はじめに:GXを「やるべきこと」から「やりたくなること」へ

近年、地球規模の課題である「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」への対応は、多くの企業にとって避けて通れないテーマとなっています。しかし、この取り組みは、しばしば「社会の要請だから」「義務だから」といった受動的な対応に留まりがちです。

株式会社バイウィルでは、GXを「やるべきこと」だけではなく、企業が前向きに「やりたくなること」へ、そして企業価値向上や収益に貢献する「機会」へと転換することを目指しています。

いま、GX・脱炭素市場が急速に拡大する裏側で、関連するソリューションを提供する企業様には新たな競争の壁が立ちはだかっています。

市場の急成長に伴い、脱炭素ソリューションのプレイヤーは激増しており、結果として製品・サービスの同質化による価格競争が予想されます。実際に、商材やソリューションを開発したものの、機能や印象が競合と似てしまい、なかなか差別化できないというお悩みを多く聞きます。

本記事(全3回)では、この競争激化する市場において、いかに自社ソリューションの価値を明確にし、顧客が「脱炭素をやりたくなる」ような魅力的なブランドとして打ち出し、競争を勝ち抜いていくか、その考え方を解説します。

脱炭素は「参加資格」へ。脱炭素対応がもたらす4つのリスク

脱炭素への取り組みは、もはや競争優位性ではなく、サステナビリティ時代に企業が生き残るための「参加資格」に変わりつつあります。企業がCO2排出削減に取り組まない場合、以下の4つの外部環境要因により、その負担やリスクが増加します。

  • 規制と税金のリスク: 規制の強化や炭素税の導入により、対策を講じない企業はコスト的な負担が増すことが予測されます。
  • サプライチェーンからの要請: 大手企業が規制に対応するため、サプライチェーン全体に脱炭素対応を求める動きが強まっています。取り組みが遅れると、取引が難しくなるリスクが高まります。
  • 生活者・人材の意識変化: 若年層は環境問題に敏感であり、サステナビリティに配慮していない企業は避けられる傾向があります。
  • 投資家の優先度: 多くの金融機関や投資家がサステナビリティを重視しており、脱炭素対応は資金調達の難易度やコストに直結します。

これらは、企業にとってアップサイド(利益)を狙うというより、「生き残っていくために不可欠な戦略」となっています。

image1

市場拡大がもたらす「機能同質化」の課題

そうなると、当然「脱炭素」を支援するための商品・サービス、ソリューションが次々と生まれてきます。

富士経済の予測によると、脱炭素ソリューション市場は2040年までに9兆4,605億円へと2024年比で6.4倍に急増することが見込まれています※。市場が急拡大するということは、当然ながら参入するプレイヤーも激増するということです。

つまり、この脱炭素ソリューション市場の今後の課題は、「同質化」です。

どの製品・サービスも「CO2を削減する」「カーボンニュートラルに向かう」という機能や目的は同じです。
さらに、機能が同じに見えるだけではなく、「グリーン」「エコ」といったワードが多く用いられる中で、名前も見た目も画一的なイメージが多くなってしまいます。

顧客視点では「どれを選べばいいか分からない」状態となり、提供側は競争優位性を確保して売り込むことが難しくなります。これが、脱炭素ソリューションの差別化の壁です。

※https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=25070&la=ja

image2

ブランディングの核心:他者と区別する「識別記号」の創出

この同質化の課題から脱却するために必要となるのが「ブランディング」です。

ブランディングのポイントの1つは、市場に溢れる商品やサービスの中から、自社のものだと認識し、他者と区別するための「識別記号」(名前、ロゴなど)を創り出すことです。

▼ブランディングの構成要素

  • 識別記号の創出: 他者と区別し、顧客の記憶を貯める「器」となるロゴやネーミングを創り出すこと。
  • 知覚価値(イメージ)の創造: 顧客が識別記号を目にしたときに頭の中に思い浮かべる「知覚価値(イメージ)」を創り出すこと。

この「識別記号」は、複雑で難解な脱炭素の領域において、せっかく伝えた価値が競合製品と混同されないようにし、明確な差別化を可能にします。

image3

image4

戦略的なブランド化の選択へ

今後確実に成長する市場(2040年までに9兆円規模)において、今からブランドという資産を作っておくことは、将来の競争優位性に繋がります。

次の記事では、このブランディングを具体的に進めるために、「単独商品としてのブランディング」と「カテゴリとしてのブランディング」という2つの戦略パターンと、貴社の事業状況に応じた選択の判断基準について詳しく解説します。


▼続きの記事はこちら
【脱炭素商品・サービスブランディング②】
「単体」を尖らせるか、「全体」を束ねるか?脱炭素ビジネスにおける2つのブランド戦略パターン


▼関連する資料はこちら(無料)
【お役立ち資料】脱炭素商品・サービスブランディング