こんにちは。取締役の伊佐です。
前回のコラムで、ブランディングを成功させるためには、「ブランディングのCSC」(Concept、System、Contact)が、全て統合的に一貫性を持って設計・運用され、機能していることが非常に重要であること。そして、Conceptを策定する上で大事な観点に触れました。
今回はそれを受けて、Systemについてお伝えしていきます。
Systemというと、多くの人はグループウェアや業務上の基幹システムなどのIT的なものを連想されるでしょう。これからお伝えするSystemとは、上記の「仕組み」そのものを指す、IT的な文脈でのそれとは区別する必要があります。
ここではSystemを「組織システム」「業務システム」の
2つに分けてお伝えしていきます。
「組織システム」とは
■ブランド価値を正しく発揮するための「組織ルール」
例)ブランドスタイル(ブランドとしての判断行動基準や様式)
人事制度(ブランド視点も踏まえて設計された等級・評価・報酬制度)など
■ブランドを体現するために必要とされる人材やスキルを育てる「育成体系」
例)ブランド研修、伝道師育成研修
※伝道師とは、社内でのブランド伝播・推進の担い手など
■ブランドに対するリマインドや社内理解・共感を促す「社内コミュニケーション」
例)ブランドブックやクレドカードなどの恒常型ツール
イントラネットや社内報などの更新型社内メディアなど
「業務システム」とは
■ブランド価値を理想的・継続的に生み出すために最適化された「業務プロセス」
例)組織体制と部署ごとの役割期待、上記と連動した行動指標など
■提供価値に一貫性を持たせるための拠り所となる「マーケティング4P要件」
例)前提となる統合的な顧客セグメントの設定
各セグメントの領域(4P)横断的な企画・攻略要件など
これらが、我々が提唱しているSystem=ブランディングを成功させるために必要な「仕組み」です。ITで担保できることは少ないということがお分かり頂けると思います。
しかしながら、我々が様々な企業様から相談を受けた際、このSystemに課題があることが明白であるにも関わらず、ご理解いただけない、ピンと来ない、頭では分かるが重要性に実感が持てない、投資できない、などの反応が大半です。
ですから、ここで上記に挙げたシステムの各項目を詳細にお伝えする前に、Systemを設計・運用すべき理由を再度確認していきたいと思います。
Systemの設計が必要な理由
色々な切り口や文脈があり得ると思いますが、お伝えしたいことは、“アウターブランディングで当たり前にしていることは、インナーに対しても同じようにしましょう”ということです。
実際のアウターブランディングにおいて、
「自ブランドが戦うべき市場・枠組みを定義し、その中でターゲットを明確に描き、ターゲットのニーズや課題を踏まえしっかりと価値を提供しよう」
「ブランディングを進めるために、顧客からの認知⇒興味⇒購買欲求喚起⇒想起⇒購買を、あらゆるコミュニケーションを駆使して引き出し続けよう」
「CRMを機能させ、顧客からの自ブランドに対する期待やイメージがブレたり下がったりしないよう、コントロールすることを心がけよう」
「顧客からの信頼を勝ち取るために、提供価値の基準をしっかりと示そう」
などと言われて、反論する人はいないでしょう。全ては自ブランドの顧客にとっての提供価値を高めるために必要だからです。
しかし、忘れてはならないことがあります。
あらゆるブランドとしての提供価値は、そのブランドの担い手たる従業員が(主に)生み出しているということです。
Conceptは、従業員による判断行動の結果として顧客に届けられ、顧客に評価されることでブランド価値として蓄積していく、という当たり前のことを考えるなら、顧客に対して向き合うのと同じだけのパワーを、ブランドの担い手達に対しても掛けるべきでしょう。
また、Contactの領域は顧客からの可視領域であり、当然競合からも可視領域です。つまり、現在では非常に模倣難易度の低いもので、あっという間に真似されてしまうこともしばしばです。
一方、SystemやConceptは、直接的に顧客や競合が見ることのできない不可視領域であり、模倣難易度も高いものです。つまり、この領域をしっかりと設計・運用することこそが、企業やブランドとしての自律性を高め、中長期的な競合優位性たり得る、ということです。
ブランディングに於けるSystemの重要性は、ご理解いただけたでしょうか?
次回は、System設計と運用におけるポイントをお伝えします。