先日、スターバックスが日本上陸25周年を記念して、47都道府県ごとに限定のフラペチーノを発売することが話題になっていました。意識して見てみると、私たちは日頃から数多くの「周年」キャンペーンやイベントに触れているのかもしれません。そこで、今回は企業の周年事業とブランディングがどのように結びついているかについて考えてみました。
5年10年周期で定期的に訪れる企業の周年ですが、いざ直面すると、下記のようなお悩みをよくお聞きします。- 何から始めたらよいかわからない
- 社員の巻き込みがうまくいかない
- 一時の盛り上がりになってしまう
なぜこれらのお悩みが生じるのか、お悩みを解決するポイントについてお伝えします。
企業にとって周年とは?
多くの人や組織は、無意識的に何らかの“区切り”“節目”によって意識や行動のマネジメントを行っています。企業における周年も、
そのような節目であり、意識や行動を変えるきっかけとなるものです。この特性を考えると、過去から現在までの視点として祝賀や
これまでの感謝をする機会だけでなく、それに加えて現在から未来の視点として「未来に向けた変革の機会」ととらえることができます。
周年事業のお悩みとその原因
最初に述べたようなお悩みの根本的な原因は、周年事業の「目的」が不明確であることです。
一般的な周年企画ではイベントやパーティ、キャンペーンなどが実施されますが、目的が不明確だと、そのような“よくある”施策が
乱立してするだけで、成果が得られなくなってしまいます。それを踏まえて、お悩みについてもう少し詳しく検討してみたいと思います。
・何から始めたらよいかわからない
周年は非定例行事のため、専門部署もなく、突発的に任命されることが多いです。さらに、実施頻度も少なく、間隔も空くので、ナレッジやノウハウが残されていなかったり、担当者間での引継ぎがされなかったりします。そのため、目的が曖昧なまま、「とりあえず一般的な・・・」「前回の内容を踏襲して・・・」という進め方になってしまいます。
・社員の巻き込みがうまくいかない(関心が薄い)
「とりあえず・・・」で始めてしまうと、一般的な他社事例や自社の過去施策といった手段がスタート地点になります。その結果、社員や関係者に取り組みの意義や重要性を伝えることができず、社員に共感を得ることが難しいです。
・一時の盛り上がりにとどまってしまう
社員の巻き込みがうまくいかなければ、実施内容への関心や理解も薄くなります。そのため、実施内容の成果が上がりにくく、すぐに忘れられやすくなってしまいます。また、目的が不明確だと、その成果を認識するのが難しいです。そして、継続的な動きにつながらず、単発的な取り組みになってしまいます。
このようなお悩みを解決し、周年事業を成功に導くためのポイントは、「いま、会社が解決したい課題」を把握し、周年事業で解決するべきものを決めて、それを目的に設定することです。「何をやるか」ではなく、「何のためにやるか」を明確にすることで、何をすればよいか、巻き込むべき社員はだれかということも明確になります。さらに、成果の認識がしやすくなり、それが継続的な施策の展開にもつながります。
ここからは、具体的な周年企画設計のポイントについてお伝えします。周年事業は大きく「社内向け」と「社外向け」に分けられますが、まずは社内向けの周年事業の前提となる部分についてお伝えしたいと思います。
社内向け施策の前提~ミッション・ビジョン・バリュー~
社内向け周年企画における代表的な目的設定の1つが、「理念」「ミッション・ビジョン・バリュー」に対する社員の“理解と共感”を生みだし、社員一人ひとりの意識・行動のベクトルを揃えていくことです。これは、社員のエンゲージメント向上や一体感の醸成にも繋がります。
では、そもそも「理念」や「ミッション・ビジョン・バリュー」とはどのように定義されるのでしょうか。
・理念(経営理念)
この企業は何のためにあるのか?という使命や存在理由を明文化したものです。
「ミッション」という言葉が同じ意味で使われることも多いです。
・ビジョン
理念やミッションの実現に向けて会社が中期的(3~10年)に目指す姿です。
・バリュー
何を大切にしながら「理念」「ミッション」「ビジョン」を達成するのか?という社員に求められる思考や行動の判断基準です。
社内向け周年企画の前提として、このような自社の「ミッション」「ビジョン」「バリュー」に一貫性・連動性を持たせた整理が必要です。一貫性がないと、「接続不良」を起こし、うまく浸透させたり、社員の行動につなげたりすることができなくなってしまいます。
また、理念体系の「パーツ不足」が起こっている企業は意外と多いです。理念(ミッション)が存在しない企業はほとんどありませんが、ビジョンやバリューが欠けてしまっているケースは少なくありません。
・ビジョンが欠けると・・・
「理念」「ミッション」はどうしても抽象的な概念になってしまうので、適切な粒度で描かれた「ビジョン」が存在しないと、具体的にどこを目指していくのか?ということが伝わりにくく、社員のベクトルをそろえることが困難になってしまいます。
・バリューが欠けると・・・
日々の業務で具体的にどんな思考や行動が求められるのか?という指針・基準がわからなくなってしまいます。また、バリュー(行動指針)があったとしても、それがミッションやビジョンとどのように結びつくのかが明確でないと、業務に活かすことは困難です。
周年を機に理念やミッションの浸透を行うには、「パーツ不足」や「接続不良」を起こさないように理念体系を整備しておくことが前提となります。また、理念体系を目標設定や評価などの組織内の仕組みとリンクさせることが周年後も含めた継続的な行動変革につながります。
最近の例で言えば、株式会社ユーグレナが創業15周年を機にCI(コーポレート・アイデンティティ)刷新及び、行動指針の改定を行っています。
最初に述べたように周年は「未来に向けた変革の機会」です。ミッション・ビジョン・バリューをただ整えるだけでなく、今後の社会環境・ビジネス環境を踏まえて最適化・再定義することが会社の未来を描き、社員のベクトルをそろえることにつながります。
周年企画の検討を開始するファーストステップとして、まずは理念体系の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
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周年ブランディングの進め方 ②社内向け周年施策~理念浸透のための施策設計