東京・恵比寿駅から動く歩道・スカイウォークで徒歩5分。
そこには、「豊かな時間」と「豊かな空間」を育んでいる1つの“街”がある。恵比寿ガーデンプレイス。
高級感溢れる住宅、都内を一望できるオフィス、多岐に渡るショップが連なるこの街で、様々な豊かさを提供してきた。


そんな恵比寿ガーデンプレイスが20周年を迎えるにあたって、“恵比寿。あなたは、大人の街になれ。”いうメッセージとともに、
新たな第一歩を踏み出し始めたのが、2013年。

その背景には、恵比寿ガーデンプレイスのリブランディングプロジェクトが動いていた。
なぜこのタイミングでリブランディングが必要であったのか?
そして、我々と共に何に取り組み、どんな成果を上げることができたのか?

恵比寿ガーデンプレイスを支えているサッポロ不動産開発株式会社・恵比寿事業本部企画部部長代理・深川氏と同じく部長代理・大木氏にお話を聞いた。

社員が、ブランドに対する意識に変化が起こるきっかけに

-リブランディングプロジェクトに至った経緯をお聞かせください。

20周年を迎えるにあたって、恵比寿ガーデンプレイス(以下:YGP)という街を見直した時に、街としての一体感や世界観が薄れ、一貫性をもってYGPブランドを提供できていないと感じました。

もう一度YGPファンを作るために、まずは2013年に広告代理店様とブランドコンセプトを作り、その成果物として新しいYGPのブランド規定(ブランド価値構造・ブランドパーソナリティ・ブランドステートメント)を出しました。

しかし、策定したブランドコンセプトから具体的に何をすれば良いのかを社員が明確に認識できておらず、それぞれが試行錯誤している状態でした。
そこで、一貫性のあるYGPらしい価値を顧客に提供するためにも、ブランドコンセプトをより社内に浸透させる取組みに注力しようということになり、インナーブランディングを得意とするフォワード(現:バイウィル)さんとご一緒することになりました。

YGP_image02

-具体的な取り組みを、お二人の視点で振り返って頂けますか。

新しく作ったコンセプトが行動に結びついていない状態を解決するために、フォワード(現:バイウィル)様とまずはじめに取り組んだことは関連部署全員参加の共有会です。コンセプト策定の背景も含めて、内容をもう一度しっかりと理解してもらうために、体験ワークなどを通して会の設計を行いました。

次にブランドコンセプトを実践するための行動指針を策定するために、ブランド伝道師(インナーブランディングの核となる社員)を選抜しワークショップを積み重ねました。その後、策定した行動指針に沿って、部署別にアクションプランを設定し、ブランドコンセプトを具体的に落とし込み実践する準備ができました。現在は、ブランドターゲットを改めて調査・深耕し、目標までの道のりを描いたブランドロードマップとその鍵のなる指標(ブランディングのKPI)を定めている最中です。 

YGP_image05深川氏:他人事ではなく、自らが先頭に立ってブランド戦略を推進できている
実を言うと、ブランドコンセプトと新しいYGPのブランド規定をつくった2013年と、2014年にフォワード(現:バイウィル)さんの支援がはじまって最初に行っていた共有会の段階では、私は現在の恵比寿事業本部の企画部の人間ではありませんでしたので、「ブランドなんて毎年変わる企業広告の一部だろうな」という認識でした。

そして、共有会を開催する際に、当時在籍していた部署から選抜された時は、「なんで俺?」という感じでしたし、共有会に参加した際も、「どうせ周りがちゃんと決めてくれるだろうな」という当事者意識とは無縁の状態でした。行動指針のワークショップを重ねている段階で現在の企画部に移ってきて、「いよいよ私も本腰を入れてやらないといけないな」と思っていました。と当時に、ワークショップを重ねるたびに“ブランド”というものを理解し始めたので、その重要性が分かりはじめ、純粋に楽しくなってきました。

そして、伝道師にも任命されて私が社内である意味「先生」になって教える立場になったことも、私が力を入れて真剣になった要因だと思います。現在では、私を含め任命された伝道師が自発的に集まって、会議体を持ち、自分たちのブランドの今後について話し合ったり改善策を練ったりしていますから、このブランド戦略当初の他人事の感覚ではなく、私たち自らが先頭に立って推進できているのではないかと感じています。             

YGP_image03大木氏:日常的に“ブランド”や“ブランドターゲット”というキーワードが増えた
私も、2013年のブランドコンセプト・新しいYGPのブランド規定段階では、深川さんと同じように恵比寿事業本部・企画部の人間ではなかったので、「こんなにブランド活動をやっている会社なんだ」という感じにしか捉えていませんでした。最初の共有会の際には、もうすでに現在の企画部に配属されていたので、資料なども読んで参加しましたが、“ブランド”というものに対しての理解が難しかったです。

行動指針を定めるワークショップの伝道師会議までは後ろ向きな人も多かったのですが、伝道師会議では、皆意識が高まっていくのが分かり、私としてもやり易かったのが本音です。現在では、日常的に“ブランド”や“ブランドターゲット”という言葉が出てくることが増え、より理解が深まっているのだなと感じています。


-今までの取り組みの中での成果を教えてください。


一番の成果物としては、ブランドブックです。作成した当初は、「こんなもの机にしまって置くだろう」と思っていたのですが、ブランドコンセプトが作られた背景・プロセスや、YGPにとってのブランディングの意義などがコンパクトにまとまっているので、実は非常に役立っています。ブランド戦略を進めていく上で、ブランドブックを見ないと分からないことがあり、その都度助けられていますので、作成した意義が大いにあったと思います。

それと、ブランドコンセプトを基にして各部署のアクションプランを作り、実施したのですが、ブランドコンセプトを各部署のアクションプランに繋げ、それを各部署が目標としてやっていくという流れを作らないといけないと分かっただけでも、YGPにとっては大きな成果です。

YGP_image04

-これからの課題を教えてください。

組織として、まだまだブランドに対する意識が低いと感じています。最初(2014年にインナーブランディングを始めた頃)と比べると全く違いますが(笑)。

つまり、ブランドって企業にとってそんなに重要なのかという懐疑的な目がまだあるのが現状で、そのような懐疑的な目をなくし、YGP一丸となってブランド戦略の遂行に取り組むためには、私たちがブランドについてもっと勉強して知識を蓄積し、適切に伝えることができれば、より他の社員も理解し、実践してくれるのではないか思います。

ブランド浸透度調査やアクションプラン、伝道師会議など定期的な取り組みはいくつも根付きました。ですが、それらをただ単純に消化する状態になってしまわないように注意することが必要です。そもそも何のためにこれらの施策をやっているのか、私たち自身が当初の目的に立ち返り、このブランド戦略を進めていかなければならないと思っています。結局、そういうことをやり続けること、やれる状況を作ることが、一番大事なのかもしれませんね。

取り組みの流れ

YGP 取り組み図
企業概要

<恵比寿ガーデンプレイス(サッポロ不動産開発株式会社)>
年間来訪者1,200万人を誇る、恵比寿のシンボルとも言える複合施設。オフィスタワーを中心に、商業・飲食施設、ホテル、住宅などを配している。約1世紀にわたってビールを造り続けてきたサッポロビールの工場跡地を再開発し、1994年に開業した。名物となったクリスマスイルミネーションや夏の野外シネマイベントなど、多彩な催しが年間を通して行われ、恵比寿エリアの活性化に貢献している。

 - インタビューご協力者 -
恵比寿事業本部企画部 部長代理 深川高史氏
恵比寿事業本部企画部 部長代理 大木梨江氏

(掲載されている所属、役職およびインタビュー内容などは取材当時のものです)


*この記事のサービスについて詳しく知りたい方はこちら>>ブランドコンサルティング