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【総研ブログ】そもそもCOPとは?「環境会議」から「市場ルールの先行指標」へ

M.KANAI
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来月に迫った「国連気候変動枠組条約第31回締約国会議(COP31)」に向け、ニュース等で気候変動に関する報道を目にする機会が増えてきました。テレビで各国の首脳がスピーチする映像を見ながら、「自社のビジネスには直接関係のない、遠い国の政治イベントだな」と感じている方も多いのではないでしょうか。しかし、現在のCOPはすでに単なる目標発表の場から「世界的な資金の流れを方向付け、企業のビジネスモデル変革を促す『事実上の先行指標』」として機能するようになっています。

今回は、「そもそもCOPとは何か」という基礎と、COPが自社の実務や今後のGX戦略に与える影響について深掘りして解説します。

COPは「ルール宣言の場」から「ビジネス実装の場」へ

COPの正式名称は「国連気候変動枠組条約締約国会議」であり、条約に加盟する国々(締約国)が地球温暖化対策の国際ルールを決定する最高意思決定機関です。この会議の役割は、時代とともに大きく進化してきました。代表的な節目として、1997年の「京都議定書」でルール作りの第一歩を踏み出し、2015年の「パリ協定」では「世界の平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」という共通目標が掲げられ、歴史的転換点を迎えました。

そして現在、COPはさらに新たなフェーズに突入しています。各国が削減目標(NDC)を引き上げる取組が引き続き重要課題となる一方で、近年は目標設定に加えて「その目標を達成するために、どのようなルールで世界のお金を動かすか」という「実装・資金・市場形成」へと議論の重点が広がっています。実際に近年のCOPでは、「NCQG(新たな気候資金に関する合同数値目標)」など、公的資金だけでなく民間投資をいかにGX(クリーンエネルギー・移行)市場へ呼び込むかが議論の中心的なアジェンダとなっています。

実は、この「具体的なアクションが問われる」というシフトは、COPに限った話ではありません。民間企業の削減目標を認定する国際イニシアチブ「SBTi」においても、目標達成に向けた環境価値(クレジット等)の活用要件に関する基準改訂の議論が進むなど、世界全体が「実行フェーズ」へと向かう自然な潮流と言えます。

なぜ企業がCOPを知る必要があるのか

日々の実務に追われる中で、「遠い国際政治の動向まで追いかける余裕はない」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。「COPの動向は企業実務にとって重要である」と、専門家の間でよく語られますが、冷静に考えれば、COPという国連会議が、日本の個別企業のビジネスルールを直接決定するわけではありません。

それにもかかわらず、なぜ私たちがCOPに注目すべきなのか。その答えは、COPが「直接のルール決定機関」だからではなく、「数年先の各国政策や金融市場が、今後どちらへ動くかを読み解くための極めて精度の高い先行指標」だからです。COPを前後して国際機関や金融市場でのルール形成が加速し、それが数年のタイムラグを経て日本の実務ルールへと波及してくる傾向があります。

たとえば、日本のプライム市場上場企業への適用が見込まれるSSBJの基準は、国際基準であるISSB(国際サステナビリティ基準審議会)をベースとしています。このISSBは、COP26(グラスゴー)の開催という世界的な機運の高まりの中で、IFRS財団によって設立が発表されたものです。

すなわち、COPの動向を知ることは、将来自社に求められる「数年先の市場ルールの先行指標」をいち早く察知し、対応の準備を整えることと同義と言えます。

実務を動かす「近年のCOPの3つの新潮流」

国際的なルール形成の加速は、具体的に以下の3つの潮流を生み出し、企業実務の新たな評価軸になろうとしています。

GXの「実行手段」が多様化

自社単独の省エネ・直接削減努力を極限まで進めても、削減困難な領域(残余排出量)は残ります。そこで重要性を増しているのが、高品質なカーボンクレジット等の市場メカニズムの戦略的活用です。国内でも、企業間で排出枠を取引する「GX-ETS」の本格稼働(第2フェーズ)が進み、2024年秋には東証に専用の取引市場が開設されるなど、制度インフラの整備が急速に進んでいます。これからは、自社での直接削減を大前提としつつ、排出枠やクレジットをそれぞれの制度要件・価格・供給量などを踏まえて最適に組み合わせる『炭素ポートフォリオ戦略』が問われる段階に入っています。


緩和だけでなく「適応・レジリエンス」へ拡張

「どれだけCO2を削減したか(緩和)」に加え、気候災害などの「物理的リスク」をいかに回避し、被害を最小限に抑えるかという「適応」が問われています。近年、記録的な猛暑や豪雨によって工場の稼働停止や調達網の寸断を経験した企業も多いはずです。IFRS S2やSSBJ等においても、まずは物理的リスクを正しく把握・回避した上で、万が一の事態からも迅速に事業を復旧・継続できる強靭さ(レジリエンス)を備えているかという「説明」が求められており、投資家が着目する重要な評価・開示論点となっています。

気候変動(CN)単独から「自然(NP)・資源(CE)まで統合したGX」へ拡張

「CO2さえ減らせばよい」という局所的な視点は、もはや通用しなくなっています。いま世界では、気候変動対策と並行して「生物多様性」に関する国際ルール形成も急速に進んでおり、2022年の生物多様性条約の会議(CBD COP15)では新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。

こうした流れを受け、自然の力を活用して気候課題も同時に解決する「NbS(自然に基づく解決策)」が世界の主流となりつつあります。実務においても「TNFD」への賛同企業が急増するなど、気候変動対策(CN)と自然資本の保護をセットで捉える、より統合的なアプローチがこれからの企業に求められ始めています。

ルールの変化を「好転の機会」に変え、共に次なるGX戦略を

国内で法制化されてから受動的に対応するのではなく、国際的なルール形成の波を「自社のビジネスを守り、育てるための先行指標」として捉えることが重要です。まずは来月に迫るCOP31の報道を、単なる環境ニュースとしてではなく「将来の政策・市場・投資環境がどちらへ動くかを読む先行指標」、そして同時に「次世代のビジネスモデルへ変革するための事業機会」としてポジティブに読み解く視点を持つことが求められます。その上で、将来の調達リスクや市場の変化に備え、経営層や関連部門とともに自社のGX戦略の現在地について議論を始めていくことが第一歩となります。

カーボンニュートラル総研が提供するのは、抽象的なトレンド解説ではなく「貴社が今、具体的に何をすべきか」の提示です。迫り来る市場ルールの変化に対し、貴社の現在の取組とのギャップを可視化し、経営戦略と直結した実効性のある移行計画へのアップデートをご支援いたします。

正解のないGXの潮流において、国際的なルール形成の波をいかに自社の「好機」に変えていくか。私たちは、単なる外部アドバイザーではなく、貴社と共に最前線で悩みを分かち合い、次なる戦略を描くパートナーでありたいと考えています。

このCOP31を機に、まずは貴社のGX戦略における「現在地の棚卸し」と「将来リスクの診断」をご一緒にしてみませんか。ご不明な点やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 


<本記事の用語解説>

  • レジリエンス
    記録的な猛暑や豪雨などの自然災害が起きても、企業のサプライチェーンを含め、速やかに事業を復旧・継続できる「強靭さ(回復力)」

  • ISSB(International Sustainability Standards Board: 国際サステナビリティ基準審議会)
    企業のサステナビリティ情報を、財務情報と同じように投資家へ開示するための「世界共通のルール」を作っている審議会

  • SSBJ(Sustainability Standards Board of Japan:サステナビリティ基準委員会)
    SSBを「日本向けのルール」として策定している委員会

  • TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)
    事業が自然環境に与える影響だけでなく、自然への「依存・影響・リスク・機会」を包括的に評価・開示する枠組み

  • GX-ETS(Green Transformation Emissions Trading System:GX排出量取引制度)
    日本における排出量取引制度。参画企業が自ら排出削減目標を設定し、目標を上回る削減を達成した場合は「超過削減枠」として市場で売却できる一方、未達となった場合は他社の超過削減枠や適格カーボンクレジットを調達して目標を履行する仕組み

  • NbS(Nature-based Solutions:自然に基づく解決策)
    森林や湿地、海洋などの自然生態系を保護・回復・持続可能に管理することで、気候変動や防災などの社会課題を解決しようとする考え方

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