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【総研ブログ】価格転嫁の先にあるもの― 価格転嫁率が映すGXの課題 ―

S.TAKANO
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中小企業庁が公表した価格交渉促進月間フォローアップ調査(20259月実施)では、価格転嫁率は53.5%と報告されています。コストが上昇した受注企業のうち、約半分はその上昇分を取引価格に反映できていない状況です。

この数字自体は広く報じられましたが、同調査にはあまり注目されていない重要なデータが含まれています。発注企業の業種別・受注企業の業種別という二つの角度から価格転嫁率を集計したデータです。そこからは、価格転嫁がサプライチェーン上で連動している姿が見えてきます。

本稿では、この連動を読み解き、自社の調達条件がサプライチェーン全体のGX投資余力をどう左右しているのかを整理します。 

53.5%が映しているもの

価格転嫁率は、コストが上昇した受注企業がその上昇分をどれだけ取引価格に反映できたかを示す指標です。53.5%という数字は、コスト上昇分の約半分しか取引価格に反映できていない現実を示しています。

ただし、この数字が映しているのは単に、「転嫁できていない」という事実だけではありません。同調査では、同じ価格転嫁率を発注企業の業種別と受注企業の業種別の両面から集計しています。53.5%の裏には、業種ごとの価格転嫁の連動が隠れています。

価格転嫁に応じている業種は、自分たちも価格転嫁されている

業種別のデータを見てみます。

化学業界は、発注企業としての価格転嫁率が業種別1位(66.7%)です。そして受注企業としての価格転嫁率も同じく1位(64.5%)です。一方、トラック運送業は、発注企業として30位(34.7%)、受注企業として27位(36.5%)です。

価格転嫁に応じている業種は、自分たちも価格転嫁される傾向にあります。一方、応じていない業種は、自分たちも価格転嫁されていない傾向にあります。

当然、この連動の要因は一つではないといえます。業種ごとの収益構造や市場の寡占度など、複数の要素が絡み合っていると考えられます。ただ、少なくともこのデータが示しているのは、価格転嫁は個別企業の交渉力だけで決まるものではない、ということです。

調達条件がScope3に影響すると分かっていても進まない理由

自社の調達条件がサプライヤーのGX投資余力を左右し、結果としてScope3に影響する。このこと自体は、多くの経営者にとって理解しやすい論理でしょう。自社が価格転嫁に応じなければサプライヤーの利益が圧縮され、設備更新やDX、そして脱炭素投資が後回しになる。多くのサプライヤーにとって脱炭素投資は法規制から来る義務的なものではなく、利益の中から捻出する裁量投資です。サプライヤーの利益が圧縮されれば、脱炭素投資は削減の対象になりやすくなります。

しかし、この論理を理解していても、実行は容易ではありません。安易に応じれば自社のコストが上がります。株主への説明、競合との価格競争、短期業績へのプレッシャー。簡単に応じられない事情があるのも事実です。53.5%という数字は、企業の理解不足ではなく、この実行の困難さの表れでもあります。 

調達条件がGXの出発点になる

求められているのは「価格転嫁に応じるか応じないか」という単純な二択ではありません。価格だけで取引関係を評価する枠組みそのものを問い直し、GXを含めたバリューチェーン全体の再構築に踏み込むことが求められています。

そのためには、いくつかの問いから始める必要があります。自社の調達条件は、サプライヤーの長期投資を可能にしているでしょうか。Scope3を算定するだけでなく、削減につながる取引関係の見直しに踏み込んでいるでしょうか。調達・経営企画・環境部門が同じテーブルについているでしょうか。

GXは環境部門だけの施策ではありません。価格も含めた自社の調達条件をどう設計するかも、GXにおける重要な要素の一つです。

参考資料:経済産業省「価格交渉促進月間(20259月)フォローアップ調査の結果を公表します」
https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251128002/20251128002.html

 

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