近年では、多くの企業がカーボンニュートラル実現に向けて温室効果ガス排出量の報告や新たな脱炭素貢献製品・サービスの開発などに取り組む中、「J-クレジット」の活用を検討する企業も増えてきています。
とはいえ、J-クレジットをはじめとするカーボンクレジットは、制度の仕組みを理解するだけでも難しく、実際に購入・活用するとなると、「どのように進めて良いか分からない……」という方も少なくないのではないでしょうか?
本ブログでは、そのような方に向けて「J-クレジットの購入方法」「J-クレジットの価格」についてご説明します!
※「そもそもJ-クレジット制度とは?」という方は、ぜひこちらのブログ(【J-クレジット制度を解説】購入者・創出者のメリットとは?)をご覧ください。
◾️目次
1. J-クレジット保有者から直接購入する方法
1-1. J-クレジット保有者に個別に連絡して直接取引を行う
1-2. J-クレジット保有者による公募に申し込む
2. 第三者を介して購入する方法
2-1. 取引プラットフォーム(市場・取引所)を利用する
2-2. J-クレジット・プロバイダー等による売買仲介を利用する
②一般公開されている価格情報は「カーボン・クレジット市場日報」
①J-クレジットはどうやって購入できるのか?
J-クレジットは、様々な団体の様々な削減・吸収活動によって創出されています。
基本的にJ-クレジットを購入するためには、希望の要件に当てはまるJ-クレジットの保有者を探して、個別に連絡を取り、取引を成立させることが必要になります。
しかし現在は、J-クレジットの売り先の公募や売買仲介サービスなども存在しており、J-クレジットの購入方法は上記の方法に限りません。
そこで、本章ではJ-クレジットの購入方法を「1. J-クレジット保有者から直接購入する方法」と「2. 第三者を介して購入する方法」の大きく2つに分け、合わせて4つの具体的な購入方法をご説明します。
それぞれの主な購入手段は以下のようなものが考えられます。
1. J-クレジット保有者から直接購入する方法
1-1. J-クレジット保有者に個別に連絡して直接取引を行う
1-2. J-クレジット保有者による公募に申し込む
2. 第三者を介して購入する方法
2-1. 取引プラットフォーム(市場・取引所)を利用する
2-2. J-クレジット・プロバイダー等による売買仲介を利用する
※その他にJ-クレジット制度による入札販売もありますが、2024年度の開催は未定です。(2024年4月現在)
1. J-クレジット保有者から直接購入する方法
こちらは、一般公開されている情報の中からインターネット検索等によって自分でJ-クレジットの保有者を探し、取引を成立させる方法です。
具体的な2つの購入方法を以下で簡単に説明します。
【1-1. J-クレジット保有者に個別に連絡して直接取引を行う】
一つ目の購入方法としては、購入検討者自らが、インターネットなどでJ-クレジットを売りたい人・団体を探し、個別のやり取りを行って取引を行うということが考えられます。
J-クレジット保有者が個人的にJ-クレジットの情報を公開しているというケースはそれほど多くないため、J-クレジット制度公式サイトの「売り出しクレジット一覧」を確認するという方法が一般的です。
こちらには、認証後、活用先が決まっていないJ-クレジットの情報が掲載されており、購入検討者はこちらに載っているクレジット保有者に直接連絡し、取引に関する交渉を行うことになります。
▼ 「売り出しクレジット一覧」はこちら
https://japancredit.go.jp/sale/
【1-2. J-クレジット保有者による公募に申し込む】
先ほどJ-クレジット保有者の情報は「売り出しクレジット一覧」から確認することが一般的としましたが、国や自治体に関しては、保有しているJ-クレジットの売り出しにあたって、購入者の公募を行っているケースもあります。
例えば、経済産業省は2023年12月にJ-クレジットの売り払い先の公募を行っていました。
▼ 公募情報はこちら(※公募期間は終了しています)
https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2023/k231204002.html
こうした情報を見つけ、公募に参加することによって希望するクレジットを購入するということも考えられます。
ただし、自治体等が行う公募に関しては、「管轄の地域内でのオフセットを予定している購入希望者を優先する」などの選考基準がある場合やクレジットの種類が限定されている場合も多々あり、クレジットを購入したいタイミングで、希望するクレジットの種類や活用用途に合う公募を見つけるというのは難しいかもしれません。
購入検討時に、ちょうど希望に合った公募が行われているという場合には、活用してみるのも良いでしょう。
2. 第三者を介して購入する方法
ここまで、購入希望者が自らJ-クレジット保有者にコンタクトを取り、取引を成立させる方法をご紹介しましたが、そうした方法以外に、クレジット購入に関するサービスを利用するという方法も考えられます。
【2-1. 取引プラットフォーム(市場・取引所)を利用する】
第三者によるサービスを介した購入方法として、J-クレジットを扱う取引プラットフォームを活用して購入するということが挙げられます。
これまでは、J-クレジットの取引は相対取引で行われることが一般的でしたが、近年では市場や取引所といったプラットフォームを活用するケースも増えてきています。
2022年9月には、経済産業省からの委託によって、東京証券取引所がカーボン・クレジット市場の実証実験を行い、2023年10月には、実証実験の結果を踏まえ、正式に「カーボン・クレジット市場」が開設されました。
東京証券取引所によって定められた方法で、市場参加者としての登録を行うことで、こちらに売り出されたJ-クレジットの取引に参加することができます。
省エネルギー・再エネ(電力)・再エネ(熱)といったJ-クレジットの創出由来ごとに、購入したいクレジットのトン数・価格を提示し、提示した価格の高い買い手から取引が成立する仕組みになっています。
▼ 東京証券取引所「カーボン・クレジット市場」公式サイトはこちら
https://www.jpx.co.jp/equities/carbon-credit/index.html
また、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場以外にも、J-クレジットの取引プラットフォームが存在しており、例としては以下のようなものが挙げられます。
・Carbon EX:https://carbonex.co.jp/
こちらは、J-クレジット・ボランタリークレジット・非化石証書などを扱っているカーボンクレジット・排出権取引所です。日本語版と英語版が用意されており、国内外のプレイヤーが世界のカーボンクレジット・排出権にアクセスすることができるという点が特徴として挙げられています。
・日本気候取引所(Japan Climate Exchange):https://www.japan-climate-exchange.com
こちらも、J-クレジット・海外ボランタリークレジット・非化石証書などの国内外の環境価値を扱う取引所です。環境価値の売り注文・買い注文の情報がリアルタイムで公開されているという点が特徴的です。
【2-2. J-クレジット・プロバイダー等による売買仲介を利用する】
これまで紹介した購入方法の他に、J-クレジット・プロバイダーに仲介を依頼するという方法もあります。
J-クレジット購入には様々な方法がありますが、インターネットやプラットフォームに公開されている情報から希望するJ-クレジットの種類や量が見つけられるとは限りません。
また、企業の規模や業種によって対応すべき報告などは異なりますし、多くの企業は単に報告に対応するというだけでなく、自社事業や地域に貢献できるようなJ-クレジットの購入にこだわっています。
そうしたことを考えると、自社にとって最適なJ-クレジットがどのようなものなのかということを自分たちだけで把握するのは難しいというケースもあるかと思います。
そういった場合には、クレジットの創出及び活用を支援することができる「J-クレジット・プロバイダー」に売買の仲介を依頼するということも考えられます。
クレジットの仕入れ・販売を常時行っているJ-クレジット・プロバイダーであれば、一般に公開されていないクレジット保有者の情報や様々な種類のクレジットの在庫を確保していることが想定されます。
さらに、豊富なJ-クレジット創出・活用支援の経験から、予算や活用用途などクレジット購入希望者の状況に合わせて、適切なクレジットを提案してもらうことも期待できます。
また、J-クレジットを報告等で活用する際には、通常、「クレジット管理用口座」を開設し、「無効化」という手続きを行うことが必要になりますが、無効化手続きを代理してくれるJ-クレジット・プロバイダーの支援を受けることで、こうした手間を省くことも可能です。
弊社バイウィルは、J-クレジット・プロバイダーの一社であり、クレジット購入を希望する方のサポートを行っています。
各企業の状況に合わせた適切なクレジット選定のアドバイスから、詳細な創出情報に基づいたクレジットの提案、無効化手続きの代理まで行っています。J-クレジット購入検討時には、ぜひご相談ください。
▼ バイウィル「環境価値売買(クレジット仲介・調達)」ページはこちら
https://www.bywill.co.jp/services/carbon-offset/
②一般公開されている価格情報は「カーボン・クレジット市場日報」
前章では、J-クレジットの購入方法について説明しました。
では、実際に購入するとなった場合、どれほどの費用がかかるのでしょうか?
J-クレジットの価格は、制度上定められているものはなく、基本的にクレジット保有者と購入希望者の間で自由に決められるようになっています。
先ほど説明した購入方法のうち、個別の取引や公募、売買仲介を利用した購入に関しては、成立した取引価格が公開されていないケースがほとんどのため、公開されている情報から価格を予想する場合には、取引所における取引価格を参考にすることになります。
東京証券取引所の「カーボン・クレジット市場」では、毎日その日に成立した取引や基準値段に関する日報が出されており、こうした情報から種類ごとのJ-クレジットの価格の相場を考えることができます。
▼「カーボン・クレジット市場日報」はこちら
https://www.jpx.co.jp/equities/carbon-credit/daily/index.html
東京証券取引所が公表している「市場開設~2024年3月29日までの約定値段の平均」は、次のようになっています。
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- 省エネルギー:1,655円/t-CO2
- 再エネ(電力):3,019円/ t-CO2
- 再エネ(熱):2,282円/ t-CO2
- 森林:8,095円/ t-CO2
出典:「市場開設(2023年10月11日)以降の売買状況」
https://www.jpx.co.jp/equities/carbon-credit/daily/nlsgeu000006ltge-att/TradedPriceandVolume.pdf
また、近年では、食品メーカーが原料の生産に関わる農業由来のJ-クレジットを購入したり、全国各地に工場を持つ企業が各工場の所在地域で作られたJ-クレジットを購入したりするなど、自社の事業と関連する活動や地域に由来するJ-クレジットの購入を希望する企業も増えており、クレジットの価格は「いつ・誰が・どこで・どのように作ったものなのか」によっても異なってきています。
最近の取引動向を踏まえたクレジットの選定・購入を行いたいという場合には、日ごろからクレジットの売買を行っているJ-クレジット・プロバイダーに相談してみるというのも良いのではないでしょうか。
バイウィルでは、J-クレジットの創出・売買のご支援や脱炭素コンサルティング、環境価値ブランディングなどを行っております。
J-クレジット・企業の脱炭素推進に関するご質問・ご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。