さて今回は、アフターコロナ・Withコロナ時代に多くの企業様にとって必要不可欠になってくるテーマについて、前編・後編の2回に分けてブログを書きたいと思います。テーマは、「10年先の中長期ビジョンを描き直し、それを戦略に落とし込む具体的なプロセス」についてです。
まず前編となる今回は、
・アフターコロナの時代において、なぜ中長期ビジョンを見直す必要があるのか?
・中長期ビジョンを描き直す際に重要な考え方「バックキャスティング」と「逆U字モデル」
について書きたいと思います。
ビフォアコロナの時代に描いていたビジョン・戦略は機能しない
近年、ビジネス環境は日々劇的に変化しています。少子高齢化に伴う人口動態の変化、IT化やAIを始めとする技術革新、クロスボーダーのM&Aや海外進出を通したグローバル化、働き方改革の進展に伴う働き方の変化など、企業を取り巻く環境は外部環境・内部環境を問わず、急速な変化を遂げています。
そういった中で、今回のコロナショックは、社会システムの変容や消費スタイルの劇的変化(B to B企業であれば、クライアント企業の社内のパラダイムの変化)を引き起こし、従来からの環境変化を加速させただけでなく、中にはその方向性すら変えてしまったものもあります。
例えば、リモートワークの浸透や商品やサービス自体のオンライン化は既に進んでいますし、医療や教育といった、今まで停滞していた領域のオンライン化も今後加速していくでしょう。また、在宅勤務や外出自粛生活で他者との接触が減少したことによる社会的孤独感の増大から、メンタルヘルスケア領域の重要性が高まり、人とのコミュニケーションや繋がりを感じることができるようなプロダクトやサービスが増加することも予想されます。ここに挙げた例は一部に過ぎず、これ以外にも「個人レベル」「企業レベル」「社会レベル」で様々な変化が起こっています。
そして、このように従来の環境変化が加速した、あるいはその方向性が変化してしまったアフターコロナの時代においては、ビフォアコロナの時代に描いていた中長期ビジョンや戦略が機能しなくなってしまうリスクが生じてきます。
したがって、各企業は再度、中長期ビジョンを描き直し、それを基に戦略を組み直す必要が出てきます。実際、先日弊社のセミナーにご参加頂いた企業の約9割は、既に中長期ビジョンや戦略の見直しを行っている、あるいは見直しを検討しているとのことでした。
“バックキャスティング”と“逆U字モデル”を通じて、中長期ビジョンを描き直す
では、どのように中長期ビジョンを描き直していけば良いのか。そこで重要になってくるのが、「バックキャスティング」と「逆U字モデル」という手法です。ここからはそれぞれの考え方について、説明していきたいと思います。
1.バックキャスティング
まず、バックキャスティングについてですが、この考え方の対立概念であるのがフォアキャスティングです。フォアキャスティングは、自社や業界の現状を起点に、現状の社会構造やトレンドを前提として帰納法的に戦略を検討する手法です。この手法の場合、現在の延長線上に想定される未来を描くため、現状から予測できない劇的な変化への対応が困難であることや、望ましい未来について明確なビジョンを持てていないため、場当たり的な対応になってしまうというデメリットがあります。
そこで登場するのが、バックキャスティングという手法です。バックキャスティングでは、「長期予測を基にした10年先の未来」「自社にとって望ましい未来」「社会が解決を求める課題」を起点として、メガトレンドに基づく未来像や望ましい未来像から演繹的に戦略を導き出します。
未来の変化に対応するというよりは、「自ら未来を創り出す」という考え方に近く、既存の延長線上にあるような短期的な目線ではなく、過去のパラダイムから解放された長期的な目線で未来を想定します。まさに、変化の激しいアフターコロナ時代に最適な手法と言えます。
実際、弊社でお取引させて頂いているお客様からも、「バックキャスティングで中長期ビジョンを描き直したい」という声を多く頂いており、アフターコロナの時代において、多くの企業でバックキャスティングの考え方を取り入れようとする傾向があるように思います。
2.逆U字モデル
次に、逆U字モデルについてです。これは、現状にとらわれず、アイディアの発散~抽象化によって望ましい未来を描き、そこからビジネスの観点を重視した戦略や計画に具体的に落とし込んでいくという手法です。
下記図のように、現状と未来について整理したファクトを基に、アイディアを幅広く発散し、それを中長期ビジョンという抽象的な形で言語化し、その後で今度は、ビジネス観点を意識しながら事業のアイディアの具体化を行い、最終的には戦略にまで具体的に落とし込んでいきます。
逆U字モデルのポイントは、現状・未来に関するファクトの整理を行った後に、一度抽象化のプロセスを挟むことによって、既存の枠組みにとらわれない形で、幅広くアイディアを発散できることであり、変化の激しいアフターコロナ時代において必要になる、柔軟な発想や思考を可能にします。
以上が、中長期ビジョンを描き直す上で必要になってくる「バックキャスティング」と「逆U字モデル」という考え方でした。
では、この2つの考え方を基に、いかにして中長期ビジョンを言語化し、それを戦略に具体的な形で落とし込んでいくのか?その具体的な策定プロセスについては、後編でお伝えしたいと思います。