多くの企業が経営理念を掲げる一方で、社員一人一人に十分に浸透せず、理念自体が形骸化してしまうことも少なくありません。そんな中、明確な理念と事業改革によって成長し続ける組織では、どのような社内施策が行われているのでしょうか。
株式会社ルミネのゲストをお招きしたパルディスカッションで、現在の「LUMINE」に至るまでの経緯や、企業やブランドの「理念」を社員行動に結びつけ、競争力に繋げていくための具体的なノウハウや体験談についてお話いただきました。


プロフィール

株式会社ルミネ
総合企画部 中山 愛  氏

株式会社フォワード(現:バイウィル)
代表取締役社長 加藤明拓

イベント実施日
2017年10月26日(木)

理念浸透の構造とは

第一部では弊社加藤が、理念浸透のノウハウを解説しました。まずは目指す姿や提供価値を明確にし、それを継続的に行うための仕組みに落とし込み、社外に出るアウトプットに反映させる、という理念浸透の基本構造を説明しました。そして理念が浸透していない状態とその要因について解説し、社員の理解・共感を促すためには役割や役職の違いなどから生じる視界・時間観・抽象度のズレを乗り越えるような伝え方を意識しければらないと述べました。

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現在のルミネに至るまで

第二部では株式会社ルミネ総合企画部中山愛氏が登壇しました。成長の裏にある事業改革や、その基点となった経営理念について解説いただきました。

ルミネは「the Life Value Presenter  お客様の思い先をよみ、期待の先をみたす」という理念のもと、20代~30代の働く女性をメインターゲットに、首都圏で15の商業施設を運営しています。従来の駅ビル・ショッピングセンター枠に留まらない新し取り組みを発信し続けていますが、最初からそうであったわけではありません。

1991年発足当初から97年まで、売り上げが減少する苦しい時期が続きました。国鉄時代の駅ビル事業名残で「同じことを決められた通りきっちこなす」「安心安全が最優先」を基調とする社内風土があり、成長意欲が低かったといいます。

このような状況を打開すべく、97年から中期経営計画「ニュールミネ計画」を実施 。まずは顧客対象を出店者から来場者にシフトし、お客様の満足度を高めることを第一の目的としました。さらに業種業態改革としてショップの入れ替えに着手し、人気セレクトショップの誘致に成功。そしてお客様とコミュニケーションのツールとなるルミネカードを発行し、来場者数の増加を狙いました。

伝え方ひとつで、浸透度合いは変わる

これらの施策を通じて事業が軌道に乗り始めた頃、花崎淑夫氏が社長に就任し、現在の理念が誕生しました。しかしその前から、理念 の内容自体は経営計画を通して社内にある程度浸透していたといいます。「これが新しい理念だよ、と言われたとき、まぁそうだよねという感じでした。鉄道の文化ではなくルミネの理念もとに結束するという意味で、理念をまとめたのではないでしょうか」中山氏は語りました。そしてトップが理念を強烈に発信し続けたことが、社員の理念への意識をさらに強固なものとしました。「花崎元社長とは、新人の頃も研修等で頻繁に会う機会がありまして『この話、何度も聞いたからわかってるよ 』と思うくらい 、ずっと同じことを仰ってました。今思えば、それくらい社長が同じことを繰り返し話してくれたのがすごくよかったと思います」と中山氏は振り返ります。
ただし理念や行動指針を表す言葉が増えると、その関係性や目的が曖昧になりやすいものです。そこで理念を体系的に整理したといいます。また、抽象度が高いと社員がイメージしづらため、理念を説明するコーポレートステートメントには、「おしゃれだけど親みやすい」「洗練されてるのに偉そうじゃない」など、具体的なシーンが想像できる工夫がなされています。

成長企業「LUMINE」に学ぶ、理念浸透の秘訣 ルミネ理念

ルミネならではの取り組みを実施

理念を具現化するためには、実際にお客様と接する出店者の協力が必要です。そこでルミネのショップスタッフ全員を対象に入店前研修を実施し、研修の講師をルミネの社員が務めるといいます。「社員が順番に講師を担当しますが、そこでわかりやすく自社の理念を伝えるために自分がまず理解を深めるフェーズがあります。理念を説明する機会多いことが、社内での理念浸透に繋がっています 」と中山氏は説明しました。

さらに「 LUMINEST 」という接客コンテストが開催され 、3万人以上のスタッフの中から、ルミネの理念を接客の中で体現したショップスタッフが表彰されます。各店舗で予選が行われ、勝ち抜いた代表が決勝大会に進む大規模なイベントで、ルミネが理想とする接客の形が広く共有される場となっています。

これらの施策によって理念浸透が成功したルミネでは、新卒採用で人事から特に指示されることもなく社員が自ら理念を語るのだといいます。ルミネの理念に共感し興味を抱く学生も多く「“ルミネらしい ”ってなんだろう、という会話が日常的に産まれます。公式に は決まっていませんが、その分 “ルミネっぽさ” を各社員自身が考えられています」と中山氏は話しました。

「変革さもなくば死」という花崎氏の言葉にも表れているように、鉄道のDNAを否定し変革を続けることの重要性は、社員の意識に深く根付き、今でも引き継がれています。「 LUMINEは立地に恵まれているが、立地のおかげだと思われると悔しいです。立地に甘えずに取り組んでいきたいです」と中山氏は語りました。


以上、セミナー内容について一部を書かせていただきました。株式会社ルミネ


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