【金融機関のためのJ-クレジット実践コラム:第3回】そもそも「J-クレジット」とは何か?

【金融機関のためのJ-クレジット実践コラム:第3回】そもそも「J-クレジット」とは何か?"怪しい"を一瞬で払拭する一言回答~ひと言で納得させる「決定打」を用意する~

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目次

前回は皆さまご自身がこの市場にどう踏み出していくか、その具体的なステップや顧客の巻き込み方について触れてきました。今回からは、いざお客さまの前に立ったときの「実践的なコミュニケーション」に入っていきます。 

前回コラムはこちら
【金融機関のためのJ-クレジット実践コラム:第2回】他行はどうしてる?金融機関自身の「カーボンニュートラル」とクレジット活用の最前線 〜本部のサステナ担当者がまず「当事者」になるために〜

はじめに:説明すればするほど、質問が増えていませんか?

 「J-クレジットって何ですか?」

営業現場でお客さまからそう聞かれたとき、つい制度の背景や複雑な仕組みについて、真面目に長々と説明してしまっていませんか?

実は、良かれと思った丁寧な説明が、かえって「なんだか怪しい」「複雑でよくわからない」という印象を強めてしまうことがあります。その結果、さらに細かい質問を呼び込み、最終的には“提案するのが面倒な商品”のように見えてしまうケースが後を絶ちません。

今回は、一言で端的に答え、相手の不安をその場で払拭しつつ、余計な疑問を発生させない「回答の型」をお伝えします。

 

解説:「J-クレジット」を一言で説明すると

まずは結論からお伝えします。

J-クレジットとは、「省エネや森林保全などで実際に減らした・吸収したCO₂の量を、国がお墨付きを与えて証明書にしたもの」です。

経済産業省・環境省・農林水産省という3つの省庁が共同で運営する、日本政府公認の制度であり、決して出どころの分からないような、怪しい商品などではありません。


そもそも、なぜこのような仕組みが作られたのでしょうか。

それは、CO₂の削減活動そのものは「やった/やっていない」が目に見えず、そのままでは具体的な価値として評価したり、他者と取引したりすることができないからです。 

そこで国は、統一のルールによる算定と第三者機関による厳格な審査を経て、削減・吸収量を取引可能な「証書」として発行・認証する仕組みを整えたのです。これがJ-クレジット制度の正体です。言うなれば、「見えない環境への努力を、確かな経済的価値に変える」ための、国が用意したインフラなのです。

この仕組みがもたらす「3つの働き」 

    • ① オフセット(買い手)
      :自社で減らしきれない排出量を、他者が生み出した削減分で埋め合わせ(オフセット)できる
    • ② 信頼の証明(買い手)
      :目に見えない「環境貢献」を、国の認証という客観的な根拠を持って対外的に証明・PRできる
    • ③ 地域への還元(地域社会)
      :森林組合や農家、地元企業などの環境活動に「経済的な価値」を生み出し、資金を地域へ戻すことができる 

つまりJ-クレジットは、不透明な「儲け話」などではなく、「日本全体でCO₂削減を分担し合うために、国が設計した仕組み」なのです。

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 現場で使える! 一言で納得の"効く返し" 

 では、実際の営業現場でどのように切り返せばよいのか、具体的なトーク例を見ていきましょう。 

Q「J-クレジットって何ですか?」

A:「簡単に言うと、省エネや森づくりで実際に減らしたCO₂を、他者(他社)に証明・販売できるように、国がお墨付きを与えた証書です。」

Q「怪しくないですか?」

A:「経産省・環境省・農水省が共同で運営する、れっきとした国の制度です。むしろ大手企業ほど、この“国のお墨付き”があるからこそ安心して使っているんですよ。」

 

 余計な不安や疑念を払拭する「先回りの一言」 

上記のように端的に答えた後、説明の最後にこの一言を添えてみてください。

お客さまの「もっと詳しく聞きたいけれど、なんだか難しそう」という不安を先回りして解消し、その場での質問攻めを防ぐことができます。

A.「ちなみに、価格の決まり方やCO₂削減の証明方法といった細かな点は、私どもの方できちんと確認・整理済みです。ご不明な点があれば、いつでもお声がけください。」

 

【担当者のための補足知識】価格と証明の仕組み

お客さまから後日質問を受けた際や、より深く検討される段階になったときのために、担当者の皆さまがバックボーンとして持っておくべき知識を整理しておきます。

  • J-クレジットの価格の決まり方
      • 取引形態には相対取引と市場取引(東京証券取引所)の2種類がありますが、基本的には相対取引が中心です。
      • 価格は、削減方法(省エネ・再エネ由来など)や吸収方法(森林由来など)によって単価が異なります。多少のばらつきはあるものの、多くは1トンあたり5,000円前後で取引されており、森林由来のクレジットのみ1万円前後と高めの水準になっています。
        (※価格は市場動向により変動します。最新の水準は個別にご相談ください)

  • CO₂削減の証明方法
      • まずクレジットを創出する側が、CO₂削減量・吸収量を算定した所定の書類を作成します。それを、国が指定する「第三者審査機関」が厳密に審査します。その後、有識者からなるクレジット委員会での決議を経て、ようやく正式にクレジットが発行されるという厳格な流れになっています。
      • なお、削減量・吸収量の算定方法(方法論)はJ-クレジット制度事務局が個別に定めており、詳細は制度事務局のサイト(https://japancredit.go.jp/about/methodology/ )で公開されています。

この回のポイント

J-クレジットは「実際に減らした・吸収したCO₂量を、国が認証して証書にしたもの」と一言で言い切る。
    • この仕組みの働きは「埋め合わせ」「証明」「地域への還元」の3つに集約される。
    • 「怪しい」という懸念には、「国のお墨付き(経産省・環境省・農水省)」という言葉で安心感を持たせる。
    • 説明は端的に行い、最後に「資料として整理してお渡しできます」と添え、余計な質問を未然に防ぐ。

 次回は、中小企業の経営層にしっかりと響く「具体的な導入メリット例」についてお伝えします!

 

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執筆者:m-saito
京セラグループのコンサルティング会社、リンクアンドモチベーショングループを経て株式会社フォワード(現:バイウィル)に参画。企業のブランドコンサルティング・風土改革コンサルティングに従事。 クレジット創出事業立ち上げ後、同事業を担うパートナーサクセス部長就任。プライム上場企業や地方中堅・中小企業、森林組合や林業会社など約2,000事業者にJ-クレジット創出・活用方法を紹介(内、森林案件50%)。金融機関や自治体でのセミナー・勉強会講師も務める。2026年4月より現職、執行役員兼カーボンニュートラル促進本部長。
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