課題・取り組みの背景


従来より様々なマーケティング活動を行ってきていたが、各施策においてターゲットやメッセージの考え方がややバラバラになってしまう、単発で終わってしまうなどの課題感があった。会社設立10周年というタイミングもあり、改めてブランドの軸となるターゲット・コンセプトを定めることからリブランディング活動を始めていくこととなった。

※2021年4月より株式会社JR東日本ウォータービジネス様は株式会社JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニーに社名変更されました。
本事例の内容は2017年4月26日時点のものとなり、記載されている情報は取材当時のものとなります。

 

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acure
取り組み概要

  • ブランドターゲット&ブランドコンセプト策定
  • ブランドロゴ、VIマニュアル策定
  • ブランドムービー制作
  • 名刺、フライヤー、Webブランドコンセプトページ制作
  • クレド策定~クレドカード制作
  • 人事考課・表彰制度策定

 

継続的かつ多面的にコンセプトやクレドを意識できるような環境・仕組みを整えることにこだわった

営業本部 宣伝戦略部 部長 松本真理氏営業本部 宣伝戦略部 部長 松本真理氏

-今回、「acure」ブランドのリブランディングに取り組むことになった背景やきっかけを教えてください。


過去、広告やキャンペーン、コラボ企画などを用いたPR施策など、いわゆるマーケティング活動は色々とやってきていたのですが、それらが単発で終わってしまっているという課題感がありました。単発で終わっているというのは、ターゲットだったり、「acure」というブランドが打ち出していくメッセージだったりが施策によってややバラバラになってしまうことにより、長い時間軸で見たときになかなか積み上がり感が出てこないというようなことです。

そうした課題感がもともとあったところに、会社設立10周年を迎えるというタイミングや、事業の中期ビジョンとしてより高い目標を目指していく上で、改めてブランディングというものを根本からしっかりやっていこうという機運が高まり、リブランディングの取り組みを始めることになりました。


-リブランディングを進めていく上で、特に意識したことなどはありますか。


今回のリブランディングで策定した「ブランドコンセプト」、それを体現するための「クレド」などをしっかり全社員に浸透させることです。先程お話したターゲットにしても、ブランドの強みにしても、もともと各施策を考える担当部署やプロジェクトの中ではしっかり議論できていたのです。ただ、それが部署や役割という壁を越えて全社員に具体的に浸透するまでに至っていなかった。ですので、今回のリブランディング活動では「策定」というところは勿論ですが「浸透」というところを徹底してやり抜こうと考えていました。


-「浸透」に力を入れるということで、具体的にどのような取り組みを行われたのですか。


まずは、「策定」のプロセスに積極的に社員を巻き込んでいきました。ブランドの強みやお客様に提供する価値について社員から広く考えを募ったり、ブランドロゴのリニューアル案についても、複数のアイデアに対して社員の投票を行うというプロセスを組み込みました。シンプルなやり方ですが、多くの社員に「策定」のプロセスに関わってもらうことで参画感が高まり、策定後の「浸透」にもスムーズに移行できたと思います。

あとは、策定したものを社員の行動に繋げるための「仕組み」づくりです。過去の経験から、ブランドコンセプトを創るだけではダメだということはわかっていました。“創るだけではダメ“というのは、こういったものは往々にして策定に関わった人たちだけが理解しており、なかなかそれ以外の社員の行動に繋がっていかないということです。実は今回「クレド」を策定する前にも行動指針というものは存在していたのですが、具体的に社員の行動につながるような運用がされていませんでした。

ですので、“コンセプトやクレドを策定するだけでなく、策定したものをきちんと口頭で説明する「共有会」を開く”、“1回きりの説明で終わらせるのでなく「クレドカード」などの携帯ツールを作成する”、さらには“クレドの内容を、評価や表彰、研修など人事制度とも接続する”など、継続的かつ多面的にコンセプトやクレドを意識できるような環境・仕組みを整えることにこだわりました。

コンセプト策定から時間を空けずに様々な施策を同時並行で走らせたことが“巻き込み感”や“当事者意識”をもたらした

 オリジナルキャラクター「アキュアくん」が登場するブランドムービー

オリジナルキャラクター「アキュアくん」が登場するブランドムービー。Webでの再生回数は100万回を超えた。


-取り組みを進める上で大変だったことはありますか。


会社設立10周年行事やサンプリングイベント、事業としての新しい試みである「イノベーション自販機」のリリースなど色々なタイミングが重なったこともあり、ブランドコンセプト策定から間髪入れずに、新コンセプトを社外に発信していく大きな施策が同時に複数併走していたことでしょうか。新コンセプト策定・ロゴリニューアルから数か月の間に、Webサイトリニューアル、機体デザイン開発、ブランドムービー制作、名刺のリニューアル・・・などを一気に進めていきました。

新コンセプトの共有会を丁寧に行う前の、まだまだ全員が同じように深くコンセプトを理解できてはいない中で各担当者が施策とブランドの接続を図らなくてはならず、大変な部分もあったと思います。リブランディング事務局である私の下にも、問い合わせが相次ぎました。例えば、10周年のサンプリングイベントで配布する限定デザインボトルで今回策定したコンセプトに合っているのはどれか、や「実施内容が本当にターゲットに合っているか?」のような質問が寄せられたりなど。

ただ、こういった質問や突っ込みが産まれるということ自体が、社員が今回のターゲットやコンセプトを軸に「acure」ブランドを捉えられていることの表れなのかとも考えています。そういう意味では、コンセプト策定から時間を空けずに様々な施策を同時並行で走らせたことが、先程の“巻き込み感”というか、実際の業務担当者に今回のリブランディングに対する当事者意識をもたらす良い機会になったのかもしれません。ターゲットの理解を深めることや、新コンセプトを様々な施策に反映していくことなど、まだまだブラッシュアップが必要な部分はありますが、今回のように“走りながら吸収する”という形で取り組んでいけたらと考えています。


-今回の取り組みを行って、現時点で成果・効果のようなものは感じられますか。


わかりやすい成果という意味では、今回のコンセプトに基づいてデザインをリニューアルした機体の売上が上昇しています。その他にも、Webサイトへの新規流入が増加したり、感覚的にではありますがtwitterなどのSNS上で「acure」というワードの出現数が増えたりもしています。

ちょっと変わった側面では、リニューアルした名刺をパートナー様に見せた時に「オッ」という反応があったりとか、ある社員が読んでいた漫画に弊社の自販機が出てきたとか(笑)。少しずつではありますが、新しい「acure」ブランドが社外に認知されはじめてきている実感はあります。名刺の話などは、なぜこのようなデザインなのか、どういう意図が込められているのかを自分の言葉で話すことによって、ブランドが自分のものになるきっかけにもなっているようです。

リニューアルした名刺とクレドカード

リニューアルした名刺とクレドカード。名刺裏面が自販機という遊び心のあるデザインが会話のきっかけにもなっているとのこと。


-最後に、今後の課題についてお聞かせください。


ブランドの社内浸透という意味では、先程申し上げたようにターゲットの理解を深めていくことだったり、各施策への反映を精度高く続けていくことがあると思います。また、先日実施した社内におけるブランド浸透度調査により、部署や役職別にどんな課題があるのかを細かく把握できているので、それらを1つずつ解決していくようなことが必要だとも考えています。また、もっと長い時間軸で捉えると、異動などによって現在のリブランディング事務局メンバーが変わったとしても、今の取り組みがしっかり継続していくような仕組みをより一層強固にしていくことも必要です。

ブランドの発展という意味では、今は“移動中のJR東日本のエキナカにあるから「acure」の自販機を使う”というのが実情だと思いますが、将来的には“「acure」の自販機があるからJR経由で行こうかな”というくらいまで、ついでではなくわざわざ立ち寄りたくなるブランドになりたいと考えています。


企業概要

<株式会社JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニー(旧株式会社JR東日本ウォータービジネス) >
JR東日本内のエキナカを中心に約8,300台※設置されているブランドミックス型自動販売機「acure<アキュア>」、オリジナルの飲料ブランド「acure made<アキュアメイド>」などを展開。会員サービス「acure members<アキュアメンバーズ>」は会員数11万人※を超える。2016年に会社設立10周年を迎え、“自販機での新しい価値体験を提案し続ける”をコンセプトとした最新型自販機「イノベーション自販機」を投入するなど、事業の更なる発展に向けて加速を続けている。
ブランドサイト http://www.acure-fun.net/
 

※2021年4月より株式会社JR東日本ウォータービジネス様は株式会社JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニーに社名変更されました。
本事例の内容は2017年4月26日時点のものとなり、記載されている情報は取材当時のものとなります。

 

(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)

 

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