、品質など)を特定し、開示します。
④ 具体的な取り組み
マテリアリティに基づいた実際のアクションを、「環境(E)」「社会(S)」「ガバナンス(G)」などのカテゴリ別に紹介します。
⑤ レポート・データ開示
CO2排出量や女性管理職比率などの数値データや、詳細な活動報告書(PDF等)を掲載し、透明性を担保します。
⑥ 外部評価・認証
第三者機関からの評価や受賞歴を掲載し、活動の客観的な信頼性を示します。

求められる変化:投資家向け「開示」から、ファンを作る「ブランディング」へ

これまでのサステナビリティサイトは、主に「投資家」や「評価機関」に向けて作られる傾向にありました。そのため、正確さや網羅性が最優先され、専門用語が多く難解な内容になりがちでした。

しかし、今、その役割は大きく変わりつつあります。担当者が持つべき最大の意識変革は、ターゲットを「投資家・評価機関」から「全ステークホルダー」へ広げることです。

投資家だけを見ていては「機会損失」になる

投資家向けの開示は引き続き重要ですが、それだけでは現代のビジネス環境において不十分です。ターゲットを顧客、取引先、従業員、採用候補者へと広げることで、以下のような多大なメリット(企業価値向上)が生まれます。

  • 顧客・生活者に対して:
    • 特にミレニアル世代やZ世代は社会課題に敏感です。環境配慮がないと見なされれば選択肢から外されますが、逆に共感を得られれば強力な「ファン(好意の醸成)」になります。
  • 取引先に対して:
    • サプライチェーン全体でのCO2削減が求められる中、選ばれるサプライヤーになるための「競争優位性」となります。
  • 従業員に対して:
    • 自社の社会貢献性を理解することで、仕事への誇りやロイヤリティが高まります。
  • 採用候補者に対して:
    • 企業のスタンスへの共感により、ミスマッチのない優秀な人材の確保につながります。

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「義務感」からの脱却

従来のサイトに見られる「難解で複雑な資料の羅列」は、「リスク回避のための義務意識」から生まれています。

これからの担当者に求められるのは、「専門知識がない人にも興味を持ってもらう」という意志です。専門性が高い情報はPDFレポートにまとめ、Webサイト上では一般の読者が「自分に関係がある」と感じられるよう、情報を「翻訳」して伝えるなどの工夫が不可欠です。

幅広い発信が「企業ブランディング」につながる

このようにターゲットを広げることは、単に読者を増やすだけではありません。 顧客、取引先、従業員といったあらゆるステークホルダーに対し、「この会社は社会に対して誠実である」「応援する価値がある」というポジティブなイメージを醸成することになります。 つまり、サステナビリティサイトでの発信を強化することは、企業ブランドの価値そのものを高めるコーポレートブランディング活動に他ならないのです 。

「同質化」の罠を抜け出し、「自社らしさ」で差別化する

多くの企業がサステナビリティに取り組む中で、どうすれば自社サイトを際立たせ、ブランド価値につなげることができるのでしょうか。

ブランドイメージの方程式

そもそも、ブランドイメージは以下の掛け算で決まると言われています 。

ブランドイメージ = 「接触頻度」 × 「インパクト」

  • 接触頻度: そもそも見られなければ始まりません(サイトへの流入数を増やす)。
  • インパクト: 見たときに「どれだけ印象に残るか」「他社との違いを感じるか」です。

サステナビリティサイトでブランド価値を高めるためには、多くの人に見てもらう機会を作り(接触頻度)、かつ、訪れた人の記憶に残る(インパクト)必要があります。

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「同質化」の罠

ここで問題になるのが、この「インパクト」の弱さ、つまり「同質化」です。 脱炭素や人権尊重といったサステナビリティのアクション(取り組み内容)自体は、どの企業も似通ったものになりがちです。 「CO2を削減しました」「ダイバーシティを推進しています」という事実(ファクト)を並べるだけでは、他社との違いが出せず、誰の記憶にも残らない「インパクトゼロ」のサイトになってしまいます 。

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「自社らしさ」が最強の武器になる

アクション自体で差がつかないなら、「自社らしさ」で差をつけるしかありません。 読み手の感情を動かすのは、数値データではなく、その企業の「世界観」「取り組みへの姿勢」です 。

「自社らしさ」を出すためのポイントは以下の4点です。

① 企業としてのDNA(理念・パーパス)

全社のパーパスやビジョンと、サステナビリティ活動がどうつながっているかを伝えます。「社会的要請・義務だから」ではなく「理念に基づいているから」やるのだという一本の筋を通します。

そして、単に方針を示すのではなく、「未来視点で成し遂げたい世界観」を伝えます。

全社のパーパス(存在意義)やビジョン(目指す姿)を実現するために、このサステナビリティ活動が不可欠であるという「接続関係」を明示します。

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② 事業特性を踏まえた「必然性」の伝達

「なぜ『この事業を行う当社』がやるのか」という必然性を伝えます。本業と無関係な活動ではなく、事業の特性を活かした活動であることを示します 。

例えば、アパレル企業なら「衣料廃棄ロス」、物流企業なら「配送効率化によるCO2削減」など、参入領域の課題と自社事業の特性がリンクしていることを示します。これにより、「本業の責任としてやっている」「事業活動を通じた社会的価値の創出」という説得力が生まれます。

③ 読み手を振り向かせるための翻訳

専門用語をそのまま載せるのではなく、「あなたの生活にどう関係するのか」という視点で、ターゲットの関心事に言葉を変換(翻訳)して伝えます。

例)
顧客へ: 「この商品を買うことが、未来の環境を守る(=実利性・貢献性)」
採用候補者へ: 「この会社で働くことが、社会貢献になる(=将来性・働きがい)」

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④ ブランドパーソナリティ(トーン&マナー)

ここが非常に重要です。「ブランドパーソナリティ」とは、企業やブランドの人格・性格のことです。 サステナビリティサイトとなると、企業の個性に関わらず、安易に「緑色」や「森の写真」「若葉のイラスト」などを使い、画一的な「自然派」トーンにしてしまうケースが散見されます 。

しかし、もし貴社のブランドイメージが「都会的で洗練されている」であれば、サステナビリティサイトもそのトーンに合わせるべきです。逆に「親しみやすく元気」なら、そのようなデザインにするべきです 。 既存のブランドイメージ(トーン&マナー)を守り、サステナビリティサイトも「同じ人格」に見えるようにすることで、他社との差別化(インパクト)が生まれ、ファン化を促進します 。

コンテンツ別・具体的な作成ポイント

ここからは、サイトを構成する主要コンテンツについて、「ありがちな失敗例」と「理想的な成功例」を対比しながら解説します。

① トップメッセージ

経営層のコミットメントを伝える最重要パートです。

  • × ありがちな例: 形式的な挨拶文、抽象的な言葉の羅列、どこかで見たようなコピペ感。
  • ◎ 理想的な例: トップ個人の「想い(ナラティブ)」に踏み込む。「なぜ私がこの課題に力を入れるのか」を自身の言葉で熱く語り、読み手の感情を動かす。動画やブログ形式(note等)での発信も有効。

② サステナビリティ方針

企業の基本姿勢を示します。

  • × ありがちな例: どの企業でも言える総花的な言葉。ESGの枠組みに当てはめただけで、独自の温度感が伝わらない。
  • ◎ 理想的な例: 自社だからこそ言える「独自の視点」がある。専門用語を使わず、自社の企業文化や価値観に合った「自分たちの言葉」で語られている。

③ マテリアリティ(重要課題)

優先的に解決する課題を示します。

  • × ありがちな例: 課題リストと目標数値の羅列のみ。「なぜそれが重要か」の説明不足。
  • ◎ 理想的な例: 特定に至った「プロセス」と、ビジョン実現に向けた「必然性」が開示されている。デザインに事業関連のモチーフを使うなど、視覚的な納得感もある。

④ 具体的な取り組み

実際のアクション紹介です。

  • × ありがちな例: ESGの分類が形式的で、個別の活動がバラバラに掲載されている。全体像が見えない。
  • ◎ 理想的な例: 各活動が企業ビジョンとどう連動しているか、ストーリーとして繋がっている。現場の「熱量」が感じられる写真や文章で構成されている。

⑤ レポート・データ開示

透明性と信頼性を担保します。

  • × ありがちな例: 膨大なデータをWeb上にベタ打ち、または統合報告書へのリンクのみ。
  • ◎ 理想的な例: Web上では主要な成果をグラフや図(インフォグラフィック)で分かりやすく可視化し、詳細はPDFレポートへ誘導する。ビジョンの進捗としての数字であることを示す。

⑥ 外部評価・認証

第三者からのお墨付きです。

  • × ありがちな例: 認証バッジやロゴをただ並べただけ。
  • ◎ 理想的な例: 「どこから」「何を」評価されたのかを明記する。単なる自慢ではなく、その評価が事業の信頼性にどう繋がるかを語る。

⑦ ステークホルダーとの対話

独りよがりにならないための対話記録です。

  • × ありがちな例: 一方的に意見を聞いているだけのシャンシャン総会的な記事。フォーマルすぎて距離がある。
  • ◎ 理想的な例: 現場の最前線(社員、地域住民、取引先)での対話を掲載。本音や課題感も含めた「人間味」のあるやり取りを紹介し、リアリティを持たせる。

【補足】導線と更新

見てもらうための工夫です。

  • 導線: 階層深く(TOPから3クリック以上)に隠さない。TOPページのファーストビューや、採用ページ・商品ページからもアクセスできるようにする。
  • 更新: 「一度作って終わり」にしない。お知らせ欄を設け、日々の活動をタイムリーに発信して「企業が動いているライブ感」を演出する。

まとめ:サステナビリティを「ブランド価値」に変えるために

サステナビリティサイトは、もはや義務を果たすためだけの場所ではありません。

投資家等への訴求に留めず、自社に対する好意を醸成し「ブランド価値を高めるツール」として活用すべきです。

最後に、これからのサステナビリティサイト制作における重要なポイントを総括します 。

  • ターゲットの拡張: 投資家だけでなく、顧客や従業員など幅広いステークホルダーの興味喚起を図る。

  • 自社らしさの追求: 具体的な取り組み自体は他社と似通うからこそ、「自社の姿勢(スタンス)」と「ブランドパーソナリティ」を踏まえた見せ方で差別化し、インパクトを高める。

  • 相手に合わせた翻訳: 専門用語を並べるのではなく、読み手の関心事に言葉を変換して伝える。

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難しく考える必要はありません。まずは自社の「パーパス」や「事業の特性」に立ち返り、それを飾らない「自分たちの言葉」で翻訳することから始めてみてください。

 

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